スマホで気軽に写真を撮り、SNSにアップする。その楽しみが日常化している人が多いと思います。スマホのカメラ機能は年々向上していますが、ファインダーからのぞく世界を切り取るカメラの楽しみはまた格別。ケガをきっかけにカメラの趣味にはまった筆者のケースとともに、写真を撮る生活のメリットを解説します。
写真を撮る趣味によって生活の質は向上する!

早起きは三文の徳!人が少ない早朝のローマで撮影
写真を撮ることは、目の前の情景を残すだけではなく、そのときの感情や思い出をつづる作業。それはさまざまな効能をもたらすことが、ランカスター大学をはじめとする研究で報告されています。
メンタルのセルフケア
これまでよりも物事をじっくりと見つめて、写真の対象を見極める。その行為は、メンタルのセラピーにつながる可能性があることがランカスター大学の研究で報告されました。
人が不安やストレスにさらされる場合、専門家によるセラピーの重要性ははかり知れません。一方で、アートや創造に関連するアクティビティが精神の安定につながります。写真を撮るという行為も、その活動のひとつというわけです。
写真を撮ることで幸福感が向上し、ストレスが軽減される点が大いに注目されました。
気分がポジティブに
心理学者ミハイ・チクセントミハイは、「時間を忘れるほど何かに没頭する」状態を「フロー」と表現し、その瞬間は痛みや空腹さえも忘れると語っています。一流のアーティストに多く見られるフローの状態、そのような才能がない私たちでも写真を撮ることでも経験ができるそうです。
毎日わずかな時間でも写真を撮るという作業に集中することで、つらいことを忘れてポジティブな気分になれる可能性が高くなります。
SNS上の交流が孤独を癒す
撮った写真をSNSに投稿し、同じ趣味の仲間との交流が深まる。そのような経験も珍しくなくなりました。ランカスター大学の研究では、こうした交流が人々を孤独から救うことを報告しています。
過去に撮った写真を短いコメントとともにオンライン上に残すことで、思い出をたどることも容易に。これもまた、1人の時間の癒しにつながります。
フットワークが軽くなる
「いい写真を撮りたい!」という思いは、フットワークを軽くしてくれます。健康のために「ウォーキングをしなくては」と思うのはおっくうですが、写真を撮る楽しみや喜びがあれば別。ごく自然に、スマホやカメラを持って出かける習慣が身につきます。
ランカスター大学の研究者たちは、こうした結果をもとに、写真を撮るという習慣が新しいウェルビーイングの概念を生むと語っています。
ケガから始まった!私の本格的カメラ生活

2,500年前のローマ人が敷設した巡礼路が散歩道
私がカメラの趣味にはまったのは、ケガがきっかけでした。カメラを手にすることで、生活スタイルに変化が。スローライフがより楽しくなった経緯をお伝えしたいと思います。
ケガの功名?骨折で変わったライフスタイル
不注意で転倒し左足首を骨折、思うように動けない日々が続いていたころのこと。車いすに座ってベランダからローマの町を眺めていた私に、夫がカメラを持たせてくれました。
太陽の輝きによって変わる影の濃さ、秒単位で変わる雲の形、ベランダで咲かせたガーベラの強靭さ。それまで気がつかなかった森羅万象の美しさが、カメラのファインダーを通して心に飛び込んでくるようになったのです。それは療養中の大きな慰めになりました。
時間を忘れてひとつのものを見つめるという習慣は、ケガで動けなかった1か月の生活で得たものでした。
全快後はカメラを持って山へ!
骨折の原因のひとつは低い骨密度。専門医から、もっと運動をするように強く勧められました。ジムに通い始めただけではなく、裏山にカメラを持って登るのが毎週の習慣となったのです。
私が住む家の裏山には、2,500年前に古代ローマ人が敷設した巡礼路が残っています。石畳の道沿いには、季節ごとに山野草が花を咲かせる幻想的な世界。カメラに夢中になっていると、標高900mの山登りも苦にはなりません。
優しい風情ながらたくましい山野草は、名前を調べるのも楽しいものです。毎週登っていると広い山にもすっかりなじみ、忘れな草の群生地を見つけることも。悩みがあったりストレスで落ち込んでいる日も、変わらない自然の秩序に慰められます。
カメラ初心者も基本を知れば趣味として定着!

シルバーのカメラが愛用のLUMIX。植物の名を検索する本もいつも手元に
スマホカメラでの撮影からカメラ撮影に移行したいと思っている人は多いと思います。扱いが複雑そうでためらっている場合も、ぜひカメラを手にしてみてください。実践することで、カメラの楽しみはより深くなります。
愛機はLUMIX(DMC-LX100)
私が愛用しているカメラはLUMIXのDMC-LX100。今となっては古いのですが、愛着があって愛用中です。
実は娘が生まれたころ、成長を記録するために夫がデジタル一眼レフカメラ「NIKONのD600」を購入しました。性能は申し分ないのですが、重さがネック。小柄な私が持ち歩くには、ハードルが高すぎました。
そこで数年前に夫がプレゼントしてくれたのが、コンパクトなデジタルカメラ「DMC-LX100」。「コンデジ」というカテゴリーに属しますが、サイズはコンパクトながら、かなり本格的な写真が撮れるタイプです。
ダイヤルをぐるぐる回しながらファインダーをのぞき、カシャっというシャッター音を聞くと、プロ気分を味合わせてくれるカメラ。望遠はイマイチですし、液晶モニターは固定式なので不便もあります。
しかし愛用していると、その不便ささえも大切に思えてくるから不思議です。そうした欠点も含めて使いこなそう!という気分になってきます。
最初はすべてオートで
もともと日記をつけるのが日課だった私に、夫がプレゼントしてくれたLUMIXだったのですが、当初はまったく扱いきれませんでした。F値もISOもまるで未知の外国語、すべての写真はオートに頼っていたのです。
カメラに関する書籍を買い、本格的にカメラについて知ろうと思ったのはやはりケガがきっかけ。動こうにも動けない状態で時間だけはたっぷりあり、あれこれいじっては試し、理論と実践でゼロからの出発でした。
You TubeもInstagramもすべてはカメラの先生
本で読んでもピンとこないカメラの仕組み、その悩みを救ってくれたのはYou tubeをはじめとするさまざまな動画です。プロの方から私と同じような初心者の方まで、実際にカメラを使いながら説明してくれる動画が助けてくれました。
実際に自分で写真を撮るようになると、Instagramやnoteにアップされている写真もじっくり眺めるようになります。構図の取り方、光の調節はまだまだ初心者ですが、自分のペースでじっくり学んでいく予定です。
ライター
cucciola
ヨーロッパの片田舎で家族と3人暮らし。
学生時代に都会の生活で心を病んで以降、スローライフとスローフードで心身の健康を維持。気が向くまま、思いつくまま、風まかせの旅行が多数。
アートと書籍を愛するビブリオフィリアで1人の時間が大好き。