世界では、食料不足や環境負荷につながるとされる食品ロスが問題となっています。そこで注目されているのが、余った商品や食材を再利用する「アップサイクル」。この記事では、アップサイクルの事例とアウトドアや日常で気軽に実践できる方法を紹介します。

アップサイクルとは?

アップサイクル 食品ロス

アップサイクルとは、廃棄物になる予定だったものを新しい製品に生まれ変わらせる取り組みです。たとえば、着なくなった古着をバッグに変身させたり、廃材から高級家具を作り出したりする方法が挙げられます。

リサイクルも「再利用」を意味していますが、両者は異なります。リサイクルは、製品を一旦資源に戻してから新たに製品を作り上げる方法で、アップサイクルは製品そのものに付加価値を見出し、別のものを作り出すというもの。アップサイクルは、廃棄物をなくして環境負荷を低減させる取り組みとして、さまざまな業界から注目されているのです。

食品業界におけるアップサイクルとは

アップサイクル 食品ロス

食品業界においても、アップサイクルの取り組みが行われています。もともと廃棄する予定であった食材や部位を使用して新たな商品が作られていますよ。

食品のアップサイクルは、食品ロス問題に大きく貢献します。農林水産省のデータによると、日本の食品ロス量は472万トン(2022年度)となっており、国民1人当たり毎日お茶碗一杯弱(約100g)を廃棄していることになるのです。

今後、世界的に人口が増え食料不足が危惧されるなか、アップサイクルはさらに注目を浴びていくといわれています。

参照:農林水産省

アップサイクルの事例

国内では、さまざまな企業がアップサイクルに取り組んでいます。

余ったパンで作ったビール(CRUST JAPAN)

アップサイクル 食品ロス
出典:CRUST JAPAN

シンガポールのフードテック企業CRUST Groupの日本法人CRUST JAPAN株式会社は、余ったパンを使ったビール「CRUST LAGER」を販売中。CRUST Groupはアップサイクルを通して、グループ全体で2030年までに世界のフードロスの1%を削減するとしています。

「CRUST LAGER」は、日本国内の大手パン工場から出た廃棄予定のパンと日本アルプスの天然水を使用し、長野県白馬村で醸造されたラガーです。CRUST Group全体で1,200kg(2022年時点)の食品ロスをアップサイクルしていますよ。

コーヒーの豆かすから生まれたチョコレート(PRONTO・オイシックス)

アップサイクル 食品ロス
出典:Oisix

飲食チェーンの株式会社プロントコーポレーションと食品宅配を行うオイシックス・ラ・大地株式会社は、通常廃棄されてしまうコーヒーの豆かすを使ったチョコあられを共同開発しました。商品は、コーヒーを淹れた後に残る豆かすが国産のもち米の生地に練り込まれ、コロコロとした形状の洋風あられとなっています。

また、チョコあられは揚げずに焼き上げた米菓なのでカロリーが低く、さらに練り込まれたコーヒーグラウンズには食物繊維が含まれているため、罪悪感がないお菓子として人気を集めています。

規格外の野菜を使った野菜シート(株式会社アイル)

アップサイクル 食品ロス
出典:VEGHEET

株式会社アイルは、規格外の野菜を活用した野菜シート「ベジート」を開発しました。通常市場に出回らないサイズや形の野菜を使用しており、食品ロスを削減しています。ベジートは野菜と寒天のみを使い、海苔の技術を応用し、栄養素が凝縮して作られているので、野菜嫌いの子どもにもおすすめ。

ベシートは、サラダや巻き寿司、ラップ料理などに利用できます。また、ベジートは長期間の冷凍保存ができ、一度で使い切る必要もないので、食品ロス削減にもつながるのです。製品の販売を通じて地域の農家との連携を強化し、農業の活性化にも貢献しています。

日常生活やアウトドアで使えるアップサイクル術

アップサイクル 食品ロス

ここからは、日常生活やアウトドアにて実践できるアップサイクルの方法を紹介します。

野菜や果物の皮や葉を使って調理する

アウトドアでは、食材の持ち運びも考えて、すべての食材を使い切りたいですよね。キャンプでの調理に野菜の皮や葉を活用すれば、食材を無駄なく使えます。たとえば、大根の葉は炒め物や漬物に、にんじんの皮はスープの出汁にするのが定番。野菜の皮や葉は、独特の食感や風味を楽しめるだけでなく、栄養価も高いので、使うほうが体にもいいのです。

コーヒーのかすを使って虫よけにする

アウトドアフィールドでは虫よけ対策が重要。コーヒーを飲んだ際に出たかすを乾燥させてキャンプ場へ持ち込み、テント周りに撒けば虫よけ効果が期待できます。※ コーヒーかすに含まれるカフェインと窒素の成分が虫を寄せ付けないからです。また、コーヒーかすは調理で使用した鍋やフライパンの洗浄にも使え、環境にやさしい万能なアイテムです。
※キャンプ場に一言許可を取ってから撒いてください

野菜をピクルスにして保存する

キャンプで余った野菜は、その場でピクルスにすると長期保存が可能。密閉容器に酢を入れておけば、キャベツ・にんじん・きゅうりなどさまざまな野菜をおいしい状態で保存できますよ。

また、ピクルスの酢は、食中毒の原因となる細菌の増殖を防いでくれるため、食中毒予防にも効果的だとされています。暑さで食材が傷みやすい夏場や次の日に食材を持ち越して使用するキャンプ時、ピクルスを活用すれば食の安全性が高くなります。

柑橘系の皮でお掃除スプレーをつくる

キャンプ場では環境保全の観点から、環境に配慮したお掃除グッズを使ったほうがいいですよね。みかんやレモンの皮を使えば、天然のお掃除スプレーが出来上がります。

(調理方法)
①鍋で沸騰させたお湯にみかんの皮を入れ、20分煮詰める
②皮を取り除き、お湯が冷めたらボトルに入れ替えて完成

キャンプで使用したテーブルやまな板を除菌するのにぴったり。柑橘系の果物には天然の抗菌成分が含まれているので、化学物質を使わずにきれいに洗えますよ。

アップサイクルは、食品ロス削減に大きく貢献する持続可能な取り組みです。日常生活やアウトドアで実践できる方法も多く、誰もが簡単に取り入れられるのがポイント。野菜の葉や皮を摂取すると多くの栄養がとれたり、天然の掃除スプレーは環境にやさしかったりなど、食品ロス削減以外のメリットもあります。キャンプに行く際は、アップサイクルを実践して環境保護に貢献してみませんか。
 

ライター

エレナ

フリーランスライター。学生時代の海外ボランティアをきっかけにSDGsやエシカルに興味を持つ。主にSDGs、英語学習、留学、旅行について執筆。リフレッシュには自然の中でのんびり過ごすのが好き。