夏のイメージがあるスキューバダイビングですが、秋冬が真骨頂といっても過言ではありません。筆者は約20年ダイビングを楽しんでおりますが、夏以外の季節がほとんどです。秋冬ダイビングの魅力を知り、ぜひ今後のダイビングライフの参考にしてください。
レジャーダイバーは夏以外で楽しんでいる!?
ダイビング初心者に言うと驚かれるのですが、中級者以上のレジャーダイバー(ダイビングを趣味とするダイバー)は夏よりも秋冬にダイビングスケジュールをたくさん入れている方が多いです。
夏=人混み
夏のオンシーズンはレジャーダイバー、ブランクダイバー(期間が空いているスキルが不安なダイバー)、体験ダイビング等で大変混み合います。海だけでなく器材の取り間違えや、ご飯屋さんやレンタカーの予約も取りづらいので、中級者以上になると夏=海、というより夏=人混みといったイメージのほうが大半でしょう。
また人が多すぎるため、スキルの良し悪し関係なくチームを組まされることも少なくありません。ライセンスを持っているダイバーが、体験ダイバーと一緒に潜らなければいけないという悲惨な場面に遭遇したこともあります。
秋冬で上がる透視度
「夏はあんなに濁っていたのに、全然違う海みたい!」
筆者が講習生からよく聞いた言葉です。同じ海なのに季節によって見え方は全く変わり、透視度が一番上がるのが冬。
日本全国でぐんぐん透明度が上がります。近場にこんな海があるんだということを経験すると、早く潜りたくてウズウズすることでしょう。
また透視度が上がることで水中生物の観察もしやすく、ガイドやバディとのコミュニケーションもとりやすくなるため、快適さが格段に違いますよ。
広大な海を独占しているような感覚
ダイビングサービスによっては冬になると、ゲスト1人対ガイド1人という貸し切り状態を味わうことができます。
それは海も然り。ゲストが1名でしかもスキルが伴っていて、かつ透視度がいいと、安全性が高いためほったらかし状態なんてことも。ガイドを気にせずに広大な海を独り占めしている状態を味わうことができます。
ちなみに筆者は水中生物を撮りまくるというよりは、周りを何も気にせず(ぶつかるということがないから)浮遊感を楽しむことが大好きです。
秋冬でのスキューバダイビングの楽しみ方
秋冬のダイビングの魅力は人の少なさ、自由度だけではありません。筆者のおすすめする秋冬ダイビングの楽しみ方は、以下の3つです。
・大型回遊魚との遭遇
・水中撮影
・流氷ダイビング
大型回遊魚との遭遇
テレビやSNSで見られる大型回遊魚の大迫力動画は、国内だと秋冬も多く見受けられます。
特に沖縄離島は、通年透視度の高い環境なのに、冬になると一段と高くなるうえ、ハンマーヘッドシャーク(アカシュモクザメ)やジンベエザメなどに遭遇することも。ここは海外!?と一旦場所を確かめたくなるような感覚に陥ります。
※アカシュモクザメとジンベエザメは人を襲うことが少ないといわれています
水中撮影
大型回遊魚だけでなくマクロ生物と称される、ウミウシやカニやエビといった小さな水中生物たちも活発になる時期です。
全国的に透視度が上がる時期なので生物が見えやすく、ダイバーが少なくなるので周りを気にせずにゆっくりと水中撮影を楽しむことができます。
▼水中撮影を楽しむコツはこちらの記事をご参照ください
流氷ダイビング
氷の下をダイブする流氷ダイブは、日本国内だと北海道の知床半島ウトロ地区が主流で、2月〜3月の1か月だけという希少なダイビングです。
流氷の上を歩いて沖まで行き、潜る場所に自分たちで穴を空けて氷の下へ潜るという、ダイバーの冒険心を掻き立てるダイビングスタイル。
流氷は常に動いているので、すべての風景が一期一会。流氷と海と光が織りなす絶景は、まさにダイバーにしか得ることができない唯一無二の体験です。
ここは抑えよう!必要な装備と準備
水中にい続けるアウトドアなので寒さ対策は必要不可欠です。寒いと楽しめないということはもちろんですが、以下のような状況を引き起こす可能性が高くなります。
・エアーの消費が早くなる
・集中力が低下
・頭痛
・低体温症や減圧症のリスクが高まる
自身の危険だけでなく、周りにも迷惑をかけてしまいます。しっかりと準備をして、快適なダイビングをしましょう。
ウェットスーツの場合
ウェットスーツは5mm以上のフルスーツ、もしくは2ピースで、フルオーダーがおすすめです。
既製品やレンタルだと、隙間が空いていることが多く、そこから新しい水が随時侵入してくるのでダイビング中の約40分間、寒さを我慢する時間になってしまいます。
フルオーダーでも専用のインナーや、フードを着用しましょう。もし暑ければ脱げばいいだけなので、この準備は怠ってはいけません。
▼ウェットスーツのインナーについて詳しく知りたい方はこちら
ドライスーツの場合
3.5mmのドライスーツと専用のインナー、冬用のフードとグローブが必要です。水温や天気に合わせて、中のインナーやフードの有無を自身で調整します。
▼ドライスーツのインナーについての詳細記事はこちら
またドライスーツ用のフィンがおすすめです。ドライスーツ時ネックであるフィンの脱着やバランスの取り方が、専用フィンを使用することで解消されることがほとんどなため、ぜひ試してみてください。
秋冬のおすすめダイビングスポット
秋冬おすすめのダイビングスポットはたくさん点在しているのですが、今回は厳選して3つ紹介します。
与那国島(よなぐにじま)
日本の最西端にある与那国島の魅力は、12月後半から3月にかけて高確率で遭遇するハンマーヘッドシャークの群泳です。
約300匹ハンマーヘッドの群れは、ハンマーリバーと称され、ダイバーにとってまさに勝景。
また与那国島を一気に有名にしたダイビングポイント「海底遺跡」も外せません。人工物なのか自然の地形なのか、いまだに議論が絶えず、何度行ってもダイバーの探究心を刺激してくれる場所です。
久米島(くめじま)
久米島には「大型回遊魚のメッカ」と称される、超有名ポイント「トンバラ」があり、ベストシーズンが秋冬です。水温が低い時期はハンマーヘッドやジンベエザメの遭遇もあり、ギンガメアジやロウニンアジの群れはまさに圧巻。筆者はここで何度もクジラの鳴き声を聞きました。
また冬の久米島は、暖かい時期のイメージが強いマンタ(オニイトマキエイ)の遭遇も高確率。しかもニューカレドニアやパラオなど、海外でしか見ることができなかったブラックマンタが、近年久米島に現れるようになり、こぞってダイバーが久米島を訪れています。
柏島(かしわじま)
水中撮影を好むダイバーであれば一度は行ってみたい柏島。約1,000種類の水中生物が生息するまさに海の宝庫で、ダイバーの間では「マクロ王国」と呼ばれています。
しかも、九州より以北であるにもかかわらず、冬でも厚手のウェットスーツとフードベストでダイビングを楽しむことができる海です。透視度も1年を通して一番高い時期になり、水中生物観察をより快適に行うことができます。
ゆっくり水中撮影の練習がしたい、水中生物をじっくりガイドしてほしいというダイバーには、秋冬の柏島をおすすめします。
ライター
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マリンスポーツのジャンルを得意としたwebライター。海遊びの楽しみ方やコツを初心者にも伝わるよう日々執筆活動中。スキューバダイビング歴約20年、マリンスポーツ専門量販店にて約13年勤務。海とお酒と九州を愛する博多女です。