フリーダイビングとは
フリーダイビングとは、息を止めたまま潜るダイビング競技のことで、別名「アプネア競技」と呼ばれることもあります。
いわゆる「素潜り」「息ごらえ潜水」で、深度、距離、時間を競う、まさに命がけのスポーツです。
1990年代に世界中で大ヒットした映画「グランブルー」を観て、初めてフリーダイビングを知ったという人も多いのではないでしょうか?
劇中に登場するジャック・マイヨールとエンゾ・マイヨルカは実在したフリーダイバーで、60~70年代にかけて二人はフリーダイビングの世界記録を競い合っていました。
その後、二人の意思を継いだ多くのフリーダイバーが誕生し、ウンベルト・ペリッツァーリやピピン・フェラーレスといったスター選手も誕生し、次世代の二人をモデルにしたドキュメンタリー映画「オーシャンメン」も制作されました。
フリーダイビングの競技種目
フリーダイビングの競技は、大きく分けて「深度」「距離」「時間」の3つで競い合います。それぞれ、どのような競技種目があるのか見てみましょう。
深度競技
フリーダイビングの代名詞ともいえる深度競技は海で行われ、次のような種目があります。
CWT(コンスタントウェイト・フィン有り)
フィンを装着して、どれだけ深く潜れるかを競う競技です。ガイドロープを使ってはいけないルールです。
CNT(コンスタントウェイト・フィン無し)
フィンを使わず自身の泳力だけで、どれだけ深く潜れるかを競う競技です。CWTと同様にウエイトは固定で、ガイドロープを使ってはいけないルールです。
FIM(フリーイマージョン・フィン無し)
フィンを使わず自身の泳力とガイドロープを使用して、どれだけ深く潜れるかを競う競技です。ウエイトは固定です。
時間競技
距離を競う競技はプールで行われ、次のような種目があります。
DYN(ダイナミックアプネア・フィン有り)
フィンを装着して、水平方向にどれだけの距離を泳げるかを競う競技です。
DNF(ダイナミックアプネア・フィン無し)
フィンを使わず自身の泳力だけで、水平方向にどれだけの距離を泳げるかを競う競技です。
時間競技
時間を競う競技はプールで行われ、次の種目があります。
STA(スタティックアプネア)
水面に浮いた状態で、どれだけ息を止めていられるかを競う競技です。
その他
非常にリスクが高いため競技種目としては行われませんが、個人の記録挑戦として次のような種目があります。
VWT(ヴァリアブルウェイト)
ザボーラという器具を使って潜降し、どれだけ深く潜れるかに挑みます。
ウエイトの変更が可能で、浮上の際はフィンやガイトロープを使うことができます。
NLT(ノーリミッツ)
最も危険とされる種目で、ザボーラという器具を使って潜降し、どれだけ深く潜れるかに挑みます。
ウエイトの変更が可能で、フィンやガイトロープのほかエアリフトの使用も可能になっています。
フリーダイビングの世界記録
フリーダイビングの世界記録はどれくらいなのか気になっている方も多いのではないでしょうか?
フリーダイビングの国際機関「AIDA」が発表してる2019年1月時点での世界記録をまとめておきました。
男性部門
CWT | 130m | Alexey MOLCHANOV | Russia |
CNF | 102m | William TRUBRIDGE | New Zealand |
FIM | 125m | Alexey MOLCHANOV | Russia |
DYN | 300m | Giorgos PANAGIOTAKIS | Greece |
DNF | 244m | Mateusz MALINA | Poland |
STA | 11分35秒 | Stephane MIFSUD | France |
VWT | 146m | Stavros KASTRINAKIS | Greece |
NLT | 214m | Herbert NITSCH | Austria |
女性部門
CWT | 107m | Alessia ZECCHINI | Italy |
CNF | 73m | Alessia ZECCHINI | Italy |
FIM | 97m | Sayuri KINOSHITA | Japan |
DYN | 243m | Magdalena SOLICH-TALANDA | Poland |
DNF | 191m | Magdalena SOLICH-TALANDA | Poland |
STA | 9分02秒 | Natalia MOLCHANOVA | Russia |
VWT | 130m | Nanja VAN DEN BROEK | Netherlands |
NLT | 160m | Tanya STREETER | USA |
出典:AIDA(International Association for the Development of Apnea)
フリーダイビングの世界記録を見るとただ驚くばかりです。
注目のフリーダイバー「ウィリアム・トラブリッジ」
世界中が注目している一人のフリーダイバーがいます。
そのひとが、現在、CNF部門の世界記録保持者であるニュージーランドの「ウィリアム・トラブリッジ」選手です。
なぜ、ウィリアム・トラブリッジ選手が注目を集めているのかと言うと、彼のフリーダイビングはフィンを使わずに自身の泳力だけで潜るもっとも純粋なスタイルをとことん追求しているからです。
彼がYouTubeにアップしたバハマのブルーホールに挑んだ動画は世界中の人の度肝を抜きました。
驚くことにフィン、ウエイト、ウエットスーツは一切使用せず、水中マスクと水着一枚だけでフリーダイビングに挑んでいるのです。
ちなみにウィリアムの現在のパートナーは、女優でフリーダイバーの福本幸子さんという日本人女性です。
赤ちゃんにも恵まれ幸せいっぱいのようですね。
人間はイルカになれるのか?
人間はイルカのように長く海に潜れるようになるのでしょうか?
ジャック・マイヨールは著書「イルカと、海へ還る日」のなかで、イルカのクラウンが「息を止め深く潜れば水と一体となり、ゆっくりと解放される」と教えてくれたと語っています。
イルカやクジラにはブラッドシフトと呼ばれる機能があり、海に潜ると心拍数が下がり、血液を脳や心臓といった重要な器官にだけ送り、酸素の消費を減らせることができます。
そして、さまざまな研究によって、人間にもブラッドシフト現象が起こることが解ってきました。
実際、世界には生まれ育った環境の影響で、長く水中に潜れる人たちが大勢います。
日本の海女さんもそのひとりですし、インドネシアのボルネオ島周辺には、現在も潜水用具を使わずに水中を歩き、長く水中にとどまりながら魚を捕る「バジャウ族」と呼ばれる民族もいます。
イルカやクジラの潜水能力が、何百万年もかけて進化させてきたものなら、いつか人間がイルカのようになれる日がくるのかもしれませんね。