春のおさんぽで、子どもの目をひくテントウムシ。小さくて真っ赤なボディが魅力的ですが、生態や幼虫のときの意外な姿を知れば、さらに興味は深まるでしょう。今回はテントウムシの一生や種類、観察ポイントなどをやさしく解説し、春の外あそびが、親子で発見を楽しむ時間に変わるヒントをお届けします。
テントウムシは子どもの虫さがしにぴったり

テントウムシは、小さな子どもの虫さがしにぴったりの存在です。子どもの目線で足元の草を見つめた時、つやのある赤い体は、小さくても草むらの中でよく目立ちます。比較的捕まえやすく、かわいらしい見た目が魅力的で、虫が苦手な人にも親しみやすいでしょう。
また、冬を成虫で越したテントウムシは、暖かくなるといち早く活動を始め、草や花の上を元気に動き回ります。虫が少ない早春の時期、特別な場所へ行かなくても、公園や道ばたの草地で出合える可能性が高いのもうれしいポイントです。
さらに、観察の楽しみを広げてくれるのが、上へ上へとのぼっていく習性。指や枝にとまらせたテントウムシは、空に向かってせっせと足を動かし、てっぺんに到達すると飛び立ちます。思わず見入ってしまう、一生懸命な様子は、子どもを笑顔にしてくれるはず。
このような習性から、太陽=お天道(てんとう)様に向かう虫、「てんとうむし」として名づけられたといわれています。
身近なところで見つけやすく、親しみやすい要素をもつテントウムシ。おさんぽの途中で少し探してみるだけで、いつもの外遊びが豊かな時間へと変わるでしょう。
テントウムシの一生

テントウムシは、卵・幼虫・さなぎ・成虫と姿を大きく変えながら成長していく完全変態の昆虫です。成虫だけでなく、他の姿も探してみると新たな気づきや発見があります。ここでは身近でよく見られるナミテントウを例に、各ステージの特徴を見ていきましょう。
卵

卵の大きさは、1mmにも満たないほどの黄色く細長い粒です。10〜30個ほどのまとまりで葉の裏に産みつけられるため、見慣れると意外と近くで見つけられます。アブラムシがつきやすい植物の葉の裏をのぞいてみるのがポイントです。
幼虫

数日ほどで卵からふ化した幼虫は、成虫とはまったく違う姿。黒~灰色の細長い体にオレンジ色の模様があり、小さな突起が並んでいるためトゲトゲした印象です。「見たことはあるけれど、テントウムシだと思わなかった」という場合もあるかもしれません。
この時期はとても活発で、葉の上を動き回りながらアブラムシを食べて大きくなります。成虫になるまでに食べるアブラムシの数は、なんと400匹以上。10日~2週間かけて、7mmほどにまで成長します。
さなぎ

十分に成長した幼虫は、葉や茎にしっかりと体を固定し、さなぎになります。コンクリートの塀なども見つけやすい場所です。
さなぎは丸みのある半球形で、色は黄色や黒っぽいものなどさまざま。じっと動きませんが、その中では成虫になるための大きな変化が進んでいます。さなぎの期間は1週間ほどで、羽化の瞬間に出合えることもあります。
成虫
羽化直後はまだ色が薄く、模様もはっきりしていません。数時間たつと、赤や黒のはっきりした模様が浮かび上がり、私たちがよく知る丸い成虫の姿に。
春から秋にかけて草地などでアブラムシを食べて生活し、寒くなると落ち葉の下や枯れ木のすき間などで冬を越します。同じ場所に身を寄せ合うように何匹も集まって寒さをしのぎ、何も食べずじっとして、春がくるのを待ちます。
★身近なテントウムシの種類

テントウムシは、コウチュウ目テントウムシ科に属する昆虫で、丸みのある体と短い触角が特徴です。半球形のころんとした姿や、目立つ色は多くの種類に共通していますが、色や模様、食べものは種によってさまざま。
アブラムシを食べる肉食の種類もいれば、葉を食べる植物食の種類もいるなど、暮らし方にも違いがあります。
身近で見かけるテントウムシにもいくつかの種類があり、違いに気づくと虫さがしがぐっと楽しくなります。日本にはテントウムシの仲間が約180種類知られており、公園や道ばたで見かけるものはその一部です。
ナナホシテントウ

