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旅する蝶と呼ばれる『アサギマダラ』。その美しい姿と驚きの生態は、あまり知られていないかもしれません。今回は、わたしが那須連峰の登山中に出会ったアサギマダラの特徴と魅力を紹介します。見つけたときのポイントを心得ておくと、登山の楽しみ方も広がりますよ。

アサギマダラってなに?

アサギマダラの観察方法

アサギマダラをまだ見たことがない人は、どのような蝶なのか気になりますよね。アサギマダラの特徴や習性をチェックしておきましょう。

美しさが際立つ蝶

アサギマダラは、繊細な羽色をもつ美しい蝶です。茶褐色に縁どられた羽の一部は、水色で涼しげな印象。日本の伝統色、『浅葱色(あさぎいろ)』が名前の由来になっていますよ。

透き通るような水色と茶褐色の縁どりは、ステンドグラスを連想させます。大きさは約5〜6cmほどでしょうか。羽を広げて飛んでいる姿は、アゲハ蝶と同じくらいの大きさをイメージするとよいかもしれません。

ただ、両者の舞う姿には違いがあります。アゲハ蝶は躍動感があり、力強さを感じます。一方のアサギマダラは、ひらひらと静かに舞う印象です。

また、アサギマダラは警戒心が弱いからなのか、近づいても逃げたりしません。人をあまり恐れないため、観察しやすい蝶のようです。そのおかげで、わたしも花蜜を吸う美しいショットを撮れたのは幸運でした。

アサギマダラは、オスとメスを見分けるのが難しいといわれています。見分けるポイントは、後ろ羽部分に濃い褐色の斑点があるかないかです。斑点があればオスと覚えておきましょう

オスの腹部先端にはフェロモンを分泌する『ヘアペンシル(毛束)』があり、メスに求愛するときに使用します。アサギマダラの求愛行動にも興味が湧いてきますね。

【アサギマダラ】

学名 Parantica sita(パランティカ・シータ)
タテハチョウ科
アサギマダラ属
時期 春から秋、とくに初夏と秋
場所 高原、山地、草原、フジバカマやヒヨドリバナのある場所など
気象条件 晴天、風が穏やかな日

1,000km以上を移動する蝶

アサギマダラの観察方法

アサギマダラの驚きの習性といえば、1,000kmを越える渡りです。小さな昆虫が長距離飛行する不思議については、いまだにはっきりと解明されていません。避暑説・子どもの餌説・天敵から逃げる説など、諸説あるようです。

渡りは広範囲に及び、日本にとどまらず、台湾や東南アジアまで海を越えていきます。旅の途中、フジバカマ・ヒヨドリバナ・アザミなど、キク科植物の花蜜を吸いながら移動を続けますよ。

まさにわたしが遭遇した日も、アザミの花蜜を吸っているところでした。フジバカマが開花する9月中旬から10月中旬にかけても、アサギマダラを目撃するチャンスが高まります。「アサギマダラを見たい!」と思っている人は、この季節を狙ってみましょう。

春から初夏は、アサギマダラの移動の季節です。沖縄や九州を起点にして北上し、暑さの厳しい夏は高原や山地の涼しい場所を好みます。アサギマダラの移動時期の目安について、下記にまとめてみました。

地域 時期
沖縄・九州 4~5月頃、10~12月頃
本州(低地) 5~6月頃、9~10月頃
本州(高原・山地) 7~9月頃
北海道 6~9月頃

アサギマダラは低地での目撃情報もあります。大分県の姫島では、海岸に咲く植物の花蜜を求めて群生して飛来することも。美しいアサギマダラが群れで舞っている光景は、ぜひ一度見てみたいですよね。

アサギマダラとの出会い

アサギマダラの観察方法

ここからは、わたしがアサギマダラに出会ったときの感動体験を紹介します。

こんなところに蝶が?

