「マイクロプラスチック」という言葉を耳にする機会が増えましたが、どこから生まれ、どう広がるのかは意外と知られていません。実は、洗濯や車の移動、使い捨ての習慣など、日常の行動が深く関わっています。本記事では、マイクロプラスチックの定義や発生源、自然への影響を整理し、洗濯・移動・買い物など身近なシーンで実践できる対策を紹介します。
マイクロプラスチックとは何か

洗濯の排水が流れる音、道路を走るタイヤの摩擦、風に舞う包装。目に見えない欠片であるマイクロプラスチックは、日常の風景の中で知らぬ間に発生しています。
まずは、マイクロプラスチックの定義と種類を整理し、問題視される理由について見ていきましょう。
マイクロプラスチックの定義は5mm未満
マイクロプラスチックとは、5mm未満のプラスチック片を指します。米粒よりも小さく、砂粒と紛れるほど微細であるため、目で確認するのは困難です。粒が細かくなるほど、自然環境での回収も難しくなります。
マイクロプラスチックは、以下のような経路で拡散していきます。
- 洗濯や掃除による排水に含まれて下水や排水路へ流れる
- 川に合流し、そのまま海へと到達するケースもある
目に見えない小さな粒であっても、私たちの暮らしから自然環境へと連続的につながっています。「海岸で見つかるプラスチック片は、街の生活の延長にある」という視点を持ち、問題を正しく理解する出発点にしましょう。
一次マイクロプラスチックと二次マイクロプラスチックの違い
マイクロプラスチックは、「一次」と「二次」に分類されます。一次マイクロプラスチックは、プラスチック製品を作る前の原料の粒です。工場から流出したり、輸送中にこぼれて海岸に漂着することがあります。
二次マイクロプラスチックは、大きなプラスチックが砕けて小さくなったものです。ペットボトルや包装材が日光や波、摩擦で欠片になり、さらに細かな粒へ変わっていきます。
このように生まれ方が異なるため、一次マイクロプラスチックは使用する段階で流出を抑える工夫が必要であり、二次マイクロプラスチックを防ぐにはごみを増やさない習慣が大切です。
マイクロプラスチックが問題視される理由
マイクロプラスチックが厄介なのは、広がりやすく回収しにくい点にあります。粒が小さいほど見つけにくく、川や海に入り込むと集める手段が限られてしまいます。また、生態系への影響も大きな懸念材料です。
具体的には、以下のようなリスクがあります。
- 小さな生き物が餌と間違えて摂取する可能性がある
- 摂取されたマイクロプラスチックが、食物連鎖を通じて他の生き物にも影響を及ぼす
このように、マイクロプラスチックは単なる「ごみ」ではなく、生態系全体に波及する環境問題の一因となっているのです。
マイクロプラスチックはどこから出るのか

マイクロプラスチックは、海岸などの自然環境ではなく、私たちの日常生活の中から生まれています。ここでは、生活の中で見落とされがちな発生源と、そこから川を経て海へと流れ込む仕組みを見ていきましょう。
洗濯で出るマイクロファイバーが原因になる
家庭での洗濯は、マイクロプラスチックの一種である「マイクロファイバー」の大きな発生源です。合成繊維でできた衣類を洗うと洗濯中に衣類同士がこすれ合い、細かな繊維くずが抜け落ちやすくなります。
たとえば、フリース素材やスポーツウェアを洗濯したあと、糸くずフィルターにふんわりと繊維がたまっている場合は要注意です。また、洗濯回数が多い衣類ほど、繊維の劣化によって繊維くずの排出量が増える点も見逃せません。
これらの繊維くずは、フィルターを通過して排水とともに外へ流れ出し、水路や川を経て海に達する可能性があります。
タイヤ摩耗によるマイクロプラスチックが増えている
車の走行でも、目には見えないマイクロプラスチックが発生しています。タイヤは走るたびに路面と摩擦を起こし、少しずつゴムの粉が削り取られて道路に残ってしまうのです。
たとえば、雨の日に以下のような現象を見たことがあるのではないでしょうか。
- 水たまりが引いたあと、側溝に茶色い筋が流れ込んでいる
- 雨水が、道路表面の粉じんやタイヤかすを巻き込みながら流れている
このように、タイヤの摩耗によって生じた粒子は、雨とともに側溝に集まりやすく、最終的に河川や海へと運ばれていきます。
プラスチックごみの劣化でマイクロプラスチック化する
プラスチックごみは自然環境の中で劣化し、やがて目に見えにくいマイクロプラスチックへと変化していきます。日光、風、波、摩擦といった複数の要因が重なることで、表面がもろくなり、砕けやすくなるのです。
たとえば、次のような状況では、プラスチックが小さな欠片になりやすくなります。
- 海辺に放置されたペットボトルやレジ袋が、時間とともにひび割れる
- 地面に落ちたプラスチック片が風や車に踏まれて削られていく
大きなごみは目につきやすいため回収も可能ですが、細かく砕けた欠片は砂や土に紛れて見つけにくく、一度小さくなってしまうと回収は非常に困難になります。
川から海へ流れるマイクロプラスチックの経路
マイクロプラスチックは、家庭の排水や道路に降った雨水とともに流れ出し、やがて川を通じて海へと到達します。生活の中で発生した小さな粒子は、それぞれ次のような経路をたどります。
- 洗濯時に出た繊維くずは、排水管から下水道へと流れる
- タイヤ摩耗などで発生した粒子は、雨に流され側溝に集まる
- 排水や雨水は、最終的に川に合流し、海へとつながっていく
このように、川は海へ続く一本の通路であり、内陸部の街で発生したマイクロプラスチックが、遠く離れた海岸へ届く可能性もあるのです。
海岸で小さなプラスチック片を見つけたときには、その背後にある川沿いの生活や排出経路にも目を向けてみてください。身近な場所でごみをひとつ拾う行動が、海へ流れ着く欠片を減らすことにつながります。
マイクロプラスチックが自然に与える影響

