北アルプスの人気縦走ルート、雲ノ平を3泊4日で歩いてきました。黒部源流の大自然と「天空の楽園」雲ノ平とともに、日本百名山の鷲羽岳(わしばだけ)や水晶岳も縦走。アクセスやコースの詳細とともに、テン泊装備で悩んだことや注意点なども紹介します。北アルプス縦走を計画している人や、雲ノ平登山を目指す人はぜひ参考にしてみてください。
日本最後の秘境「雲ノ平」とは?

「日本最後の秘境」と称される雲ノ平は、黒部源流域に広がる標高2,500m前後の溶岩台地です。広大な草原に木道や岩稜が点在し、可憐な高山植物が彩る景観は、まさに天空の楽園。太古の大地を思わせる風景を求め、多くの登山者が訪れます。ただしアプローチは長く、いずれのルートを選んでも山深い行程を要するため、数日間の縦走計画が必要です。その分、人里離れた静けさとスケールの大きな自然を体感できますよ。
登山者が憧れる雲ノ平の魅力

登山を愛する人なら、一度は訪れてみたいと憧れる「雲ノ平」。北アルプスの奥深くに広がる特別な高原には、ほかでは味わえない魅力が詰まっています。
“天空の庭園”と呼ばれる特別な空間
どこまでも続くような平原が広がる雲ノ平は、「天空の庭園」と称される別世界。ハイマツの先に突如現れる広大な風景は、登山の疲れを忘れさせ、心を解き放つような開放感ですよ。
一面に咲き誇る高山植物の宝庫
チングルマやハクサンイチゲ、ワタスゲなど、四季折々の高山植物が一帯を彩ります。とくに夏の花畑は圧巻で、山歩きをしながらまるで花の楽園を散策しているような気分に浸れます。
アルプスの名峰を一望できる絶景
槍ヶ岳や水晶岳、鷲羽岳といった北アルプスを代表する名峰をぐるりと見渡せる大パノラマ。朝焼けに染まるシルエットや夕日に輝く稜線は息をのむ美しさで、多くの登山者を魅了し続けています。
3泊4日で訪れる雲ノ平への準備計画

以前からずっと歩いてみたかった雲ノ平。そのままピストンをするなら1泊2日でも行けますが、せっかくの北アルプスなので周囲の名峰を登りながら歩く欲張りコースを計画。3泊4日でのテント泊は初めてだったので、事故がないよう下調べや準備をしっかりしました。アクセスやルートだけでなく、悩んだことなども一緒に紹介します。
基本情報
| 標高 | 約2,464m |
| 位置 | 富山県 |
| 登山適期 | 6月下旬〜10月下旬 |
| 主な登山口 | ・新穂高温泉登山口 ・折立登山口 ・高瀬ダム登山口 |
| 雲ノ平天気予報 | 雲ノ平てんきとくらす |
| 問い合わせ | 雲ノ平山荘 |
新穂高温泉登山口へのアクセス
登山口は3つありますが、筆者の家から1番アクセスのよい「新穂高温泉登山口」からの登山を計画しました。
車
| 関東・甲信越方面 | 長野道「松本IC」→安房トンネル→平湯→栃尾→新穂高(約90分) |
| 中部・関西方面 | 東海北陸道「飛騨清見」JCT経由→中部縦貫道「高山IC」→平湯→栃尾→新穂高(約70分) |
| 北陸・新潟方面 | 東海北陸道「富山IC」→神岡→平湯→栃尾→新穂高(約90分) |
| 新穂高温泉周辺の駐車場情報 | ・新穂高第三駐車場(無料)
※新穂高温泉の周辺には、有料と無料の駐車場がいくつかあります。詳細は新穂高駐車場マップで確認してください |
公共交通機関
| 東京方面(長野県側) | JR中央本線「松本駅お城口(東口)」→松本バスターミナル→アルピコ交通バスで「新穂高温泉」下車
時刻表はこちら→アルピコ交通時刻表 |
| 名古屋方面(岐阜県側) | 高山線「高山駅東口(乗鞍口)」→高山濃飛バスセンター→平湯・新穂高行きのバスで「新穂高温泉」下車
※特急バスは予約制なので早めに予約しましょう 時刻表はこちら→濃飛バス時刻表 |
雲ノ平・全行程ルート
雲ノ平へのルートは、どの山に立ち寄るか、どこに宿泊するかによって、1日のコースタイムが大きく変わります。今回は4日間、ほぼ同じくらいの行動時間になるよう計画し、グループ全員が無理のない行程にしました。
| 日程 | 行程・ルート(タイム)※コースタイムは山と高原地図参照 |
| 1日目 | 新穂高温泉登山口(60分)→中崎橋(10分)→笠新道登山口(10分)→わさび平小屋(20分)→小池新道登山口(60分)→秩父沢出合(90分)シシウドヶ原(60分)→鏡平山荘(60分)→弓折分岐(70分)→双六小屋キャンプ場
全コースタイム(7時間30分) |
| 2日目 | 双六小屋キャンプ場(70分)→双六岳(15分)→中道稜線分岐(50分)→三俣蓮華岳(30分)→三俣山荘(90分)→鷲羽岳(60分)→ワリモ北分岐(40分)→祖父岳(45分)→スイス庭園(25分)→雲ノ平山荘(25分)→雲ノ平キャンプ場
全コースタイム(7時間30分) ※余裕がなければ三俣山荘(30分)→黒部源流(110分)→祖父岳分岐(30分)→スイス庭園(25分)→雲ノ平山荘(25分)→雲ノ平キャンプ場(1時間5分短縮) |
| 3日目 | 雲ノ平キャンプ場(60分)→祖父岳(40分)→ワリモ北分岐(50分)→水晶小屋(40分)→水晶岳(30分)→水晶小屋(40分)→ワリモ北分岐(40分)→黒部源流(45分)→三俣山荘(155分)→双六小屋
全コースタイム(8時間20分) ※余裕がなければ雲ノ平キャンプ場(30分)→祖父岳分岐(100分)→黒部源流(45分)→三俣山荘(155分)→双六小屋 |
| 4日目 | 双六小屋キャンプ場(70分)→弓折分岐→(30分)鏡平山荘(40分)→シシウドヶ原(50分)→秩父沢出合(40分)→小池新道登山口(20分)→わさび平小屋(10分)→笠新道登山口(10分)→中崎橋(45分)→新穂高温泉登山口
全コースタイム(5時間15分) |
縦走登山の準備で悩んだこと

