木の近くにテントを張るリスクとは?
木の近くにテントを張れば、強い日差しや雨風を避けられますね。一方で、さまざまなリスクもあって注意が必要です。事前に知っておけば回避できる場合も多いため、しっかりと知識を深めておきましょう。
倒木のおそれがある
木の下にテントを張ると、木が倒れてきたり、頭上から枝が落ちてきたりする可能性があります。実際、2023年に神奈川県のキャンプ場で倒木による痛ましい事故が起こりました。
このようなリスクを避けて安全にキャンプを楽しむためには、倒木のおそれがある危険な木を見極めることが大切です。詳しい見極め方については後述するので、ぜひそちらも参考にしてくださいね。
落雷のおそれがある
アウトドアの環境では、晴天でも急に荒天になることがあり、落雷のリスクがつきものです。木は避雷針のようになるので、真下にテントを張るのはNG。加えて、木に近すぎても遠すぎても落雷のリスクは高まります。
望ましいのは、木の幹から延びる枝や葉から最低2m以上離れている場所。そして、テントを張った位置から木の頂点を見上げたときに、角度が45度以上になる場所です。
ただし、近くで雷が鳴りだしたら、すみやかにテントから離れてくださいね。建物や安全な場所、停車した車のなかに避難しましょう!
スズメバチがいるおそれがある
キャンプで見かける危険な害虫と言えばスズメバチ。スズメバチは木の洞や枝の上、木の根元などに巣を作ります。縄張り意識が強く、攻撃的な性格なので、巣の近くにテントを張るのは避けてくださいね。とくに、活動期にあたる7~10月は注意が必要です!
スズメバチは巣を見つけた場合は、すぐにキャンプ場スタッフに報告しましょう。
危険な木の見分け方
倒木や枝が落下するおそれのある、危険な木の見分け方をお伝えします。とくに自然の状態を生かしたキャンプ場や、キャンプ場以外で野営する場合は、立ち枯れしている木が多いので注意が必要です。
キャンプ地に到着したら、以下の5つのポイントをチェックしましょう。
- 木の幹に樹洞(じゅどう)がある
- 葉がない枝がある
- さるのこしかけなどのキノコが生えている
- 木の根元が極端に湿っている
- 木をゆするとグラグラする
それぞれ詳しく説明しますね。
1.木の幹に樹洞(じゅどう)がある
樹洞とは、樹皮がはがれた隙間から菌が入り込み、内側が腐って隙間ができた部分のこと。「うろ」とも呼ばれます。杉やヒノキなどの針葉樹よりも、クヌギやナラ、ブナなどの広葉樹にできやすいのが特徴です。
木の上部よりも、根元近くに樹洞がある場合は、その部分が空間になっています。このような状態の木は幹がもろくなっていて、倒木する可能性が高いと考えられます。
木の片面を見るだけでは気がつかないこともあるため、必ず幹を一周して確認しましょう。
2.葉がない枝がある
キャンプサイトについたら木を見上げ、葉がない、もしくは極端に葉が少ない枝がないか確認しましょう。一見、青々と葉が茂っていて元気に見える木でも、部分的に枯れている枝があると、その部分だけ落下するおそれがあります。
とくに、木の下部の枝はしっかりとチェックしてくださいね。樹木は葉を使って光合成をしているため、成長するにあたって下の枝に日が当たらなくなり、枯れることがあります。これにより、枝が落下してくる可能性があるのです。
判断がつきにくければ、キャンプサイトにある同種のほかの木と照らし合わせて、葉の茂り具合を確認するのもよいでしょう。
ただし、カエデやケヤキなどの落葉樹は、冬場には葉が落ちてしまうため、見分けにくいことも。その場合は、樹皮のはがれや変色がないかを確認してみてください。
3.さるのこしかけなどのキノコが生えている
木にさるのこしかけなどのキノコが生えているのは、木が枯れているサインです。木からキノコが生えているのを見かけたら、その木の周りにはテントを張らないようにしましょう。
キノコは木の栄養を吸い取って腐らせます。木からキノコの傘が出ているということは、栄養を吸い取り切って、ほかの木に胞子を飛ばそうとしている状態。木にとっては末期の状態なのです。
4.木の根元が極端に湿っている
周りが乾いているのに、木の根元が極端に湿っている場所は要注意。とくに根の近くに水たまりがあるところは危険なので、テントを張らないようにしましょう。
水はけが悪い場所に生えている木は、根腐れを起こしている可能性があり、根っこから倒れるおそれがありますよ。
5.木をゆするとグラグラする
ゆすってみて、グラグラする木は立ち枯れしている可能性が高いです。内部が腐っていて、もろいため、ちょっとした衝撃や風で倒木するおそれがあります。
グラグラとゆれるような木は、すでに寿命を迎えています。見た目もキノコが生えていたり、葉がついていなかったりするので、判別がつきやすいでしょう。
健康な木でも倒木の危険が!倒れやすい木の種類を知ろう
どんなに生き生きとしっかりした木でも、台風や強風によって倒れるリスクがあります。ここでは、樹木のなかでもとくに倒れやすい木を紹介します。
アカマツ
やわらかい割に重いため、倒れやすい木です。また、松くい虫(マツノザイセンチュウ)による松枯れ病が広がっていて、樹木全体が枯れてしまっているケースも少なくありません。近くにテントを張るのは注意が必要ですよ。
ヤマナラシ
成長が早く、大木になる割にやわらかい木です。街路樹でよく見かけるポプラと同じヤナギ科で、葉の形状や性質も似通っています。
根が浅くて風の影響を受けやすいため、キャンプサイトにある場合は注意しましょう!
ドイツトウヒ
成長速度が早く、樹高が50mを超える場合がある木です。枝が多く茂り、葉や松ぼっくりが重い上に、やわらかいという特徴がありますよ。
強風にあおられると根こそぎ倒れたり、枝が折れて落下したりするリスクがあります。
シラカバ
日本の高原を代表する木のひとつですよね。標高1,000m近くのキャンプ場ではよく見かけます。
シラカバの木は寿命が短く、長くて80年ほど。とくに樹高が10mを超えるものは、寿命が近いので要注意です!とくにシラカバの木を枯らしてしまう、チャーガというコブ状の黒いキノコが幹に生えていたら、末期の状態です。
ライター
のまどう
キャンプとハイキングをこよなく愛するキャンプ場スタッフです。ニュージーランドのグレートウォークやヒマラヤのトレイルを歩いた経験があります。いつかアメリカのロングトレイルも歩いてみたい…。