ハワイ版ミシュランの受賞経歴を持つ実力派ヴィーガンカフェ「Peace Cafe Hawaii」(ピースカフェハワイ、以下ピースカフェ)。オーナーシェフ・寺井将太さんは、元和食料理人の繊細な技術と食養生の知識を生かした、唯一無二のヴィーガン料理を生み出しています。今回は、ヴィーガンの料理人として味へのこだわりや、ピースカフェの魅力についてお話を伺いました。
五感で楽しむヴィーガン料理。和の技法が生む彩りとうま味
和食の伝統的な技法を生かした、オリジナルのスタイルが特徴のピースカフェ。寺井さん(以下Shotaシェフ)の多彩な経験と知識が生み出す彩り豊かなヴィーガンは、ピースカフェを訪れる世界各国の人々を魅了しています。
Shotaシェフ「日本では、和食や和菓子、茶道を学んできたので、視覚の美しさや色の配置も意識しています。講師の経験をしていた精進料理や懐石料理の基礎も取り入れながら、調理や盛り付けを工夫しています。
父から受け継いだ創作和食をベースにしながらも、料理人の兄弟と共有してきたフレンチやハワイ、ロシア料理の知識まで幅広く取り入れ、独自のヴィーガン料理を創作しています。それが、ピースカフェならではの魅力であり、ピースカフェスタイルのヴィーガンだと思っています」
Shotaシェフが手がけるヴィーガン料理は、その美しさと奥深さから「こんなヴィーガンは初めて」と驚きの声を上げるお客様も多いのだとか。ピースカフェでは、視覚や味覚だけでなく、音や香り、食感を通して五感すべてで楽しめる特別なひとときを堪能できるでしょう。
少ない食材でも豊かな味わい。研究し続けるヴィーガンの工夫
「体によさそう」という一方で、「動物性食品不使用の料理は味気ないのでは?」といったイメージが持たれがちなヴィーガン。ピースカフェでは、幅広いメニューを取り揃え、豊かなヴィーガンと食の楽しみを提供しています。
Shotaシェフ「おいしいと感じてもらえるうま味を追求し、食材の組み合わせや調理法も常に研究しています。たとえば、アク抜きひとつをとっても、湯通しせずにじっくり20分以上炒めることで、素材本来のうま味が出てきます。カレーを作るときに、玉ねぎをじっくり炒めて飴色にするようなイメージですね。時間をかけ、ていねいに火を入れることで、味わい深い料理へと仕上げています。
さらに、ひとつの食材でも『揚げる、焼く、煮る、蒸す、乾燥させる』など、さまざまな調理法がありますよね。揚げてから煮る、焼いてから漬け込むなど、ひと手間を加えることで1つの食材を何パターンにも変化させられますし、組み合わせはたくさんあります。食材も、調理法もいろいろ組み合わせることで、新しいメニューを考えています」
使用できる食材が限られていても、調理の工夫次第で可能性は無限に広がります。「Less is more(少ないほど豊か)」という言葉のように、ピースカフェでは、シンプルだからこそ食材と真摯に向き合い、一つひとつの食材を最大限においしくする工夫を凝らしています。
味や彩り、食感のバランスを大切にし、食べることの楽しさや豊かさを感じられるヴィーガン料理を提供するため、日々研究に励むShotaシェフ。唯一無二のヴィーガンを提供する背景には、Shotaシェフの日々の努力と、豊富な経験から生まれるオリジナリティがあります。
「心を込めて届ける」父から受け継ぐ食の想い
六本木の創作和食料理店「六本木わかば」の料理人であった父を持つShotaシェフ。幼い頃に教わった料理人としての心構えが、今もピースカフェの土台となっています。
Shotaシェフ「料理で人を元気にすることができる。と幼い頃から父に教わってきたのが今でも生きていますね。自分が作った料理を食べて健康になってもらいたいという想いは、
強く持っています。たとえば、揚げ物はオーブンとトースターを活用しながら繰り返し焼くことで、余分な油を落としています。体にやさしい料理を作るには、手間も時間もかかります。しかし、『体に良いものを届けたい』という想いがあるからこそ、それを手間とは感じません」
そう笑顔で語るShotaシェフ。時間を惜しまず、ていねいに仕上げられた一皿は、シンプルでありながら奥深く、体に染みわたるおいしさです。食べるたびに心と体が整い、食べることの喜びを改めて感じられる料理が、ピースカフェにはあります。
体に優しく、おいしく、サステナブルに。ピースカフェのヴィーガン哲学
ピースカフェの料理のベースとなっている、食養生やマクロビオティックの考え方。日本で食養生を学び、専門誌への連載経験を持つShotaシェフは、ハワイの地でもその理念を受け継ぎ、現地の食材を生かした料理作りに励んでいます。
Shotaシェフ「ピースカフェでは、食養生やマクロビオティックをベースにしたヴィーガンを提供しています。食材が持つ効能や、食材を組み合わせたときの相乗効果も考えて、日々料理を作っています。料理には、スパイスも積極的に使用して、体を温めることも意識していますね。食養生という言葉があるように、食を通じて健康になっていただきたいという想いがあります。
料理をする上で、大切にしていることの一つに『一物全体』があります。野菜やフルーツの根も葉も皮も、おいしくいただける工夫を凝らしています。たとえば、人参は、皮に豊富な栄養が含まれているので、きれいに洗って皮ごと調理に使います。ほかには、パクチーの根っこも捨てません。炒めてソースにすれば、おいしく食べられますよ。根も皮も使うことで廃棄も減らせますしね」
ピースカフェのヴィーガンは、大地の恵みに感謝し、丸ごとおいしくいただきます。そのまま食べたら、苦味やえぐみがあるものも、Shotaシェフの匠な技で、おいしく、味わい深い料理に生まれ変わるので驚きです。
ピースカフェでは、ハワイの豊かな自然を守るため、食材を無駄にしない工夫を重ね、サステナブルな食文化を発信し続けています。その取り組みが、ハワイの自然を守り、より良い社会を築く力にもなっていくでしょう。
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ライター
AYA
静岡県出身。海と山に囲まれた自然豊かな環境で育ち、結婚後に、タイ・バンコクへ移住。病気がきっかけで、ヴィーガンのライフスタイルに目覚める。現在は、2児の母として子育てに奮闘しながら、人と環境にやさしいサステナブルな暮らしを実践中。自身の経験をもとに、ヴィーガン、環境問題、SDGsについて情報を発信している。