4日間歩けるのか不安があったので、不安要素をなくすために考えたのが以下の3つです。
荷物の軽量化の工夫
とにかく歩ききれるよう荷物をできるだけ軽くすることを意識しました。ベースの装備以外で重さを左右するのは、主に着替えと食料です。
着替えは極力減らすため、トップスはメリノウールのTシャツを選び、ボトムスは速乾性のある薄手のパンツにして3日間同じものを着用しました。就寝時には最終日の分の服をパジャマ代わりに使うことで対応。下着はモンベルのジオラインを4日間着用し続け、パンツ用シートだけを交換しました。汗や臭いによる不快感を心配していましたが、消臭効果のある素材を選んだおかげで、真夏のように汗をかく環境でも意外と快適に過ごせました。
ほかにもメイク落としや汗拭きシートはパッケージのまま持たず、「必要な枚数×日数分」だけを小さなジップロックにまとめる方法を採用。化粧品も化粧水・乳液・BBクリームを小分けにして、必要最低限にしました。荷物を軽くするコツは、ひとつひとつをできる限り小さく軽くすること。その積み重ねが歩きやすさにつながると実感しました。
食事のとり方
食事はなるべくドライフードにし、山小屋のご飯も取り入れて軽量化しました。詳しくは下記の別記事で紹介しているので参考にしてください。
ルート決め
目的地は雲ノ平でしたが、そこへ至るまでのルートはいくつもあり、1日の行程を長くすることも、短くすることもできます。今回は4人パーティーだったため、それぞれが行きたい場所や体力、歩くペースを考慮しながら決めるのが少し大変でした。
・休憩を含めた1日のトータル行動時間をあらかじめ算出する
・大まかな行程に加え、万一に備えたエスケープルートを用意しておく
・その日の体力に合わせ、無理に行動時間を延ばさないようにする
ルートの選択肢が多いからこそ、こうした点を意識したことで安心して雲ノ平を目指すことができたと思います。
縦走登山での注意点

今回の山行で気をつけたポイントをまとめてみました。
現地の最新情報を得る
台風の影響で橋が流され、前日まで秩父沢が渡れない状況でした。そのため折立からのルートも検討するなど柔軟に計画を変更できるようにしていました。川の増水や雪渓の状態、崩落など登山道の状況は天候によって日々変わるため、必ず最新情報を確認しておくことが大切です。
水場や山小屋の営業日・利用時間を事前に確認
山小屋で食事を利用する場合、小屋ごとに営業時間や提供内容が異なります。また水場の有無もルート選択や持参する水量に大きく関わるので、事前にしっかり調べておきましょう。
体調管理
長期の縦走では、日ごとの疲労が積み重なり体調不良につながることもあります。睡眠・食事・水分補給を意識し、少しでも不調を感じたら無理をせず行動を調整することが重要です。
ライター
yuki
幼少期からキャンプや釣り、スキーなどを楽しむアウトドアファミリーで育つ。10代後半は1人旅にハマりヨーロッパや北米を中心としたトラベラー期となる。現在もスキー、スノーボード、ダイビングなど海や山で活動中。「愛する登山」は低山から厳冬期の雪山まで季節問わず楽しむhike&snowrideなスタイル。お気に入りの山は立山連峰!Greenfield登山部/部長の任命を受け部活動と執筆活動に奮闘中。