コーディネーショントレーニングは、子どもの運動神経を養うことで知られていますが、その能力はスポーツだけでなく日常の動作にも必要なもの。高齢者の介護予防にも採用されています。介護予防としてのコーディネーショントレーニングについてご紹介します。

介護予防への取り組みは社会問題

高齢者 コーディネーショントレーニング

日本はとても早いスピードで高齢化が進んでいる国です。

介護を必要とする人の割合の増加ペースも拡大しています。

それに伴い、介護に携わる人材の確保やロボットの開発などのテーマがしばしば話題になっていますね。

人生100年といわれる時代、介護される人を将来的に増やさないようにすることは、現在の私たちにとっての大きな課題といえるでしょう。

要支援者と軽度要介護者の増加

日本で要介護認定受けた人の数は、この20年間で3倍近くまで増加しています。

そしてその増加ペースは拡大傾向にあります。

なかでも、日常生活において食事や排せつ、移動など、場面ごとの介助時間によって決まる要介護認定基準時間が50分未満の軽度要介護者の増加傾向が拡大しています。

これは、重度な介護は必要ないものの一人では生活するのに不安があるレベルの人が多くいることを示しています。

最近では、今以上に介護が必要なレベルにしないため、または介護レベルの進行を遅らせるためのリハビリメニューが介護サービスに取り入れられています。

参照:内閣府

各自治体の介護予防への取り組み

各自治体では、健康寿命を延ばすための介護予防事業に力を入れています。

保健師や作業療法士、理学療法士などの専門家が立案したプログラムが用意され、転倒やロコモティブシンドローム、フレイルの予防を目的とした楽しみながらできる体操などが取り入れられています。

また、ポールを使ったウォーキングや健康マージャン、盆踊りなど、健康目的だけではなく、周りの人々との交流もできるプログラムも展開されています。

これらの活動はデイケアやデイサービスを受ける中で行われているだけではなく、地域ごとに設けられた公共施設でも行われるようになってきています。

地域の人々が集まり、交流しながら活動するという取り組みは、身体的な変化のみを目的とせず地域とのつながりや見守りといった生活支援にも繋がっていきます。

こういった活動を継続しているうちに、杖なしで歩けるようになったり、階段を上がれるようになったりといった効果も期待できるようです。

 

高齢者とコーディネーショントレーニング

高齢者 コーディネーショントレーニング

介護予防への取り組みとして実際に行われているコグニサイズ(認知症予防予防運動)は、例えば踏み台昇降運動をしながらしりとりをするというもの。

これは、子どもの運動神経を発達させるためのコーディネーショントレーニングと似ているのではないでしょうか?

子どもの成長と、高齢者の介護予防とに共通するものとは何でしょうか?

なぜコーディネーショントレーニングを取り入れるべきか?

脳に刺激を与えながら身体を動かすコーディネーショントレーニングは、脳からの命令・伝達を速く、正確に行うためのトレーニングです。

トレーニングといっても、ゲーム感覚で楽しみながらできる運動ですので、子どもの神経系が発達するゴールデンエイジに行うと運動神経が発達するといわれています。

ゴールデンエイジをとうに過ぎてしまった大人には意味のない運動でしょうか?

人間の脳については様々な研究がされていますが、脳の一部の機能については50代位から衰えてくるという説があります。

この脳の衰えは、体力の衰えと同じように、対策することが可能で、それに向いているのがコーディネーショントレーニングなのです。

「脳トレ」はブームを過ぎて定着した感がありますが、コーディネーショントレーニングはこの脳トレに身体的運動を加える形で、簡単に楽しく介護予防に取り組めます。

運動が嫌い、苦手、または運動の必要性は感じていても長続きしない、という人にもレクリエーション感覚で参加しやすいため、介護予防にも最近は取り入れられています。

コーディネーショントレーニングと能力

コーディネーショントレーニングによって刺激できる能力は、

  • リズム
  • バランス
  • 反応
  • 定位
  • 変換
  • 連結
  • 識別

の7つで、脳で受け取ったイメージをうまく身体に伝えて動かすことが求められます。これはスポーツだけでなく、日常生活でも必要な能力です。

道を歩いているときに障害物を避けたり、躓いても転ばないようにしたり、手すりを使って階段を昇降したりと意識せずに反応できるのはコーディネーション能力です。

コーディネーション能力を鍛えることは、日常生活において、危機を察知して回避したり、体をうまく使うことで怪我を防止したりすることに繋がります。

そして、コーディネーショントレーニングには絶対の決まりはなく、ルールも自由に変更可能。

できる・できない、上手・下手というのは問題ではありません。

考え方や方法が定着してしまえば、専門家や指導者の立ちあいも必ずしも必要ではありません。

だから、「やりかたがわからない」とか、「人数が集まらない」などの理由で運動ができない、ということにはなりません。

高齢者の運動というと、真面目に取り組む人、自分にはまだ必要ないという人、二極化しがちですが、ご近所でできるレクリエーションのようにコーディネーショントレーニングへの間口が広がれば、介護予備軍をも巻き込んだ、介護予防の解決方法のひとつになるかもしれません。

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Greenfield編集部

【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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