クライミングのチッピングとはなにか?なぜいけないのか?
チッピングとは?
クライミングにおけるチッピングとは、登るルートの岩を人為的に削って新たなホールドをつくり出したり変形させたりする行為、またはホールドを破壊する行為のことです。
法律的には犯罪には問われることは少ないといわれていますが、クライミング界においては大きなタブーとされています。
なぜチッピングをするのか?
その目的はいくつかあるといわれています。
- ホールドを持ちやすくして登りやすくするため
- 反対に登りにくくしてグレード(難易度)を上げるため
- 単なるイタズラ目的
私的な恨み(開拓者に対する恨み、または岩場でのアクセス問題に起因するトラブルからの恨み)
による嫌がらせなどが考えられます。
なぜチッピングをしてはいけないのか?
このようなチッピング行為は絶対にやってはいけないことです。
岩場はすべてのクライマーの共有財産といえるものです。
チッピング行為によって破壊され、形を変えられた岩は二度と元の形には戻せません。
多くのクライマーは、ひとつの課題を登るためにその岩場に通いつめます。
その課題には今まさに挑戦している人、過去に完登した人、これから挑戦したいと考えている人の大切な思いが染み込んでいるのです。
チッピングはそのようなクライマーの思いを踏みにじり、侮辱する行為でもあるのです。
また、クライミングには開拓者と呼ばれるそのルートを最初に登った人がいます。
その開拓者が作ったルートを後から勝手に変えない、という暗黙のルールがクライミングには存在します。
チッピングは開拓者への敬意も欠いた行為であり、絶対的なタブーとされているのです。
日本の岩場におけるクライミングのチッピング事例
①御岳・忍者返しの岩における大規模チッピング
発生年月:2018年12月
御岳で最も多くのクライマーを集める忍者返しの岩で、大規模なチッピングが行われました。
チッピングされたホールドは5ヶ所。
チッピングされた痕跡から、大掛かりな工具で行われたと予想されています。
このチッピングされたホールドにより、課題は1-1.5グレード程度むずかしくなっています。
日本を代表するボルダリングエリアで、最人気課題での大規模チッピングだったのでクライミング界に激震が走り、大きな物議を呼びました。
②日本最難ボルダー那由多 (V16/6段ー)ホールド破壊
発生年月:2018年6月
日本を代表するプロクライマー、小山田大氏が2017年4月に初登した、下呂・ワールドロックの 日本国内最難ボルダー課題・那由多(V16) のホールドが破壊されました。
那由多のチッピングは、チッピングというレベルを大きく越え、完全に破壊されてしまっていました。
この破壊行為によって、那由多は課題として完全に消滅してしまいました。
③北山公園、将棋岩のスタートホールドのチッピング
発生年月:2009年9月
北山公園の看板課題である将棋ノーマル(1級)の「100万人スタンス」と呼ばれるホールドが、何者かによってチッピングされ削られました。
「100万人スタンス」はツルツルで足を置くことがむずかしく有名でしたが、このチッピング行為によってホールドは足をしっかりと乗り込めるようになってしまいました。
あきらかに登りやすくするためのチッピング行為です。
クライミングでチッピングされた岩場を登ってもいいのか?
それではチッピングされてしまった課題は登ってもいいのでしょうか?
これについてはクライマーによっても見解は大きく異なります。
チッピングされてしまった課題を、課題として認めてしまうことで、「チッピング行為そのものを容認してしまったことになるのではないか」という危惧があります。
そのため、チッピングされてしまった課題は登らないようにしようという自粛ムードがクライマーの中にはあります。
ただ、これに関しては個人の自由であるので絶対に登ってはいけないということはありません。
登る、登らないは個人の判断に任せられています。
大切なのは2度と同じようなチッピングを繰り返させないことです。
そのためには、その課題がチッピングされたことを知らずに登っているクライマーや、チッピングという行為自体を知らないクライマーに、「チッピング行為は絶対にしてはいけないこと」という意識を持たせることです。
近年のクライミングブームによって、クライミングジムだけでなく外の岩場に出ていくクライマーも増えました。
クライミングジムとは違う外岩ならではのルールやマナーを啓蒙していくことが大切です。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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