土手などによく咲いている菜の花は食べられるの?と考える人は少なくないと思います。野に咲く菜の花のほとんどはセイヨウアブラナ、またはセイヨウカラシナです。食べられますが、畑のものに比べて苦みや辛みが強く、調理には工夫が必要。食卓を春で彩るなら、食用の青菜がおすすめ!花々にときめく春にイチオシのレシピをご紹介します。
春だけ食べられるアブラナ科の野菜
最近ではあまり身近なところでは見られなくなりましたが、ダイコン・白菜・キャベツなどアブラナ科の野菜は、菜の花に似たかわいい花が咲きます。自家採種をしている農家の畑に行くと見られるかもしれませんね。今回ご紹介するプチヴェールもアブラナ科、芽キャベツとケールをかけ合わせた野菜です。
華やかなだけじゃないプチヴェール
華やかな見た目だけではなく、芽キャベツの甘みやほくほく感と、ケールの苦みやしっかりとした葉の食感が見事な野菜です。
同じアブラナ科でも、ダイコンは根の部分を食べる根菜類、プチヴェールはキャベツや白菜などと同じ葉菜(ようさい)類。キャベツなどは葉が丸くなる結球、プチヴェールやナバナは非結球野菜と呼ばれています。ナバナは葉と同様に花蕾(からい)も食べられています。
カンタン調理のスティックセニョール
スティックセニョールは、ブロッコリーとカイラン(結球しないキャベツのような中国の野菜)をかけ合わせた、花蕾を食べる葉菜です。茎ブロッコリーとも呼ばれています。
花蕾と細い茎は、茹でたり炒めたりするとコリコリとグリーンアスパラのように食べられます。ブロッコリーのように、花蕾を切り分けずに調理できるのでひと手間省けますね。
お花も食べられる春立ちナバナ
ナバナにはいろいろな改良種があります。春立ちナバナはスティックセニョールと同様に、ブロッコリーとカイランをかけ合わせた品種と、三陸つぼみ菜(からしな由来)の交配種です。
大きめで甘みのある葉が特徴で、4月頃になると一部黄色い花が咲いたものも出回ります。ワンポイントカラーがお料理のアクセントになりますよ。
ダイコンなどの野菜で「トウ立ちする」とは、花を咲かせるための茎が伸びること。ダイコンは根の部分をおもに食べるので、養分を花茎にとられ、細く、硬く、スが入るものは価値が下がります。逆に、ナバナなどは茎が伸びると花蕾(からい)がおいしく食べられます。アブラナ科の野菜には改良種が多くあります。それぞれの特徴を知ることで食卓が豊かになりますよ。
トキメキ!春色レシピ
アブラナ科の葉菜には、とくに免疫機能を正常化するといわれるβカロテンが豊富に含まれています。陽の光をたっぷり浴びて濃い緑に育った葉菜は、見るだけでも元気になれるような気がしますね!たくさん食べて春を感じましょう。
違いが楽しい葉菜のバーニャカウダ
まだ寒くなる日もあり、冷たいサラダを食べるのにちょっと躊躇するこの季節。おひたしやバーニャカウダなら、楽しく野菜を食べられますよ。アブラナ科ではありませんが、ほうれん草と同じヒユ科のスイスチャードで彩りをプラス。食べごたえのあるモロッコインゲンを添えました。
材料(2人分)
- 春立ちナバナ 2束
- スイスチャード 4~5枚
- モロッコインゲン 2本
- 塩 (茹で) 小さじ1/2
- 塩 (焼き) ひとつまみ
- コショウ少々
<ソース用>
- アンチョビフィレ 3枚
- にんにく 1片
- オリーブオイル 大さじ2
- マヨネーズ 大さじ2
- わさび 小さじ1/2
- 黒コショウ 少々
- 輪切り唐辛子 ひとつまみ
つくり方
- 鍋に湯を沸かし、春立ちナバナの茎の部分・花蕾・スイスチャードの順に湯通しする
- それぞれ約20秒ほど水にさらして冷まし、キッチンペーパーなどで水を拭き取る
