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毎年夏になると多発する、海や川での水難事故。自分は大丈夫だと思っていても、相手は水という自然です。ちょっとしたことでも生死にかかわるため、誰にでも危険がつきもの。そこで今回は、水難事故に遭ったときに命を守る対処法をご紹介します。

2020年夏、海での水難事故の状況

水難事故 対処法

夏になると、海や山、湖、川などに出かけたくなりますよね。そのように水辺には、涼を求めて多くの人が訪れます。

コロナ禍による自粛と閉鎖された海水浴場が多い今年でも、各地はそれなりに賑わいを見せているようです。

そこで遭遇してしまう可能性があるのが、水難事故。なかでも代表的な水難事故といえば、海水浴場で溺れてしまうことです。

今年は多くの海水浴場が閉鎖されていますが、第3管区海上保安本部(横浜)管内の海では、2020年8月に入りすでに11名もの死亡者や行方不明者が出ています。

つい先日も、75歳の男性が溺れて意識不明の重体になる事故がありました。

また、今年はマリンレジャーに伴う事故も多発しています。飲酒状態でのシュノーケリングによる事故や、ウィンドサーフィン、SUPなどでの事故も。

さらに、釣りの最中に防波堤や岩場などから海中へ転落してしまう事故は、毎年頻繁に発生しています。

このように、夏は普段海に行き慣れていない人で賑わうこともあり、水難事故が頻発してしまうのです。

 

水難事故の対処法「ういてまて」とは?

水難事故 対処法

それでは、万が一溺れてしまったときは、どうすれば命を守れるのでしょうか?

効果的な対処法として、今もっとも注目を集めているのが「ういてまて」です。

「ういてまて」とは、その言葉通り身体を水面上に浮かせて、救助されるのを待つというもの。人間の体は息を吸っていると体の98%が水中に沈み、2%が水の上に出るといわれています。

垂直の体勢では水の上に出る2%が頭頂部になってしまうので、呼吸することはできません。さらに、この状態で息を吐いてしまうと、体は完全に水没してまいます。

しかし、仰向けで背中で浮いている状態になれば、水面上に出る2%の部分に鼻や口が含まれるのです。ギリギリですが、この状態なら呼吸が続けられます。

この仰向けで背中で浮いている状態のことを“背浮き”と呼び、これが「ういてまつ」ための体勢になります。

水難事故の際に「ういてまて」の方法

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これは、水難学会会長である斎藤秀俊・長岡技術科学大教授が、運動靴が水に浮くほど軽い素材を使っていることにヒントを得て、2000年に提唱した方法です。

それでは、背浮きの方法について詳しく説明していきましょう。

  1. 大きく息を吸い、肺に空気を溜める。
  2. あごは呼吸しやすいように上げて、上を見るようにする。
  3. 手は水面より下にし、ペットボトルやカバンがあれば、胸に抱える。
  4. なければ手は大の字に広げ、背筋は曲げずに伸ばす。
  5. 軽い靴には浮力があるので、靴は履いたままで。着用している衣服にも脇の下などに空気があることもあるので、脱がない。

このように、もし水難事故の当事者となった場合、「助けて!」と手を上げてしまうと体全体が水中に沈んでしまいます。

つまり、水に流されているときはむやみに声を出さずに背浮きの体勢になって長時間呼吸を確保し、待つこと=「ういてまて」を行うのが有効な対処法といえるでしょう。

水難事故の際の「ういてまて」の実例­

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この「ういてまて」によって、じつはすでに多くの命が救われています。ここでは、その実践例をご紹介していきます。

「ういてまて」の実例①東日本大震災

宮城県東松島市にある小学校では、2003年からすでに「ういてまて」の講習会が行われていました。

東日本大震災で避難した体育館に津波が押し寄せたとき、児童や先生がこれを実践したことにより、全員無事でことなきを得たそうです。

「ういてまて」の実例②漂流男性

静岡県伊東市沖で行方不明となった男性が、約21時間後、約40km南の下田市の海岸にたどり着き無事に生還した例もあります。

男性は足ヒレをつけていましたが、泳力は25m程度。

体力を温存しながら、鼻に水が入らないよう水中マスクで顔を覆って、夜通し仰向けに浮き続けたそうです。

海外に広がる「UITEMATE」

2011年には、ベトナムで開かれた世界溺水予防学会において、前出の斎藤教授らがこの「ういてまて」紹介しました。

すると注目を集めて「UITEMATE」が日本語のまま広まり始め、翌年には海外の水難救助の専門家が集めた国際フォーラム「UITEMATE2012」が東京で開かれ、スリランカやフィリピン、米国などから指導員講習会に参加したそうです。

その後も、タイでは2013年に20回も講習会が開催され約1,000人もの人が指導員となり、インドネシアでもフォーラムが開かれました。

スリランカではライフセービング協会が中心となって本格的に「ういてまて」を広めていて、研修を受けた救急隊員や水泳指導員が学校などで講習会を開いています。

 

もし水難事故をみつけたら?

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自分が水難事故に遭うのではなくても、訪れたビーチで人が流されていたり溺れていたりするなどの異変をみつけたら、現場にいる人の責務として救うための行動をとる必要があります。

とはいっても二重遭難の危険が高いため、自らが助けに水中へ飛び込む方法ではありません。

まずは、その事実を人に伝えることを優先するようにしましょう。もしその遭難者の仲間がビーチにいるとわかれば、はじめにその人たちに伝えてください。

そして、ライフセーバーやマリンショップの店員など海の専門家が近くにいたら、速やかに伝えましょう。

水難事故の緊急連絡は?

海の場合は海上保安庁の緊急ダイアル「118番」に、川や湖の場合は警察「110番」や消防「119番」に連絡します。

特に、海上保安庁の緊急ダイアル「118番」はまだまだ認知度が低いため、“海のもしもは118番”と覚えておくといいでしょう。

いざというときに、初めて背浮きの姿勢をとるのはなかなかむずかしいもの。さらに、海はもちろん湖でも風が吹けば波立ち、水面が穏やかでない場合も。その状態での背浮きは顔に水がかかることも多く、決して簡単ではないでしょう。そういったときに備え、普段から各地の講習会を受講したり、ネットで情報を確認したりしておきましょう。海水浴やマリンスポーツをしに行ったときには、「背浮き」を試しておくこともおすすめします。

ライター

Greenfield編集部

【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。