スウェーデンの教育システムの評価
スウェーデンの教育システムは、OECD(The Organisation for Economic Co-operation and Development)から、とても高く評価されている教育システムがとられています。
このOECDとは、先進国間の自由な意見交換や情報交換を通じて経済成長や貿易自由化、途上国支援に貢献することを目的としている団体で、各国への調査なども行っています。
じつは、日本の教育システム自体もOECDから同等の評価をされていて、世界トップ10にも入っています。
しかしながら、スウェーデンの教育と日本の教育効果は大きく異なるようです。
それは生活への生活満足度(Life Satisfaction)です。
生活満足度とは、人々が今の生活にどの程度満足しているかを数値化したもので、スウェーデンは40か国中9位に入っていますが、日本は40か国中32位に位置付けられています。
なぜ、スウェーデンと日本にはこんなにも生活満足度に違いがあるのでしょうか?
これは、スウェーデンの教育システムに取り入れられているアウトドア教育が関係しているといわれています。
スウェーデンで取り入れられているアウトドア教育とはどんなものなのでしょう。
スウェーデンの初等教育とアウトドア
スウェーデンの初等教育は、下記のような3つの段階に分けられています。
- 1.Förskolan (フォルスコーラン)
- 2.Förskoleklass (フォルスコーレクラス)
- 3.Grundskolan (グルンドスコーラン)
Förskolan (フォルスコーラン)
おもに1歳~6歳を対象としている教育課程で、日本の幼稚園・保育園にあたります。
このスウェーデンの教育におけるFörskolan (フォルスコーラン)は、Skolverket: スコールヴェルケット(スウェーデンの学校庁)がカリキュラムを定めていて、それに則ってスウェーデンの初等教育におけるカリキュラムは形成されています。
Förskoleklass (フォルスコーレクラス)
6歳〜7歳の子どもたちが、初等教育を受けられるように準備として受ける教育課程です。
Grundskolan (グルンドスコーラン)
日本でいう小学校と中学校を合わせた義務教育課程にあたります。
これらの初等教育のなかには、アウトドア教育がカリキュラムに含まれていて、文字を書くことや単語を覚えることよりも、地球の温度を測定したり、岩の大きさを測ったりしながら学びを深めています。
スウェーデンの中等教育とアウトドア
スウェーデンの中等教育は、Gymnasieskolan(ジムナシエスコーラン)といわれる教育課程で、日本の高等教育にあたります。
対象は16歳~19歳までの子どもを対象としています。
このスウェーデンの中等教育におけるアウトドア教育は、初等教育とは内容が少し異なり、子どもたちの学習レベルに合わせて行われています。
教育カリキュラムとしては、より社会的な活動としての内容が多く含まれていて、スウェーデンの環境教育センターや、国際環境保存団体、やNPOスポーツフィッシング団体などと学校が連携しています。
このなかには、マインドフルネス(ヨガや禅の教えを科学的に分析して使えるようにしたもの)や、アウトドアでの料理といったものを実施しています。
また、中等教育でのアウトドア教育では、学校の先生が、なぜ・どのように・何をアウトドアで行うと良いのかということを明確にしなければ、授業の質が高まらず、子ども達への健康増進や学びが提供できないため学校の先生に対するコンサルテーションなども行っています。
スウェーデンでアウトドア教育を行っている学校のうち、過去20年で7,000人を超える教師が、コンサルテーションを受けながら研修を積んでいます。
アウトドアが教育に取り入れられている背景
スウェーデンの教育課程にアウトドア教育が取り入れられている背景について、下記のように指摘されています。
教育学者のダールグレン(Dahlgren, L. O. )は、教育の中で教科書からの学習方法は、知識の一端を知ることはできるものの、上辺だけの学習に陥る可能性があると指摘します。さらに、知識の理解を深めるためには、読者のイメージする文章表現にとどまるのではなく、アウトドアを活用した体験型の学習を取り入れることによって、教育活動が扱っている現象にまで結びつける必要があると考えます。
西浦和樹(2017).アウトドア教育で科学するこころを育てる 創造的問題解決による知識の活用を促す教授法とその実践 日本創造学会SIGアクティブ・ラーニング特集,26-29.
つまり、教室の中で学んだ内容を、アウトドア教育で自分たちの日常生活へ結びつけることによって、
単なる知識“ではなく、生活の知恵として子供たちに理解してもらうためにアウトドア教育を行っているのです。
また、アウトドア教育などの時間は子どもだけではなく教師の健康と幸福感(ウェルビーイング)を高めます。
継続的なアウトドア活動は、ストレスに関連した病気や、他の健康問題を減らすことができるのです。アウトドアでの授業もまた、一日の休息によって容易に病気を減らすのです。
西浦和樹(2017).アウトドア教育で科学するこころを育てる 創造的問題解決による知識の活用を促す教授法とその実践 日本創造学会SIGアクティブ・ラーニング特集,26-29.
上記のように、自然がストレスを軽減することは、多くの研究で言われていることを、Michelle C. Kondo他が述べています。
この研究では、自然環境における身体的・心理的ストレス反応を調査した43の研究についてまとめていて結果として、緑や自然の空間自体がストレスを軽減すると結論付けています。
The hypothesis behind many studies that evaluate the relationship between stress and physical environments is that exposure to the outdoors, particularly green or natural spaces, can lead to stress reduction.
Michelle C. Kondo, Sara F. Jacoby, Eugenia C. South(2018).Does spending time outdoors reduce stress? A review of real-time stress response to outdoor environments, Health & Place, 51: 136-150.
このように、アウトドア教育の効果としてストレスの低減は子供・教師をより健康にして、幸福感(Well-being)を高めるだけではなく、子どもたちの日常生活と学習した知識を結び付けるツールとしてとても有効なのです。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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