“Rodamos Juntos”ロデアモス・フントス
日本語で「一緒に走ろう」という意味のこのキャンペーンは、2017年からスペイン国内ではじまりました。
サイクリストとドライバーの双方が互いを尊重することで、交通事故を減らそうというのが、このキャンペーンの意図です。
アレハンドロ・バルベルデやナイロ・キンタナを有するムービースター・チームが、このキャンペーンに一役買っています。
このキャンペーンの画期的なところは、ドライバーだけに交通安全の重要さを訴えるのではなく、サイクリストの側にも交通法規の遵守を訴えていることです。
交通法規を守らずサイクリストを危険にさらすドライバーがいる一方で、サイクリスト自身が危険な動きを道路上でするために、ドライバーが避けきれず事故を起こしてしまうケースもあります。
このキャンペーンの開始以来、サイクリスト同士が安全に道路を走るための情報を共有し始めました。
もっと正確に表現すると、安全に道路を走るために、サイクリスト同士で自己チェックをするようになったのです。
危険な自転車の乗り方をするサイクリストを見かけると、他のサイクリストが何らかの形で、注意や助言をします。
目に余るほどひどい乗り方をするサイクリストがいる場合などは、SNSなどを通じて動画が上げられたりもします。
事故を減らすためには、ドライバー側だけが注意するのではなく、サイクリストの側も注意しなくてはならないことを、スペイン人は良く知っているのです。
“Por Una Ley Justa”ポル・ウナ・レイ・フスタ
もちろんスペインにも、サイクリストに対して悪質なドライバーが存在します。
わざとサイクリストにぶつかって、怪我をさせるドライバーもいるほどです。
また、アルコールやドラックを服用した状態で運転していた車によって、サイクリストが事故に巻きこまれることも後を絶ちません。
実は、そのような事故を起こした場合、ドライバーに課される罰則はかなり軽いものです。
そのため、悪質な交通事故を起こしたドライバーに対する罰則をより厳しいものにしようという動きが、“Por Una Ley Justa”というキャンペーンなのです。
日本でも2001年から「危険運転致死罪」の適用が始まりましたが、スペインの“Por Una Ley Justa”キャンペーンで求めていることも、日本のケースと非常に類似したものです。
このキャンペーンの中心になるのが、アナ・ゴンザレスという女性です。
彼女の夫だったオスカーは、2013年にマドリード近郊をサイクリング中にトラックとの衝突事故に遭います。
しかし、トラックのドライバーは救護措置などを全くせずに、そのまま逃走しました。
この事故で、不幸にもオスカーは命を落としました。
数日後運転手は逮捕されましたが、裁判の結果、実質的に彼は刑に科されることはなく、収監されることもなく、通常通りの生活を送ることが可能になってしまったのです。
ちなみに、イタリアやフランスではこのような場合、平均して4年間の禁固刑が言い渡されます。
この事故が、アナ・ゴンザレスをこのキャンペーンに導くきっかけになりました。
今年の8月には、スペイン南部のタラゴナという街に2500人のサイクリストたちが集まり、法律の改正を訴えました。
この日、サイクリストの先頭に立って法律改正を訴えていたのが、元プロサイクリストのホアキン・ロドリゲスでした。
彼の言葉が、サイクリストのもつ心配と不安、そして苛立ちをよく表しています。
「もっとたくさんのサイクリストが集まって、大きな道路でも封鎖して法律改正を訴えるデモでもやらない限り、僕らを守る法律はできないっていうのかい? そんなの、絶対おかしいだろ」
プロの自転車選手のなかでも、自動車事故の被害に会う選手も少なくありません。
運よく大きな被害にあわなかったとしても、危険な思いをしたことのある選手は大勢います。
彼らにとって、このような事故は他人事ではないのです。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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