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両親の影響でサーフィンと出会い、プロになり、キャリアを積んでいった川合美乃里選手へのインタビュー。vol.2となる今回は、コンペティターとしての揺れ動くメンタルや、今後の目標、自分のサーフィンについての分析などを語ってくれました。
アイキャッチ出典元:川合美乃里選手Instagram
川合美乃里さんのプロフィール
川合美乃里(かわい・みのり)。2000年12月14日生まれ。6歳のときにサーフィンを始める。13歳のときに史上最年少で日本プロサーフィン連盟(JPSA)のプロ資格を取得し、2016年にはグランドチャンピオンに。その後も国内外のコンテストで好成績を残す。これからも活躍が期待される若手女性サーファーの一人。

自分に対する自信と信念

  川合美乃里 サーフィン

―13歳のときにプロになって、2016年に16歳でJPSAグランドチャンピオンを獲得。その頃は、こういったキャリアを想像していましたか?

川合美乃里選手 JPSAでルーキーオブザイヤーを獲得したときに、グランドチャンピオンも獲りたかったんですよ。でも獲れなかった。「ひとつひとつ獲っていけ」ってことなんだと理解してやっていったら、次の年にグラチャンを獲れたんです。

ただ、1コケしたのにグラチャンが確定したっていうダサい獲り方で。そこからも、キャリアを想像することなく、勝手に物事が進んでいったって感じです。

その翌年に、QS3,000(World Qualifying Series)で優勝して、それでQSを回れるようになりました。そこからずっとQSを回ってたけど、勝てなくなってきて、コロナが流行って、今に至るって感じ。

だから、コロナで試合がなくなって、初めていろいろ考えるようになったんですよね。人に求められる目標じゃなくて、自分が目指す目標やサーフィンに対する感情を大事にするようになりました。

―今年に入って試合が通常に戻りつつある中、JPSAでは中塩佳那選手にチャンピオンは譲ったもののランキング2位。インドネシアのQSでもいいライディングがありました。美乃里選手の本領が発揮できるようになってきた印象ですが、自分自身の手応えはどうでしょうか?

川合美乃里選手 ニアスでのQSが2年半振りの海外の試合だったんです。そのあいだ、ずっと日本国内でやってきたので、ニアスで勝てなかったら、国内だけでしかやってなかったことが原因に違いない、とかいろいろ考えたんです。

実際、結果は良くなかったんですよ。でも、私のライディングに高いスコアをくれるってことがわかって。評価はしてもらえているから、自分が与えられた環境の中で頑張っていけば、絶対に無理ってことはないんだなと思ったんです。

同時に「もっと気楽に試合すればよかったんだ」とも感じましたね。だから、次の台湾での試合はすごく楽しみ。

―たとえば2018年のISAワールドサーフィンゲームスで、波に乗らないで負けた場面を見ていたので、美乃里選手のことを側から見ている立場の人でも「もっと自信を持って乗れば勝てるはずなのに」と思っていました。最近はそのあたりが変わってきたように感じます。

川合美乃里選手 最近は先手必勝の戦略を取るようにしています。ちょっと前、勝てていた頃は「自分が一番上手い」っていうマインドだったんです。

でも、負けこむにつれてそんな大口は叩けなくなるじゃないですか(笑)。自分が思っていることを口に出すことができなくなってきていたんですよね。口に出して負けたらなにを言われるかわからないですし。そのあたりから「自分なんて絶対に無理でしょ」「上手くないしなぁ」ってネガティブになっていきました。

でも最近「自分が一番サーフィン上手い」って思った方がいいよ、ってほかの人に言われて。「もったいない」って。それからは、口に出さなくていいけど、自分の中で思ってもいいんだって考えるようになったんです。試合の前でも「自分が一番上手い」って思うようになったら楽になりましたね。

 

いつまでもサーファーでありたい

川合美乃里 サーフィン

―これまでの過程を踏まえたうえで、現在の直近の目標と、最終的なゴールはどんな形に設定していますか?

川合美乃里選手 直近の目標は、JPSAで優勝すること。あと、台湾のQSでいい成績を残すことです。

将来的に自分がこうなれたらいいなと思うのは…、この前の冬に2回スノーボードに連れていってもらってすごく楽しかったんです。だから、冬はスノボー、夏はサーフィンみたいな生活をしたい。

サーフィンもハイパフォーマンスショートボードに限らず、いろんなボードに乗って、夕方まで海に入って、夕日を感じて、「あぁ楽しかった」って思いたいですね。

やっぱりサーフィンは続けていたいんですよね。「そんなのいつでもできるじゃん」って思うかもしれないけど、結婚した人が家庭に入ってほしいって人だったらそれも難しいことかもしれないし。サーフィンとは離れない人生でありたいです。

 

自分自身の強み

川合美乃里 サーフィン

―美乃里選手といえばダイナミックなサーフィンが特徴だと思いますが、自分のストロングポイントとウィークポイントをどう分析していますか?

川合美乃里選手 ストロングポイント…。なんだろう…。

―ウィークポイントからでもいいですよ。

川合美乃里選手 試合運び!

