海流、潮流ともに、スケールの大きな海水の流れですが、ビーチ際でボードスポーツを楽しむときに、もっと身近で直接私たち関係してくる小規模の流れがあります。それが離岸流です。離岸流は、もっとも危険性が高い流れとして注意喚起が行われています。今回は、危険な離岸流の発生の仕組みやその危険性について解説します。

波によって生まれる離岸流とは

気象 基礎知識

海には大洋レベルで流れる海流や、潮汐によって生まれる潮流の他に、もっと身近で、予期しにくい強い流れがあります。それが離岸流です。別名「リップカレント(RIP CURRENT)」と呼ばれています。

これは、サーフィンの世界ではとくに頻繁に登場してくる言葉で、略して「カレント(流れ)」と呼ばれており、砂浜で発生する離岸流のことを限定して「リップカレント」と呼ぶこともあります。

離岸流はビーチに打ち寄せる波によって運ばれた海水が、沖に戻っていくことによって発生する現象で、文字どおり岸を離れていく流れのことです。

海難事故のニュースでよく使われている言葉のため、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

海底が砂地のビーチで発生しやすく、流れが強いことから、夏はよく海水浴客が沖に流される事故の原因となっています。

変化しやすい砂地の離岸流(リップカレント)

砂浜で発生する離岸流(リップカレント)が発生するビーチの海底は砂地のため、絶え間なく打ち寄せる波によって砂の積み重なり具合が変わりやすく、それにともなってカレントの速さや発生場所も変化します。

流れは流動的で、地形の経年変化によっても少しずつ変わったり、台風が来たときには大きく変化することもあります。

海の状況は常に変化しているため、以前に訪れたことがあるビーチでも、訪れるたびに必ずチェックすることで、思わぬ事故を防ぐことにもつながります。

同じ場所で発生する危険な離岸流(リーフカレント)

ビーチの海底は砂地ばかりではありません。リップカレントは砂地の海底で発生しますが、これ以外でも発生する離岸流があります。

それが、岩礁やサンゴ礁(リーフ)の切れ目で発生する離岸流です。これを「リーフカレント」と呼びます。

原理はリップカレントと同じです。リーフを超えて内側に入ってきた海水が、リーフの切れ目から勢いよく外側に流れ出ていく現象です。

ただし、リップカレントとは少し特徴が違います。岩礁やサンゴ礁は砂地と違って固定的で周辺の地形も変化しないため、いつもほぼ同じ場所で発生するのです。

また、固定的な地形は、その形状によっては速い流れを常に生み出します。

さらに下げ潮の通り道になっていることが多く、下げ潮が重なると、あっという間に流されるほど非常に速い離岸流となります。

とても危険なため、リーフカレントの発生しやすい場所ではアクティビティは絶対に避けましょう。

 

離岸流のメカニズム

離岸流

波によって広範囲の海岸に打ち寄せた海水は、沖に向かって引いていきます。しかし、すべての海水が均等に沖に向かってい引いていくわけではありません。

比較的波の勢いが弱いところや、砂の海底が掘れて水路のようになっているところに海水が集約され、まとまって引いていきます。

このため、波によって打ち寄せる海水の流れよりも、引いていくカレントは強い流れになるのが特徴です。

さらに、波のサイズが大きければ大きいほど、このカレントも強く速くなります。想像以上に速いカレントであるため、水難事故がよく起きるのです。

 

離岸流の場所を見つけるには

気象 基礎知識

では砂浜に立って、どこに離岸流があるのか、すぐに見つけることできるのでしょうか?

波がない穏やかなコンディションの日は、流れも弱く見つけることはまずできませんし、気にする必要もありません。

しかし、波がある日は流れも強いため注意が必要です。場合によっては強風が吹いていることもあり、沖へ流される要素が格段に増えてきます。

基本は波が小さくなっているところが離岸流と思われますが、波が次々と打ち寄せる場合や、海面が荒れて波の形がジャンクな場合は、見分けるのはなかなか困難です。

そのようなときは、同じビーチにいる地元の人や近隣のショップで尋ねることがおすすめです。

 

離岸流から逃れる方法はあるのか?

気象 基礎知識

サーフィンをはじめ、SUPサーフィンやウィンドサーフィンでは、ベテランになると楽に波を越えて沖に出るために、あえて離岸流を利用することもあります。

しかし、海水浴をはじめウォーターアクティビティを楽しむ一般の人は、自分の意図に反して離岸流によって沖に流される可能性があります。

流された時のために、離岸流から逃れる方法を覚えておくことが大切です。

離岸流から逃れる方法:流れに逆らわない

離岸流に乗って沖に流されていると感じたら、多くの人は浜に戻ろうと流されている沖とは反対方向の浜へまっすぐ向かって進もうとします。

しかし、流れに逆らって進もうとしても強く速いため、人間の泳力では太刀打ちできません。離岸流の幅はそれほど広くありません。

そのため流されたと感じたときは、目の前にある浜や出発した地点を目指すのではなく、浜と平行に横移動することがポイントです。

多くの場合、数十メートルも進めば離岸流の影響から脱出することができます。

そして、離岸流から抜け出せば、沖へ向かう流れはなくなり、逆にビーチまで海水を運んでいる波に乗ることができます。

離岸流に乗ってしまったと感じた時は、焦らず落ち着いて対処をするようことが大切です。

離岸流はどんなアクティビティをする上でも、気をつけなければいけない存在です。海水の流れは目に見えない上、離岸流の流れは速く、流されると命に関わります。最近では、海上保安庁などが離岸流の危険性についての注意喚起を行っていますが、それでも離岸流での水難事故は絶えません。どんなに穏やかに見えても、海は目に見えない危険があることをじゅうぶんに認識しておくことが大切です。

ライター

Greenfield編集部

自然と向き合い、環境に配慮しながらアウトドアスポーツを楽しむ人に向け、自分や周囲のウェルビーイングの向上につながる情報をお届けします。