野生のイルカが住む御蔵島
御蔵島は伊豆諸島にある東京都に属する島のひとつです。東京竹芝桟橋から毎日出航しているフェリーに乗れば約7.5時間で御蔵島に到着します。
周囲16kmの島には浜がひとつもなく、周囲は崖で囲まれていて、お椀をひっくり返したような外観が特徴的です。
ほとんどが原生林で覆われた島内には日本有数の巨樹が生い茂り、島全域が国立公園に指定されています。
また、御蔵島は小さな島でありながら水資源が豊富で、ボートから島を眺めると海に流れ落ちる滝をいくつも確認できます。
そんな自然豊かな御蔵島が全国的に知られるようになったきっかけが、島の周りに生息している150頭以上もの野生のイルカ(ミナミバンドウイルカ)です。
イルカが御蔵島に住みつくようになった理由は、エサとなる魚が豊富で外敵が少なく、子育てに最適な環境だと考えられています。
そして、御蔵島に暮らすイルカはとても人懐こい性格で、毎年訪れる多くのドルフィンスイマー達にもとても友好的です。
ルールとマナーを守り、謙虚な気持ちを忘れずに海に潜れば、イルカのほうから寄ってきたり、並んで泳いでくれたりすることも少なくありません。
野生のイルカと泳げる海は他にもありますが、御蔵島のようなフレンドリーなイルカは世界でもとても珍しい存在なのです。
ドルフィンスイムに挑戦!
ドルフィンスイムとは、シュノーケリングやスキンダイビング(素潜り)でイルカと一緒に泳ぐことです。
とはいえ、シュノーケリングのように海に浮いている状態でイルカを水面からウォッチする場合と、スキンダイビングでイルカと一緒に水中を泳ぐ場合では大きな違いがあります。
そして、御蔵島はスキンダイビングでイルカと一緒に泳ぐことができます。これは本当に貴重なことで、映画やアニメを見た世界を誰でも体験することができるのです。
ですが、スキンダイビングは個々のスキルに差があり、上手く潜れないという人も少なくありません。
素潜りが苦手な人は、御蔵島に行く前にプールなどでスキンダイビングの練習をしておくことをおすすめします。
スキンダイビングの装備
安全にスキンダイビングを行うには、正しい器材を装備することが大切です。
- マスク…鼻が入るダイビング要マスクを使用します。耳抜きができないスイミングゴーグルは使用できません。水の抵抗が少なく、目の前の空間が小さいローボリュームタイプのマスクがおすすめです。
- スノーケル…顔のカーブに沿った水の抵抗の少ないスノーケルを選びましょう。スノーケルクリアのしやすい排水弁付きのものがおすすめです。
- フィン…泳ぎやすい弾力性のある柔らかいフィンを選びましょう。フルフットタイプのラバーフィンがおすすめです。
- ウエットスーツ…ワンピースまたはフルスーツと呼ばれる3mmまたは5mm厚のウエットスーツが一般的です。水温の高いシーズンならラッシュガードだけでも大丈夫です。
- ウエイト…ウエットスーツの浮力をウエイトで調整します。普通の呼吸をしている状態で水面が目の高さにくるように重量を決めます。また、オーバーウエイトはとても危険なので十分に注意しましょう。
ジャックナイフと潜降
スキンダイビングではジャックナイフと呼ばれるテクニックを使って頭から潜降します。
ヘッドファーストと呼ばれることもあり、水面に浮いた状態から上体を90度前に倒し、反動で足を上に持ち上げて、そのまま頭から潜っていきます。
スキンダイビングでは基本となるテクニックなので、上手く潜れないという人はプールなどでジャックナイフの練習をしておきましょう。また、潜降中は忘れずに耳抜きを行います。
息ごらえのコツ
水中で息を止めていられる時間には個人差がありますが、2つのコツを知っていれば息ごらえの時間を延長することができます。
まずひとつは、リラックスすることです。できるかぎり無駄な動きを無くし、ゆっくりと動くことで酸素消費量と二酸化炭素の生成を減らし、息ごらえ時間を延ばすことができます。
もうひとつが、ハイパーベンチレーション(過換気)です。ハイバ―ベンチレーションは、脳の呼吸中枢が血液中の二酸化炭素レベルをもとに呼吸を調整するメカニズムを応用した息ごらえ方法です。
やり方は、海に潜る直前に3~4回ほど深くて速い呼吸をしてから最後に大きく息を吸い込みます。
これだけで血液中の二酸化炭素のレベルを通常より低くすることができ、息ごらえ時間を著しく延長することができます。
ただし、ハイパーベンチレーションのやりすぎは、ハイポキシアと呼ばれる酸素不足から突然のブラックアウト(意識損失)を引き起こす可能性があるので十分に注意しましょう。
ドルフィンスイムの注意事項
御蔵島でドルフィンスイムをより楽しむためには、イルカの目を見ながら手を使わないように泳ぐことがポイントです。
また、イルカの真似をして、水中で宙返りをしたり立った姿勢のまま回転したりすると、イルカも同じように遊んでくれることもあります。
とはいえ、御蔵島のイルカはあくまで「野生のイルカ」です。水族館などで飼育されたイルカではないので、常に謙虚な気持ちをもって接することが大切です。
ウォッチングルールとマナーは厳守して、ドルフィンスイムを楽しみましょう。
- イルカが近寄ってきても絶対に触らない。
- イルカが驚くので水中カメラのストロボは使用しない。
- イルカが離れてしまったら追いかけずに、水面から顔を上げてボートを確認する。
- 足がつった時や助けが必要な場合は、ボートに向かって大きく手を振る。
- 船が寄ってきたら潜らず、ボートの後方にはプロペラがあるため絶対に近づかない。
その他の注意事項
御蔵島に上陸するには宿泊施設の予約が必要になります。また、ガイドの同伴なしに御蔵島の島内を観光することはできないことになっています。
御蔵島には宿泊施設が少なく、夏場になると満室になる場合が多いため、予約は早めに入れておいたほうが良いでしょう。
また、三宅島からもドルフィンウォッチングのボートが出ていますので、御蔵島の宿泊施設が満室の場合は三宅島に宿泊する方法もあります。