那須連峰の登山でアサギマダラに出会ったのは10月上旬のことです。10月とは思えない暑さのなか、麓にある峠の茶屋(鉱山事務所跡)をスタートし、峰の茶屋跡に到着しました。小休憩をはさみ、そのあと朝日岳へと向かいます。

美しい紅葉をひと目見ようと、各地から登山家が集まり賑わいを見せていました。平日にもかかわらず登山道は混雑し、道を譲るための待機時間がいつも以上に多く発生するほど。

そのせいか、下山のときには汗だくで足取りも重く感じます。「あともう少し……」。自分を励ますように1歩1歩足を前へ進めていると、視界の隅にピンク色のアザミを発見しました!それと同時に、涼し気な羽色をもつ美しい蝶、アサギマダラも見つけたのです。

はじめて見つけた美しい蝶に大興奮です。羽はまるでステンドグラスのようなコントラストになっています。疲れも忘れ、スマホを使って無我夢中で撮影。不思議なことに近づいてもすぐに逃げることなく、きれいな写真や動画を撮らせてもらえました。

知らなかった蝶を知る

「あの蝶の名前はなんだろう?」。ほかの花蜜を求めて、ひらひらと飛んでいく後ろ姿を見送りながら疑問に思いました。

下山後、リサーチをスタート。蝶の羽色や季節をインターネット上に入力し、調べつくして辿り着いたのが『アサギマダラ』の名前です

そこからアサギマダラについて調べるほどに、驚きと不思議に満ちあふれた情報をゲットできました。蝶の神秘を知ると同時に「事前に知っていれば、もっとよく観察して調査に協力できたかもしれない」といった少しの後悔を味わいます。

アサギマダラを見つけたときのポイント

アサギマダラの観察方法

この記事を読んでいるあなたも、登山中に美しい蝶に出会うかもしれません。アサギマダラとの出会いを楽しむために、以下のポイントを参考にしてみてください。

マーキングを確認する

アサギマダラに出会ったら、羽に注目してみましょう。裏側にマーキングがないか確認するのがポイントです。このマーキングは、移動ルートや生態を追跡するために研究者が行っています。

マーキングを見つけたら、番号や記号を記録しておきます。その後、以下に紹介する方法でマーキング調査に参加しましょう。

マーキング調査に参加する

少しでも多くアサギマダラのデータが集まれば、長距離移動の謎が解明される助けになります。また、蝶の保護にも貢献できますよ。

マーキング調査への参加方法は以下の手順を参考にしてみてください。

マーキング調査への参加方法
  1. 捕獲後、羽に識別番号を記入する
  2. 調査用紙へ記入する
  3. 調査の結果を報告する

アサギマダラを捕獲したら、羽の裏側に油性フェルトペンで識別番号を記入しましょう。記入する情報は下記が基本となります。

記入内容 記入例
①捕獲地 アルファベットで記載。例:「NASU」など
②捕獲日 月と日を記載。例:「10/4」など
③捕獲者 イニシャルでもOK。例:「ISA」など
④通し番号 2匹捕獲した場合は1、2とそれぞれに記入する。

さらにインターネット上から調査用紙をダウンロードし、見つけたときの記録をとっておきます。その後、データ調査している団体や博物館に結果を報告しておきましょう。用紙はこちらにアクセスしてダウンロードしてくださいね。

アサギマダラのマーキング調査に参加することで、自然の大切さを実感できるだけでなく、環境保護の一助にもなります。また、家族や友人と一緒に楽しむ、新しい登山体験になるでしょう。

目を奪われるほど美しい蝶を見つけたら、それはアサギマダラかもしれません。その特徴や生態について知り、観察のポイントやマーキング調査の方法を学ぶことで、登山の楽しみが広がります。また、まだ解明されていない『旅する蝶』の保護と、研究に携われる貴重な経験となるでしょう。自然のなかでの新たな発見は心躍る瞬間です。アサギマダラの旅路に思いをはせながら、ぜひ新しい登山スタイルを楽しんでくださいね!

ライター

いさな(藤原 勇魚)

「登山へ毎日行くのは無理。でも自然を感じる暮らしがしたい!」そんな理由から、ウッドデッキの先に小さな森を作りはじめた。小さな森では、野鳥がさえずり飛び交う毎日。そして、果樹・野菜・植物が生きいきと育つ場所にもなっている。

「自然の豊かさ=心の豊かさ」を体感し、自然から得たシンプルで大切な気づきをkindle本で出版する日々。さまざまな視点で、自然から得られる学びについて発信していきたいと思っている。