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オーシャンバウンドプラスチック(OBP)という言葉をご存知でしょうか。少し耳慣れないかもしれませんが、海洋ごみ問題を考えるうえで重要なキーワードです。海の環境と深い関係をもつ、OBPについてご紹介しましょう。

オーシャンバウンドプラスチックとは?

オーシャンバウンド プラスチック

オーシャンバウンドプラスチック(Ocean Bound Plastic:OBP)とは、海に流出する可能性が高いプラスチックごみのこと。具体的には、海岸から50km以内の陸地に捨てられているプラスチックのごみを指します。

OBPという概念は、米ジョージア大学のジェナ・ジャンベック博士が、2015年に発表した論文をきっかけに広まりました。ジャンベック博士によると、2010年には319億トンのOBPが発生し、そのうち48億トンから127億トンが海洋に流入したといいます。

OBPが海に流出すると、海洋プラスチックとなって生態系に悪影響を及ぼすのが問題です。さらに、海で細かく砕かれたプラスチックは魚などに取り込まれ、それを食べる人間の体に影響する可能性もあります。

今や、海洋プラスチック問題は世界的な懸念事項です。その海洋プラスチックの約70%は、陸地に由来するとも推定されています。海洋ごみ問題の解決のためには、OBPの増加を防止することが重要なのです。

以下の記事でも、海洋プラスチック問題について詳しく説明していますよ。

海洋プラスチックごみ問題!国や企業の取り組みと私たちができること

出典: 
公益財団法人かながわ海岸美化財団「海岸ゴミについて
Science「Plastic waste inputs from land into the ocean

 

オーシャンバウンドプラスチックの活用事例

オーシャンバウンド プラスチック

海洋環境の改善が課題となっている今、オーシャンバウンドプラスチックを活用する取り組みが世界各地の企業で行われています。とくに興味深いものをピックアップしてご紹介しましょう。

グローバルな大手企業も加盟/「NextWave」

NextWave(ネクストウェーブ)は、海洋プラスチックの削減を目的とするコンソーシアム(共同事業体)です。2017年に発足したNextWaveに加盟している企業は、現在までにゼネラルモーターズ、IKEAなどを含む10社以上となりました。

メンバー企業には、OBP製品の開発や、協同してプラスチック削減に取り組むことなどが求められます。NextWaveが理念として掲げるのは、OBPが「商業的価値をもつ世界を創造する」ことです。

2021年には、国連がSDGsへの優れた取り組みを表彰する「THE 2020 SDG Action Awards」を受賞しています。

OBPを活用した腕時計/「SKAGEN」のAAREN OCEAN 

腕時計やジュエリーを展開するデンマーク発のブランド、SKAGEN(スカーゲン)もOBPをアップサイクルした商品を開発しました。アップサイクルとは、捨てられるはずのものにアイディアやデザインで付加価値をもたせ、新しい製品にアップグレードすることです。

SKAGENから登場したのは、「海を変えるためのウォッチ」と呼ばれる腕時計、AAREN OCEAN(アーレン・オーシャン)。ケースとストラップ、ダイアルに100%OBPを使用しています。腕時計ひとつにつき、約1.7本分のペットボトルを使っているとされていますよ。

シンプルなデザインが魅力的なだけでなく、サステナブルなところにも配慮された腕時計です。

SKAGEN(スカーゲン)Aaren Ocean(アーレン・オーシャン) SKW6770
SKAGEN(スカーゲン)Aaren Ocean(アーレン・オーシャン) SKW6770

リサイクルも可能/「岐阜プラスチック工業」のOBPリスパレット

オーシャン バウンド プラスチック

プラスチック製の資材などを製造販売する岐阜プラスチック工業。開発したOBPリスパレットは、素材の一部にタイで回収されたOBPを採用しています。モノの輸送や保管に使用されますが、日清食品が環境戦略の一環として導入したことでも話題になりました。

一般的なパレットと同じPP(ポリプロピレン)でつくられているので、使い終わったあとは新たなパレットに水平リサイクルできることも特徴です。

サステナブルなパソコン/「HP」のChromebook x360 13c

グローバルなテクノロジー企業、HP(エイチピー)。数ある商品のなかでも、環境へ配慮したサステナブルなパソコンとして注目を集めているのが、x360 13cです。

x360 13cは、総重量の約3割に再生素材を使用したChromebook(クロームブック)シリーズのハイエンドモデル。スピーカーハウジングの約5%に、OBPが使用されています。

先ほどご紹介したNextWaveのメンバーでもあるHPは、2019年以降、OBPを使用した製品を160種類以上も開発。2020年には、Newsweek誌の「米国で最も責任のある企業」にも選定されています。

OBPをアップサイクル/「SABIC」の循環型ポリマー

サウジアラビアの石油化学大手のSABIC(サビック)は、2021年にOBPをアップサイクルした循環型ポリマーを発表しました。

フランスの環境NGO団体、Zero Plastic Oceansによって認定されたOBP素材を採用しているのが特徴。認定されているOBPは、適切な方法で処理・加工が行われているという証です。

SABICは今後も、OBP素材の利用を通してサーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に取り組んでいく意向を示しています。サーキュラーエコノミーとは、廃棄されるものを資源として、リサイクルや再利用する新しい経済システムのこと。SABICのOBPを活用した製品開発が注目されています。

6月8日は世界海洋デー

オーシャンバウンド プラスチック

毎年6月8日は、国連で定められた世界海洋デーです。汚染をはじめとした、海の環境問題は無視できないレベルまで深刻化しています。このペースで海洋ごみが増えつづけると、2050年には魚の量をごみが上回るという試算も。

私たちにもっとも身近な海の環境問題として挙げられるのが、今回ご紹介したオーシャンバウンドプラスチックです。ペットボトルなどをポイ捨てしないのはもちろん、プラスチック自体の利用量を削減することも、OBPを減らすことにつながりますよ。

世界海洋デーの目標は、「個人個人の海とのつながりに思いをはせる」ことです。OBPと海の環境問題について考えてみてはいかがでしょうか。

以下の記事でも、日常生活でプラスチックを削減する方法についてご紹介していますよ。

プラスチックフリーな生活は実践できる!日常での取り組み例とは?

今この瞬間も、オーシャンバウンドプラスチックは増えつづけています。陸地に住んでいる私たちも、海の環境と関係していることを象徴するOBP。この先も美しい海を残していくためには、私たちの世代が少しでも汚染のスピードを緩める必要があります。この記事を参考に、OBPと海洋汚染を身近な問題として考えてみませんか。

ライター

Greenfield編集部

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