マイクロプラスチックは非常に小さく、海や川の生き物が日常的に接触しやすい存在です。体内に取り込まれることによる直接的な影響に加え、「食べる・食べられる」という生態系内での関係を通じて、広範囲に影響が及ぶことが懸念されています。
ここでは、マイクロプラスチックの自然環境に対する主な影響について解説します。
海洋生物がマイクロプラスチックを摂取するリスク
海の中では、マイクロプラスチックの大きさが餌のサイズに近いほど、生物が誤って摂取するリスクが高まります。これまでに以下のような生物が、マイクロプラスチックを誤って取り込んだ例が報告されています。
- プランクトン
- 貝類(アサリ、ムール貝など)
- 小型魚類(イワシ、サバなど)
マイクロプラスチックが体内で消化されずに胃や腸に留まると満腹感が持続し、餌を食べる量が減少する可能性があります。その結果、成長不良や体力低下などの健康被害が生じる恐れがあるのです。
化学物質を運ぶ可能性と食物連鎖への懸念
マイクロプラスチックには、化学物質を吸着しやすいという特性があります。海中に存在する有害な化学物質が粒の表面に付着したり、もともとプラスチックの樹脂に含まれている添加剤がにじみ出たりするのです。
以下のような経路で、化学物質が生物の体内に取り込まれるリスクがあります。
- マイクロプラスチックの表面に海水中の有害物質が付着する
- 生物がそれを摂取すると、粒子だけでなく付着物質も体内に入る
- さらにそれを捕食する他の生物へと、影響が連鎖していく
たとえば、小魚や貝がマイクロプラスチックを摂取し、それを捕食する中型魚や鳥、大型魚へと連鎖することで、食物網全体への影響が広がるわけです。
生態系への影響はどこまでわかっているか
海や川に生息する多くの生物から、マイクロプラスチックを体内に取り込んでいた事例が報告されています。しかしながら、自然環境は非常に多様であるため、マイクロプラスチックの影響を一律に評価することは困難です。
以下のような要素が影響の程度を左右します。
- マイクロプラスチックの大きさや形状
- 材質や含まれる化学物質の種類
- 生息海域や季節、気象条件
- 生物の種類や生活環境
このように、現在のところ影響の有無ではなく、「どのような条件で、どの程度の影響があるのか」という点が研究や議論の中心となっています。
したがって、科学的な解明を待つ姿勢だけでなく、排出の「入口」を減らす行動を一人ひとりが積み重ねる意識が重要です。たとえ小さな取り組みでも、継続することで自然環境への負荷を確実に減らしていけるでしょう。
マイクロプラスチックを減らすために今日できること

マイクロプラスチックの多くは、日々の暮らしの中から発生しています。裏を返せば、発生源が身近であるからこそ、対策も日常の中で無理なく始められるといえるでしょう。
ここでは、洗濯・移動・買い物の3つの場面に分けて、継続しやすい工夫を紹介します。
洗濯でできるマイクロプラスチック対策
洗濯のちょっとした工夫で、マイクロプラスチックの排出を抑えることが可能です。たとえば、以下の点に配慮してみましょう。
- 洗濯する回数を極力減らす
- 洗濯ネットを使用して衣類の摩耗を軽減する
- 洗濯物を詰め込みすぎず、回転が激しくなりすぎない設定にする
- 化学繊維(フリースやインナー)は、衣類同士や洗濯槽とのこすれを防ぐためにネットに入れて洗う
たとえば、特殊メッシュ素材を採用した「グッピーフレンド・ウォッシング・バッグ」のように、マイクロファイバーの流出を抑えられる洗濯ネットが販売されているのでチェックしてみてください。
また、洗濯機の糸くずフィルターの掃除も重要なポイントです。洗濯が終了したら乾く前に掃除をすると、湿った糸くずをまとめて処理しやすく、飛散を防げます。
移動と車の使い方でできるマイクロプラスチック対策
車での移動時は、タイヤと路面との摩擦によってマイクロプラスチックが発生します。小さな粒子は雨に流され、やがて川や海へと到達する可能性があるのです。
たとえば、以下のようなタイヤを長持ちさせるエコな運転が重要な対策になります。
- 急発進や急ブレーキを避け、ゆっくり発進・早めの減速を意識する
- 月に1回を目安にタイヤの空気圧を点検する
- 短距離は徒歩や自転車に切り替える日を決める
ちなみに筆者は、発進をゆっくり、停止は早めの減速を意識し、信号手前で慌てて踏み込まないようにしています。また、買い物で歩いていけるような距離なら、車をなるべく使用しないようにも心がけています。
まずは、「2km以内は歩く」などのルールを決めてみてはいかがでしょうか。
使い捨てを減らしてマイクロプラスチックの発生を抑える
プラスチックが屋外で劣化すると細かな欠片になりやすく、マイクロプラスチックの発生源となります。たとえば、以下のような習慣や意識をもつと、効果的な対策になるでしょう。
- マイボトルを持ち歩く
- 詰め替え用の商品を優先して購入する
- 使い切れる分だけを買い、余らせないようにする
購入したプラスチック容器は、風で飛ばされないよう袋をしっかり結ぶ、屋外に放置しないなど管理を徹底しましょう。
ライター
阿部 コウジ
釣り歴30年以上のアウトドアライター。自然豊かな清流や渓谷に魅せられ、環境と共生する釣りの魅力や自然を大切にしたアウトドアの楽しみ方を発信。釣った魚を食べるのも好き。将来はキャンピングカーで車中泊しながら、日本各地の釣り場を巡るのが夢。