なぜ、ケイブダイビングに挑むのか?
水中洞窟でのケイブダイビングは、一部のトップダイバーによって行われている非常に危険なダイビングのひとつ。
その理由は簡単で、浮上することのできない頭上が完全に覆われている洞窟内ではエアー切れが、即「死」に繋がるからです。
実際にケイブダイビング中の死亡事故も多く、数年前には入ることのできた水中洞窟も、事故が起きてから閉鎖されてしまったというスポットも少なくありません。
2018年に起きたタイ洞窟遭難事故で、救助活動に向かった元タイ海軍のダイバーが、洞窟内で死亡したという事件をご存知の方も多いのではないでしょうか。
メンバーらがいる遭難現場まで物資を届けに行った元海軍特殊部隊のダイバーが潜水中に死亡するなど、状況は危ぶまれた。死亡原因は、物資を届けに行った帰りで、酸素ボンベの残量がなくなったとされている。
出典:Wikipedia
ケイブダイビングは、まさに命がけのダイビングと言えるでしょう。
ではなぜ、リスクを背負ってまで危険なケイブダイビングに挑む必要があるのでしょうか?
良識のある大人であれば、誰もがそう思うはずです。
もちろん、ケイブダイビングはすべてのダイバーが望むものではありません。
しかし、探求心と冒険心に溢れる一部のトップダイバーたちのケイブダイビングに対する情熱を止めることはできないのです。
テクニカルダイビングとは?
ケイブダイビングのように、レクリエーショナルの範囲を超えるダイビングのことを、「テクニカルダイビング」 あるいは「テックダイビング」と呼びます。
ケイブダイビングのほか、混合ガスを使用した水深40m以深へのディープダイビングや、 沈船の内部に侵入するレッグペネトレーションダイビングなどもテクニカルダイビングです。
テクニカルダイビングは以下のように定義されています。
- 40m/130ftを超えるダイビング
- 段階的な減圧停止を伴うダイビング
- 水面からの縦、横合計距離が40m/130ftを超えるオーバーヘッド環境(直接水面に浮上できない環境)でのダイビング
- ダイビング中、加速減圧及び/又は様々な混合ガスを使用するダイビング
出典:PADIジャパン
テクニカルダイビングはあくまで一部のダイバーが、その探求心と冒険心を満たすために行っているダイビングです。
普通のダイビングに飽き足らなくなったダイバーなら、テクニカルダイビングに挑戦してみるのもひとつの選択となるでしょう。
ケイブダイビングに挑戦するには?
ケイブダイビングでは、たくさんの専用器材を使用します。
たとえば、普通のスキューバダイビングで使用するタンクは1本ですが、ケイブダイビングは2本から4本のタンクを状況に合わせて使用しなければなりません。
狭い岩の間を通るにはサイドマウントのタンクも必要ですし、重要な器材はすべてバックアップ器材を用意する必要もあります。
加えて、視界不良やロストラインなどの緊急事態にも備えなければいけないのです。
そのため、ケイブダイビングを行うには、テクニカルダイビング教育指導団体の専門講習を受け、徹底した訓練を受ける必要があります。
テクニカルダイビングで指導団体には、世界最大のテクニカルダイビング指導団体TDI、1985年に設立されたIANTD、レクリエーショナルダイビングで世界最大のシェアをもつPADIのTecRecプログラムなどがあります。
ケイブダイビングの訓練と種類
ケイブダイビングの訓練には、洞窟の入り口からの距離によってカヴァーン、イントロケーブ、フルケーブと3種類にわかれています。
テクニカルダイビング指導団体TDIのケイブダイビング講習を参考に、それぞれの特徴を見てみましょう。
カヴァーンダイバー
カヴァーンとは、水中洞窟の入り口から比較的近い距離で、入り口からの光が差し込んでいる範囲のことです。
出口の見える水中トンネルなどもカヴァーンにあたり、普通のシングルタンクでのスキューバダイビングでも潜ることが可能。
カヴァーンダイビングの専門知識を学ぶことで、洞窟内での適正なフィンキックや方向を見失わないためのテクニックを身につけることができます。
イントロダクトリーケーブダイバー
イントロケーブは、リールのラインを使ってケイブダイビングに必要なスキルを習得するトレーニングを行います。
カヴァーンの範囲を超えて、光が見えなくなる距離まで水中洞窟を進むためです。
ダイビングの装備もバックアップ器材の装備が必要になってくるため、リクレーションダイビングの域を越えた世界に入ります。
フルケーブダイバー
磨かれたダイビングスキルと経験、ケイブダイビングに必要な完全な装備があるダイバーだけが到達できる範囲です。
「死」と隣り合わせの世界では、恐怖に打ち勝つだけの強い精神力も必要になってきます。
しかし、そこには命知らずのダイバーでしか目にすることのできない水中世界が待っているはずでしょう。
ケイブダイビングに挑戦しようと思っている方へ
普通のダイビングでは飽き足らなくなってしまったダイバーにとって、ケイブダイビングを含むテクニカルダイビングの世界は選択のひとつとなるでしょう。
しかし、決しておすすめはいたしません!
なぜなら「帰って来られなくなる可能性」 があるからです。
やるかやらないかは、あなた次第なのです。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。