スイスでは、近年ヴィーガンライフが急速に普及しています。日常の食事だけでなく、外食シーンでも、肉を使わない植物ベースの食事が楽しめるようになりました。今回は、そんなスイスの環境にも体にも優しいヴィーガンライフについてお伝えします。

スイス人とヴィーガンスタイル

ウェルビーイングなスイスのライフスタイル

伝統的に酪農が盛んなスイスですが、環境保護や健康意識の高まりを背景に、ヴィーガンライフが急速に浸透しています。豊かな自然環境に恵まれた国だけに、持続可能な生活が重視されており、食生活にもその思想が反映されています。

ヴィーガン文化が広まった背景

ヴィーガン文化が広まった背景には、酪農が引き起こす環境問題が深く関係しています。乳製品や肉の生産には多大な水資源やエネルギーが必要で、温室効果ガス、とくにメタンガスの排出が課題とされています。

これにより、多くのスイス国民が「地球に優しい食事」を意識し始めました。多くの人が植物ベースの食事を選ぶようになり、それに応じて、スーパーマーケットやレストランでもヴィーガン食品を手軽に選べる環境が整ってきています。

たとえば、スーパーマーケットでは、伝統的な乳製品と並んで植物性の食品が年々充実してきています。酪農大国として乳製品の伝統を残しつつも、環境に優しい選択肢への需要が高まっているのです。

スイス人のヴィーガン的日常生活

スイスでは自分のライフスタイルに合った形で環境に配慮している人が増えています。

私の身近なところでは、スイス人の義妹。彼女は完全なヴィーガンではないものの、肉を控えるベジタリアンとして植物性中心の食生活を実践しています。家族でBBQする際は、キノコ類や焼いて食べるチーズなどをお肉の代用として、ベジタリアン食を継続。楽しむことと両立させています。

また、スイスでは「小さな行動」が生活に浸透しています。たとえば、生ゴミには有料袋があり、徹底したゴミの分別に役立てられています。このような小さな行動の一つひとつが食生活の選択に影響を与え、ヴィーガン文化の普及をあと押ししています。

アップデートするスイス名物で日常生活からウェルビーイング!

ウェルビーイングなスイスのライフスタイル

スイスでは、大手スーパーでヴィーガン対応食品のコーナーが年々拡充されており、日常生活に取り入れやすい環境が整っています。チーズ・ミルク・チョコレートなどのスイス名物もヴィーガンスタイルに進化中!その一部をご紹介しましょう。

カシューナッツや豆乳が主原料の「チーズ」

ウェルビーイングなスイスのライフスタイル

チーズフォンデュなど、チーズを使った料理が名物のスイスでは、チーズもヴィーガンスタイルに進化中。動物性原料を一切使用せず、植物性の材料から作られているヴィーガンチーズは、カシューナッツやアーモンド、豆乳などが主原料。発酵や凝固により、伝統的なチーズに近い食感や風味を再現しています。

大手スーパーマーケット「Migros(ミグロ)」では、スライスチーズやソフトチーズの形で手軽に購入きます。

オートミルクをはじめ種類豊富な「ミルク」

ウェルビーイングなスイスのライフスタイル

酪農王国ともいわれるスイス。ヴィーガンのミルクとして、豆乳・アーモンドミルク・オートミルク・ココナッツミルクなど、多くの植物性のものが揃っています。乳製品アレルギーやラクトース不耐症の人にも人気です。飲料としてはもちろん、カフェラテや料理などに気軽に使えて便利ですよ。

とくにオーツ麦を原料とした環境負荷が低いオートミルクは、クリーミーな味わいが特徴で、多くの人に愛用されています。

カカオと植物性ミルクでできた「チョコレート」

ウェルビーイングなスイスのライフスタイル

スイスといえばチョコレートも名産品ですが、ヴィーガン仕様のチョコレートも注目を集めています。カカオ豆本来の風味を活かしたヴィーガンチョコレートは、乳製品を使用せず、ココナッツミルクやオートミルクを代用して作られています。

大手スーパー「Coop」では、ヴィーガン食ラインとして「Karma(カルマ)」があります。オートミルクを使用したヴィーガンチョコレートは、フルーツやナッツが入っていて食べ応えがありますすよ。

世界的な人気を誇る「Lindt(リンツ)」や「Läderach(レダラッハ)」など伝統的なチョコレートブランドでもヴィーガン商品を扱い始めています。

街で人気のヴィーガンメニューを味わう!レストラン&カフェレビュー

ウェルビーイングなスイスのライフスタイル

スイスの都市部では、カフェやレストランにヴィーガンメニューが充実しています。実際に私が訪れたことのある2店について紹介します。

おいしい!だけで終わらないベジタリアンビュッフェ

ウェルビーイングなスイスのライフスタイル

先駆者として知られているのが、創業120年以上の老舗ベジタリアンレストランHiltl(ヒルトル)」。

ビュッフェ式なので、好きなものを少しずつ食べられる点も人気の理由かもしれません。メニューは100種類以上あり、肉を使わない料理とは思えないほど満足感のある食事が楽しめます。

実際に訪問したときは、メニューの豊富さから、自宅でも作れそうな料理のアイデアが広がりました。おいしい食事を楽しむだけでなく、新しいレシピのヒントも得られるなんて、とても魅力的なレストランだと感じました。

カフェでほっこり!味わい優しい濃厚ラテ

ウェルビーイングなスイスのライフスタイル

roots(ルーツ)」は、環境に優しい食材を使用したメニューが特徴のカフェ。キノアや豆腐を使ったアサイーボウルやピーナッツカレー、アボガドトーストなど植物性の食材のメニューが人気です。

ドリンク類のミルクは、オーツやアーモンドミルクなど植物性のものから選べます。私のお気に入りは、抹茶ラテ。とくにオーツミルクを使うと、濃厚でクリーミーな味わいが抹茶とよく合い、ほっとする優しい風味に仕上がります。

ヴィーガンではなくても、健康志向の人や植物性の料理を試したい人にピッタリのカフェです。

スイスでは、環境意識や健康志向の高まりを背景に、ヴィーガンライフが日常に根付いています。家庭だけではなく、外食先でも植物性食品を気軽に選べる環境が整っており、伝統料理もヴィーガン仕様にアレンジされているのです。自然と共存するライフスタイルや持続可能性を意識した日常の工夫こそが心身の健康の源、という考え方。これがスイス独自のウェルビーイングの形を作っています。

ライター

アルパガウス 真樹

スイス在住の40代主婦。息子とスイスの自然を楽しみながら、さまざまなアクティビティに挑戦。夏は森の中でのBBQやハイキング。海のないスイスでは、湖水浴が定番なので、夏季は湖沿いで過ごしたりSUPを楽しんだりしています。現地からスイスの自然との触れ合いをお届けします。