波はどのようにして生まれるか?
海で波が立つ理由は、地震による海底の変動で起こる津波、船舶の航行によって立つ引き波などさまざまな理由が考えられます。
私たちが知っている海の波は、そのほとんどが海面を吹く風によって生まれたものです。
海の波「さざ波」
海面に風が吹くと、表面の海水は風に引きづられて動こうとしますが、空気と水は比重が大きく異なることから、水の粒子は簡単には動きません。
しかし、海面も風も一様ではないため、全く動かない粒子から動かされる粒子まで、影響も一様ではありません。この結果、極めて狭い範囲で海水には小さな起伏が生まれます。
起伏が生まれると風による摩擦も大きくなるので、起伏はさらに大きくなって周囲に次々と伝わっていき、海面には規則的に並んだ小さな波が広がっていくのです。これがさざ波です。
さざ波は風が止むとすぐに消えてしまいますが、風が強くなり風の影響を受け続けると、成長して風波(風浪)になります。
台風のような強風が広範囲に長期間にわたって吹き続けると、風波は30mを超えるほどまでに発達することもあるのです。
また、さざ波とビッグウェーブはつながっています。いずれも、時には膨大な量となる風のエネルギーによって生み出される気象現象なのです。
海の波の発達と風の関係
海面に吹く風によって生まれた小さな波が、その後、成長し続けるかどうかは、風しだいです。
風が吹いていれば、一度できた波の斜面はさらに風のエネルギーを受け、波はそのサイズをどんどん大きくしていきます。
逆に、風が吹き止むと波はエネルギーを失って海面はフラットに戻ります。波が発達するためには、風が吹き続けることが必要なのです。
波の発達に関わる3要素
風が吹き続ければ波が発達し続けるかというと、じつはそうではありません。
波によって海面が盛り上がっているということは、重力に逆らっている状態です。たとえ小さな波でも、盛り上がっている水の重量は相当大きなもの。
その高さを保つだけでも大きなエネルギーが必要です。波が発達を続けるには、吹き続けると同時に、その風が強くないとなかなか持続した発達には至りません。
また、波の発達には風が吹き渡る距離=吹走距離が必要です。プールのような小さな水面上にどんなに強い風が吹いても、波の高さが1mになることはありません。
ある試算によると、風速50m/sの風が25mプールの上を吹き抜けても、その波の高さはわずか17cmです。一方、風速10m/sの風が海上を200kmにわたって吹けば、波の高さは3mになります。
このように、波の発達には、風速、吹き続ける時間、そして吹き渡る距離の3つの要素が関わっているのです。
記録に残る巨大な波とは?
では、波はいったいどれぐらいの高さにまで成長するのでしょうか?記録に残る巨大な波を調べてみました。
外洋で30m級の巨大な波
船舶の航海では、1995年に大型客船「クイーン・エリザベス2」が29mの巨大な波に遭遇したほか、2001年には南大西洋を航行中のクルーズ船と大型客船が、30mの巨大な波に遭遇し、被害にあっています。
今まで巨大な波は、観測できる機会が少ないため、あまり記録されていませんが、大型タンカーや大型コンテナ船の被害が年間平均10隻程度報告されるに至り、2001年以降は、欧州宇宙機関が衛星画像で巨大な波の研究を行うなど、多方面から注目されるようになりました。
欧州宇宙機関の報告によると、外洋では30m級の巨大な波の発生はそれほど珍しいものではないようです。
巨大な波でのサーフィンのギネス記録
人は楽しむために波に乗る貪欲な生き物です。サーフィンにおけるビッグウェーブのサイズはどのぐらいなのかご存知ですか?
ワールドサーフリーグ(WSL)は、2017年11月8日にポルトガルのナザレで、ロドリゴ・コウシャが乗った80ft(24.38m)の波を、ビッグウェイブ・アワードに認定。
その後、この記録はギネスにも登録されました。そのときの映像はこちらをご覧ください。
公式サイト:World surf League
風波とうねりの性質とは
海でウサギが飛ぶ?!
強い風にあおられて生まれた風波は、波頭が切り立ち、形も大きさも不揃いです。
また、急に現れたり、現れても周りの空気を巻き込みながら、自らの重みに潰されて白波となって砕けてしまいます。
風速が高いと、青い海面は白波に覆われて白くなります。これが、「ウサギが飛ぶ」と表現される状態です。
海のうねりとは
風波はある程度発達すると、その付近の海面は激しく揺さぶられるため、その振動は風がない周囲の海域まで伝播していきます。池に石を投げ込むと、周囲に丸く波紋が広がる現象と同じです。
これがうねりで、英語では「スウェル」と言います。うねりは最初のエネルギーを効率良く遠くまで運ぶ性質を持っています。
うねりは風波と異なり波頭が丸く、傾斜もなだらかで波の間隔や進行方向も規則正しくほぼ一定です。
ゆったりとした動きですが、その内部には大きな風波のエネルギーを含有しており、それをはるか遠くまで運びます。台風などのうねりの到達距離は1万km以上のときも。
それがビーチや岩礁などの浅瀬に届くと、そのエネルギーが解放されて大きなブレイクを伴うビッグウェーブとなるのです。