軽くて保存が効く乾燥野菜は、登山ごはんの強い味方。野菜不足を補えるだけでなく、食品ロス削減や省エネ調理にもつながるサステナブルな食材です。今回は乾燥野菜の魅力やおすすめの乾燥野菜、簡単レシピを紹介します。

登山で野菜不足になりやすい理由

乾燥野菜

山で食べる食事は、登山の楽しみのひとつ。「今日は何を作ろうかな」と考えるだけで気持ちが高まりますよね。でも、実際には軽くて運びやすいインスタント麺やレトルト食品、フリーズドライのごはんを選ぶ人が多く、野菜が不足しがちです。では、なぜ生の野菜は、山に持って行きにくいのでしょう?

重さと鮮度の問題

野菜を山に持ち込むのが難しい大きな理由は、水分を多く含んでいるため、生のままだとかさばって重くなち運びづらいからです。生鮮食品の野菜は日持ちがせず、長時間の登山や縦走には不向き。野菜を持って行くには、創意工夫が必要です。

調理が限られる山ごはんの環境

もうひとつの理由は、山の上では調理器具が限られていること。お湯を注ぐだけで食べられる料理が中心になるため、どうしてもインスタントやレトルト食品に偏りがちです。その結果、栄養のバランスが崩れやすく、同じ味に飽きてしまうことも。

筆者自身、レトルトとフリーズドライだけで縦走した際に3日目くらいからイライラしやすくなり、体力も落ちて元気が出なくなる経験をしました。そのとき、「食事は心と体を整えるために欠かせないもの」と、痛感しました。

乾燥野菜は登山にうってつけの食材

乾燥野菜

インスタントやレトルト食品だけに頼らずごはんをもっと楽しみたい。そんなとき頼りになるのが「乾燥野菜」です。登山に乾燥野菜を利用するメリットを紹介します。

軽量・コンパクトで長期保存可能

「重いし、すぐ傷む…」。そんな野菜の弱点を解決してくれるのが乾燥野菜です。最大の魅力は軽さと保存性。水分を飛ばしてあるため驚くほど軽く、袋入りでも数十グラム。バックパックに入れてもかさばらず、常温で長期間保存できます

戻すだけで手軽に栄養プラス

乾燥野菜

お湯や水で数分~10分ほど戻すだけですぐに食べられるのも大きな利点。スープや味噌汁に加えれば、野菜を手軽に摂取できます。とくに縦走中のように栄養が偏りやすいときには、心強い味方です。

スーパーやネット通販で気軽に入手

乾燥野菜はスーパーやネット通販で簡単に購入できます。規格外野菜を活用して食品廃棄を減らすなど、サスティナブルな商品も増えています。常備しておけば、「冷蔵庫が空っぽ!」というときにも役立ちますよ。

登山におすすめの乾燥野菜は?

乾燥野菜

山ごはんで役立つ乾燥野菜を選ぶなら、調理のしやすさや料理との相性がポイント。ここでは登山に持って行きやすい定番をいくつかご紹介します。

ミックス野菜(キャベツ・にんじん・ピーマンなど)

彩りがよく、炒め物やスープ、麺類に万能に使える定番アイテム。数種類の野菜がバランスよく入っているので、栄養面でも安心です。

葉物系(ほうれん草・小松菜)

味噌汁やラーメンに加えると、栄養価がぐんとアップ。山ごはんが色鮮やかにグレードアップします。葉物系は戻りが早いのも山でうれしいポイント

根菜系(ごぼう・大根・レンコン)

汁物はもちろん、シチューやパスタなどのメインディッシュでも存在感を発揮。薄切りやささがき状のものを選べば、火の通りも早く、調理もスムーズです。

洋風メニューに合う(ドライトマト・ナス)

パスタやリゾット、トマトスープにぴったり。ドライトマトの旨みやナスの食感は、山ごはんに変化を加えてくれます

これらの商品はスーパーの乾物売り場やネットショップで手軽に入手可能。数袋ストックしておけば、登山だけでなく普段の料理にも重宝します。

乾燥野菜で作る簡単山ごはんレシピ

乾燥野菜

乾燥野菜があると山ごはんがぐっとランクアップ! 乾燥野菜で初めて山ごはんをつくる人にもできる、簡単レシピを紹介ます。

ミックス乾燥野菜で作るクラムチャウダー

作り方
  1. 鍋に適量の水を入れて沸かし、ミックス乾燥野菜を加えてゆでる
  2. 1に粉末ミルクとシチュールウを加えて煮込む ※ベーコンやウィンナーを足せばコクが出ます
  3. とろみがついたら完成

野菜の甘みがスープ全体に広がり、疲れた体に染み渡ります。最近は1人分の量だけ買えるシチュールウも登場しているので、登山で活用しやすくなっています。

乾燥野菜のワンポットパスタ

乾燥野菜のスープパスタ。山ごはん

作り方
  1. 鍋にオリーブオイルと乾燥にんにくを入れ、弱火で香りが出るまで火にかける
  2. 1の鍋に適量の水を入れて沸かし、乾燥野菜(ドライトマトやミックス野菜、れんこんなど)、早ゆでのパスタ(サラスパやマカロニ)を加えてゆでる
  3. 塩と粉チーズで味を調える

仕上げにエキストラバージンオリーブオイルをかけると、香りがぐっと引き立ちます。多少水けが多くてもスープパスタのように食べられます。さらにより手軽に作るなら、市販の混ぜるだけパスタソースを使ってもよいでしょう。

主役級のスープも簡単に

作り方
  1. 鍋に適量の水を入れて沸かし、お好みの乾燥野菜と粉末コンソメや粉末鶏ガラスープを入れて煮る

温かなスープがすぐに完成。さらにパウチのツナや魚肉ソーセージ、卵などを加えれば、たんぱく質もプラスされてボリューム満点。縦走中でも手軽に楽しめる、ごちそうスープです。

自宅でもできる!手作り乾燥野菜

乾燥野菜

乾燥野菜は、特別な道具がなくても作れます。干しネットやフードドライヤーを使えば、あっという間に保存食に早変わり。冷蔵庫で余りがちな野菜も、長期保存できる食材として活用できます。

干しネットやフードドライヤーの活用法

スライスした野菜を干しネットやざるに並べて天日干しするだけでOK。筆者はざるにクッキングペーパーを敷いて、にんじんやズッキーニ、キャベツを乾燥させています。フードドライヤーがあればさらに簡単で、時間で乾燥野菜が完成します。

家庭で作れば食品ロス削減にも

旬の野菜が手に入ったときや、安売りしているときにまとめて乾燥させておくのがおすすめ。使い切れない葉物類などを乾燥させれば、日持ちし、食品ロス削減にもつながります

登山は体力を消耗するからこそ、バランスの取れた食事をとりたいもの。乾燥野菜を取り入れれば、山ごはんのバリエーションがぐんと広がり、不足しがちな栄養も無理なく補えます。軽くて日持ちがする乾燥野菜は、まさに登山にぴったり。体調管理の強い味方として、これからの山ごはんにぜひ活用してみてくださいね。

湊谷明子

ライター

湊谷明子

生活情報誌や女性誌、WEBなどで活動するフリーランスライター。女性誌で登山やキャンプでのアウトドアの特集も担当。自然の中での過ごし方や楽しみ方、安全に過ごすためのツール、アウトドアでの料理、犬と過ごすアウトドアなどについて執筆。好きな山域は「雲ノ平」と「徳沢」、好きなキャンプ場は「ふもとっぱら」。