MTB(マウンテンバイク)選びの基礎知識
MTBに限らず、スポーツ自転車には選び方のセオリーがあります。
とくにMTBのエクストリーム系競技では、このセオリーを守らないと満足に走れないどころか危険が伴う場合もあります。
まずはMTBを選ぶ基本的なポイントを考えてみましょう。
ルック車は避ける
MTBを含むスポーツ自転車には、ルック車と呼ばれるものが存在します。
簡単に言えば、見た目はMTBに見えても、オフロード走行には耐えられない自転車のことを指します。
MTBの場合はオフロードを走行し、エクストリーム系競技ではより激しいシチュエーションで走ることになるのです。
性能がそぐわないマシンを使用すると、破損し事故にも繋がります。
アッパーグレード(上位モデル)でなければならないわけではありませんが、最低でもレースグレードモデルを発売しているメーカーのマシンを購入しましょう。
フレームサイズを合わせる
スポーツ自転車では、フレームの大きさによってライダーとの適合性が決まります。
特にエクストリーム系競技ではジャンプや急カーブで体制が崩れやすいので、体に合わないマシンでは制御することができません。
専門店では購入時のフィッティングサービスも行っているので、必ず体にぴったり合った一台を選びましょう。
購入した状態からさらに調整する
エキスパートのライダーは、走り出せる状態で販売されている完成車よりも、フレームやコンポーネントを別々に購入する「バラ完」と呼ばれる買い方が一般的です。
これはフィールドやライダーの体に合わせたセッティングがしやすいからで、調整が重要になるオフロード走行においてはこのほうがメリットが大きくなります。
一般的に価格は完成車のほうが安くなりますが、完成車でもフィールドやライダーに合わせてある程度の改造が必要な場合があります。
パーツは流用しやすい現行規格のモデルを選ぶと、改造が楽に行えますよ。
ダウンヒル用のMTB:高剛性のフルサス車
山肌を下るダウンヒルでは、岩の上を走ったり、崖を飛び降りたりするセクションも珍しくありません。
このため、どのような体勢で着地しても衝撃を吸収できる高剛性のフレームで、前後にサスペンションを備えたフルサス車が好まれます。
剛性を上げることで必然的に車体重量は重くなり、20kg程度になることもあります。
自転車の速さは軽さに直結しますが、ダウンヒルでは坂を駆け下りるので車体重量はスピードにさほど影響しないので心配はいりません。
フルサスのMTBは前後にサスペンションを備えていますが、ダウンヒル用のマシンは衝撃を吸収するために200mm以上と余裕のあるトラベル(サスペンションのストローク量)が一般的です。
最近では、MTB全体で2.7インチ程度の太いセミファットタイヤが主流になりつつあります。
タイヤに太さがあるとグリップ力が増すのはもちろん、空気量が多くなるのでタイヤ自体にもサスペンション効果が得られるメリットがあります。
フリーライド用のMTB:ダウンヒル用をベースに上りにも対応
ダウンヒル用のマシンの特徴はフリーライドに用いられるマシンにも共通していて、ダウンヒル用マシンがフリーライド対応として売られていることもあります。
フリーライドにおいては、ダウンヒルのように下りのみだけでなく上りのセクションも存在するので、上りにも対応できるような設計もされます。
それぞれのモデルによって、重視するのが上りか下りか比重が変わるのです。
下り重視のマシンはほぼダウンヒル用と同じで、上り重視になるとサスペンションのトラベル量がやや減り、バランスが取り易いようフロントフォークが立つ傾向にあります。
4X用のMTB:バランスの取り易いハードテイル
4XはMTBエクストリームの中でもスピーディなので、ペダリングを無駄にしないためフロントのみにサスペンションがあるハードテイルが好まれます。
マシン同士の接触も多いので、中でもフレームの剛性が重要です。
また、4Xではコースを走破するだけでなく、併走するライダーの位置取りなどに合わせて姿勢をよく崩されます。
このためBB(クランクの根元のベアリング)の位置が低く、重心移動しても制御しやすいマシンが多くなっています。
ただし国内のアマチュアレースの場合はマシンにこれといったセオリーがなく、好みのマシンで参加している様子が見てとれます。
ダートジャンプ用のMTB:コンパクトなハードテイル
ダートジャンプでは、ダートコースのジャンプ台を飛び出しエアを決めるため、ジャンプ台をスピーディに上るためにハードテイルが好まれます。
ときには十数メートルジャンプすることもあるので、十分なフレーム剛性も求められるでしょう。
ジオメトリー的には、ダートジャンプでは着地時に体全体をクッションにして沈み込ませるので、サドルが極端に低く上向きになるよう設計されています。
それに合わせて、トップチューブが下がっているのも特徴的です。
リアタイヤもセンター寄りのコンパクトなジオメトリーで、飛び出しでバランスがとりやすく、着地時に姿勢制御しやすくなっています。
日本向け商品では法規制の問題で前後にブレーキがついているものが多いですが、海外ではリアブレーキのみのモデルも存在します。
国内でもクローズドサーキットであれば、リアブレーキのみのマシンの使用が可能です。