―ウィークポイントの方がスッと出てくるのが美乃里選手らしいです(笑)。

川合美乃里選手 サーフィンの質はそんなに悪くないとは思うんですけど…。

―もちろん!そうじゃなかったら高いスコアは出せないわけですから。美乃里選手の場合、エクセレントスコアを2本揃えて16点以上出すサーフィンができるのが強みで、でも次のヒートで2点と3点であっけなく負けちゃうのが弱みなのかな、と思いますが。

川合美乃里選手 そうなんですよね。

川合選手のお母様 ライン取りじゃない?見ていて、そこに当ててほしいっていうところに必ず当てにいってくれるし。

川合美乃里選手 今年、ウェーブプールで試合があったじゃないですか。あのとき、自分の中では今までにないくらい全然緊張しなかったんですよ。だって、絶対に波が来るわけだから、絶対に波に乗れますよね。私は海の試合だと波に乗れない人間なので(笑)。

ウェーブプールなら全員に同じ波が来るわけで。それでセミファイナルまで勝ち上がることができたので、普段QSやCS(チャレンジャー・シリーズ)を戦っている選手が相手でも、波に乗れればいけるってことを再確認できましたね。サーフィンの質は悪くないんだっていう自信になりました。

―美乃里選手のサーフィンはダイナミックですよね。ニアスみたいなごまかしのきかない波のときでも高い点数が出るということは、美乃里選手のサーフィンが評価されているということに他ならないと思います。

川合選手のお母様 ニアスの場合とくに、波を怖がって逃げて、当てにいくとまったく点数が伸びなかったですからね。

川合美乃里選手 ホレたセクションでのワンターンは、自分のサーフィンで好きなところですね。思いっきり当て込めるし。

―その強みは、千葉に来る前に四国の河口でサーフィンしてきたことと関係していると思いますか?

川合美乃里選手 それよりも、スケボーしていたからっていうのが大きいのかなと思います。私はサーフィンをやっていたから、スケーターのライン取りとは違ったんですよ。

スケーターの場合、横に当てにいっても点数は変わらないけど、私はそこで結構縦に当てにいっていたので。だからサーフィンでもホレたセクションに当てにいく恐怖心はなかったですね。

川合選手のお母様 あと、いい波に乗れないことが多いから、ワンターンしかできないっていうのもありますよね。

 

弱点の克服と自分への理解

川合美乃里 サーフィン

―では、ウィークポイントである試合運びを克服するために取り組んでいることがあれば教えてください。

川合美乃里選手 やっぱり先手必勝ですね。ヒート開始5分以内に波に乗って、止まらないようにする。どう考えても負けたときは波を待ちすぎている場合が割合として多いので。

先手必勝の作戦で、JPSAの大会の新島も大洗も勝てたから、絶対にこの作戦じゃないと私はダメなんだと思いました。もし、早めの時間帯から動いて負けても、仕方ないと思おうと割り切っています。プライオリティが低いときでも動いていく。

あとは「自分が一番上手い」というマインドを持ってます。

―その戦略は自分で考えて始めたことなんですか?それともコーチに言われてですか?

川合美乃里選手 先手必勝の戦略は自分で考えて始めました。自分の試合運びを変えるしかないと思って。

マインドの部分については、よく相談するスポンサーの人がいるんですけど、その人に「もったいない」って言われて。もったいないっていうのはけっこう辛い言葉でしたね。「上手いって思ったほうがいいよ」とも言われました。

―マインド面から離れたところの質問ですが、以前と比べると体つきが変わってきた印象があります。フィジカルトレーニングなど含めて、現在は自分の体をどう理解し、どう付き合っていますか?

川合美乃里選手 今はトレーニングしていないんです。もともと腰痛持ちで、去年の6月まではパーソナルでトレーニングをしていたんですけど、治らなくて。それでトレーニングを一度辞めたら、だんだん痛みが減ってきたんです。ひどいときはテイクオフできないくらい痛かったです。

今は体のケアをしてもらうだけにしています。あとはとにかくサーフィンすることですね。それぞれ合ったやり方があると思うので、自分なりの方法を見つけていかないといけないと思います。

川合選手のお母様 普通の腰痛じゃなくて、根本的に骨に異常があるんですよね。だから、治らない腰痛なんです。

川合美乃里選手 そう。だから手術もできない。どんなコンディショニングが自分に合うのか今も模索中です。

競技を続けていくなかで、さまざまな悩みや壁を乗り越えて今がある川合美乃里選手。彼女の物事の捉え方や性格も垣間見えるインタビューとなりました。さて、次回はこのシリーズの最終回。女性アスリートとしての川合美乃里選手の考え方などに迫っていきます。

ライター

中野 晋

サーフィン専門誌にライター・編集者として20年以上携わり、編集長やディレクターも歴任。現在は株式会社Agent Blueを立ち上げ、ライティング・編集業の他、翻訳業、製造業、アスリートマネージング業など幅広く活動を展開する。サーフィン歴は30年。