代表的な種類のひとつがナナホシテントウです。全国に分布し、平地から山地の草地まで幅広い環境で見られます。体長は4〜6mmほどで、赤い翅に黒い点が7つ並ぶ分かりやすい見た目が特徴です。
幼虫・成虫ともにアブラムシを食べるため、ヨモギなどアブラムシがつきやすい植物のまわりを探すと見つけやすいでしょう。春から秋にかけて見られ、特にアブラムシが増える時期には活動が活発になります。
成虫で冬を越すため、落ち葉の下や石のすき間などに身をひそめている姿が見られることもあります。
ナミテントウ

同じく身近な種のひとつがナミテントウです。体長は5〜8mmほどで、こちらも全国に分布し、草地や林などで見られます。
特徴的なのは模様の多様さ。赤地に黒い点のものだけでなく、黒地に赤い点、まだら模様など、200以上の模様のパターンが知られています。同じ種類でも見た目が違うため、「別の虫かな?」と思うかもしれません。
餌はナナホシテントウと同様アブラムシ。アブラムシから農作物を守るためにも活躍中です。ビニールハウスなどから飛んでいってしまわないように、飛びにくい性質をもつものを選んで掛け合わせた系統が現場で使われ始めています。
ニジュウヤホシテントウ

少し性質の異なる種類が、ニジュウヤホシテントウです。ニジュウヤホシテントウは、体長は5〜7mmほどで、赤褐色の体にたくさんの黒い点があるのが特徴。本州から南西諸島まで広く分布し、畑や草地で見られます。
幼虫、成虫ともにジャガイモやナスなどの葉を食べる植物食で、農作物にとっては被害につながることがあります。ナス科の植物の葉の裏に網目状に食べられた跡が残っていれば、この種がいるかもしれません。
参照:
飛ばないナミテントウ 技術マニュアル|国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 西日本農業研究センター
なす ニジュウヤホシテントウムシ|高知県農業振興部
★探してみよう!テントウムシ

テントウムシは、小さい子どもでも、少し意識するだけで比較的簡単に見つけられます。
春は特に、アブラムシがつきやすいヨモギや草花のまわり、道ばたや公園の草の中をゆっくり見てみるのがおすすめです。家庭菜園の葉の裏ものぞいてみると、思わぬ出合いがあるかもしれません。
似ている虫としてよく見かけるのがハムシ類です。テントウムシと同じく甲虫(こうちゅう)の仲間で、ピカピカした硬い羽や丸くて小さい体型など、見た目はよく似ています。
見分けのポイントは触覚。テントウムシは触角が短く、頭の長さほどしかありませんが、ハムシは触角が長めです。
テントウムシを手に取ると、黄色い液体が手について驚いた経験があるかもしれません。この液体は、外敵から身を守るために足の節から出すものです。においや味で「食べられない」と感じさせる役割がありますが、人が触っても心配はいりません。
赤や黒の派手めな模様も「危険かもしれない」というサインとなり、外敵から身を守るための大切な特徴のひとつです。死んだふりをすることもありますが、動き出すのをじっと待ちましょう。
観察するときは、そっと手にのせ優しく扱い、観察し終わったら元の場所に戻すなど、小さな命への配慮も大切にしたいところ。身近な自然とやさしく関わることが、これからの外あそびをより豊かなものにしてくれるでしょう。
ライター
曽我部倫子
東京都在住。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、小さなお子さんや保護者を対象に、自然に直接触れる体験を提供している。
子ども × 環境教育の活動経歴は20年ほど。谷津田の保全に関わり、生きもの探しが大好き。また、Webライターとして環境問題やSDGs、GXなどをテーマに執筆している。三姉妹の母。