- モロッコインゲンをフライパンで焼き、軽く塩コショウをかける
<ソース(わさびマヨネーズ&アンチョビソース)>
- わさび・マヨネーズ・黒コショウを混ぜる(わさびマヨネーズ)
- にんにくをみじん切りにする
- オリーブオイルをフライパンに入れ、にんにく・唐辛子を弱火であたためる(焦げないよう注意)
- 香りが立ったら中火にして、アンチョビをほぐしながらあたためる
- 火をとめて粗熱がとれたら容器に移す(アンチョビソース)
スイスチャードは彩りがきれいな葉菜ですが、ほうれん草同様シュウ酸があるため、生での使用はおすすめできません。かるく湯通し&水さらしをしましょう。モロッコインゲンは生ではくすんだ色をしていますが、熱を加えると鮮やかな緑が映えます。
餅とスティックセニョールのベーコン巻
ブロッコリーでは少々難しい、スティックセニョールならではのベーコン巻です。餅とあわせておつまみにピッタリですよ。モロッコインゲンは夏のイメージですが、沖縄産は3月から出回ります。いろいろな食感が楽しいワンプレートにしてみました。
材料(2人分)
- ベーコン 6枚
- スティックセニョール 2束
- モロッコインゲン 2本
- 餅 2個・2等分
- マヨネーズ 大さじ2
- 白ごま 大さじ1
- 塩 小さじ1/2(茹で)
- 塩 少々(焼き)
- コショウ 少々
- オリーブオイル 少々
つくり方
- スティックセニョールを約1/2に切る
- スティックセニョールの花蕾側と餅にベーコンを巻く
- モロッコインゲンを2等分に切り、オリーブオイルをひいたフライパンで材料を焼く
- モロッコインゲンに塩コショウをふる
- スティックセニョールの茎側を塩ゆでする
- 白ごまをすり、スティックセニョールの茎とマヨネーズを和える
プチヴェールと豚バラの華やぎ炒め
βカロテンは脂溶性なので、プチヴェールと豚バラ肉はよく合います。炒めても葉の食感はしっかり残り、油でまろやかになった苦みと、噛むうちに出てくる甘みが絶妙です!この料理の主役は葉菜。なるべくシンプルな味付でプチヴェールを楽しんでください。
材料(2人分)
- プチヴェール 5~6個
- 豚バラ肉うす切り 100g
- 紫にんにく 1片
- オリーブオイル 小さじ1
- 塩 小さじ1/2
- 輪切り唐辛子 少々
つくり方
- 紫にんにくの薄皮をむく
- 豚バラ肉を4cm程に切り、フライパンに油を入れずに弱火で焼く
- にんにくと唐辛子を少々のオリーブオイルであたためる(焦がさないよう注意)
- 肉から出る脂が多いようならキッチンペーパーでふき取る
- 豚肉が十分に焼けたら、プチヴェールを縦半分に切りフライパンに入れる
- 中火で2〜3分焼く
紫にんにくは通常のにんにくよりまろやかな味です。油に十分に香りを出したいのですが、焦がすとえぐみが出てしまうので注意して加熱してくださいね。加熱しすぎてしまいそうなら、いったん別容器に移し、最後に加えるといいですよ。
品種改良によって、それぞれの風土にあった野菜が作られてきました。アブラナ科の野菜も、幾多の品種改良によって現在の味や形が育てられてきたものです。筆者の私見ですが、なかでもプチヴェールは非常に秀逸な葉菜であると感じています。各地に生産が拡がり、新たな日本の伝統野菜として育っていくことを期待しています。
ライター
Maita
アウトドア大好きなフリーランスのフードコーディネーター(FCAJ認定/1級)&Webデザイナー。こだわって作った『つくりおき料理』で楽しいキャンプ飯を考案。また、日本各地の固定種・在来種の食材を使った料理を手掛け、地域の食文化の継承を模索している。一人でも家族でも仲間でも楽しめる、そして地球にやさしいレシピを提案していく。