減圧症の予防には安全停止が必須
ダイビングをしていれば誰もが一度は耳にしたことがある潜水病のひとつが「減圧症」。最悪の場合、命に関わる場合もあるので安全に配慮した潜水プランが不可欠です。
理論上は減圧不要限界(減圧を必要としない制限時間)でダイビングをして、ダイブコンピューターの指示に従って潜っていれば、減圧症になることは無いとされています。
しかし、ダイバーの体調や海のコンディションなどの条件によって、たとえ減圧不要限界内であっても減圧症になってしまう場合もあるのです。
そのためにも毎回ごとの安全停止が非常に重要になってきます。
レクレーションダイビングにおいて安全停止は推奨事項となっていますが、ダイビング終了後は必ず安全停止をしてから水面に浮上するように心がけましょう。
安全停止と減圧停止の違い
安全停止と減圧停止の違いが今ひとつ分からないというダイバーも少なくないようです。
とはいえ、大前提として一般的なダイビング、すなわちレクレーションダイビングでは減圧停止は行わないということを覚えておきましょう。
まず、安全停止とは水面に浮上する前に水深5mで3分間停止して、体内に溶け込んだ窒素を排出させる行為です。つまり、減圧症のリスクを減らすための行為が安全停止です。
一方、減圧停止とは減圧不要限界を超えてしまった時に行う緊急減圧停止のことです。安全停止とはまったく意味合いが異なり、減圧症を発症するリスクが高まったことを意味しています。
減圧停止は、どれだけ減圧不要限界を超えてしまったかによってやり方が変わります。
PADIのRDP(レクレーショナルダイブプラナー)によれば、オーバーした時間が5分以内の場合は5mで8分。5分以上の場合は5mで15分以上もしくは空気残量の続く限りとされています。
また、ダイブコンピューターを装備していれば、画面上がデコストップ(減圧停止)の表示に切り替わるので、指示に従って減圧を行うのが一般的です。
減圧症の症状
減圧症の初期症状で最も多く報告されているのが、関節の痛みや手足の痒みやしびれです。
さらに重症化してくると、脱力感、めまい、耳鳴り、発疹、頭痛、呼吸困難、意識不明といった症状も報告されており、最悪の場合は命に関わることもあります。
減圧症はダイビング終了後1時間以内に発症することが多いとされていますが、ダイビング後の行動によって発症したケースもあることから、72時間以内はこれらの兆候がないか注意深く観察する必要があるでしょう。
もし、減圧症の症状がある場合は、必ず再圧施設のある病院に行くようにしましょう。
減圧症のリスクを減らす安全停止のやり方
安全停止のやり方やコツを見ていきましょう。
まず、インストラクターや水中ガイドから安全停止のサインが出たら、水深5mをキープして3分間の停止を行います。
ただし、水面がうねっていたりすると、きっちり水深5mを維持するのが難しい場合もあるので、実際には水深3~6mの間で3分間の停止をすれば良いとされています。
ホバリングで5mをキープできないダイバーは、無理せずボートやブイのロープに捕まって停止しましょう。
中級者以上のドリフトダイビングなどは、安全停止中にガイドが安全停止フロートを上げて、ボートに位置を知らせるのでガイドの近くに集まって停止しましょう。
また、ビーチエントリーなどのスポットは、水底の地形を利用して安全停止を行うことが多くなります。浮上前に水深5m付近で泳いだりフィッシュウォッチングをするなどして安全停止を行います。
ちなみに、海外では安全停止をする際、両手でアルファベットの「T」になるようなサインを出すことがありますが、国内ではあまり一般的ではありません。
水中ガイドによって安全停止のサインが変わることがあるので、必ずダイビング前のブリーフィングで確認しておくようにしましょう。
ディープストップと安全停止
ディープストップとは、水深20mを超えたダイビングで推奨される、最大水深のおよそ半分の深度で行う安全停止のことです。
このディープストップ機能を搭載したSUUNTOなどのダイブコンピューターが発売されてから注目を集めた安全停止のやり方のひとつです。
たとえば、水深25mに20分間以上潜ったとしたら、水深15mで2分30秒のディープストップをすることが奨励されています。
とはいえ、ディープストップにはさまざまな見解があり、水深20mを超えないダイビングや、逆に水深40mを超えたダイビングをしたときは、ディープストップはやらないほうがよいという意見もあります。
そもそもディープストップは大深度潜水を行うテクニカルダイビングの減圧理論なので、レクレーションダイビングでは5mで3分という一般的な安全停止のやり方を意識したほうが良いでしょう。
水深10m以浅のダイビングでは安全停止は不要?
少し前までは水深10m以浅のダイビングでは減圧症は発症しないため、安全停止も必要ないとされていました。
しかし、最新の研究では、水深6mを超えるダイビングでも減圧症になる可能性があることが分かってきたのです。ただしこれは浮上速度が早すぎることが原因と考えられています。
そのため水深10m以浅のダイビングでも浮上速度に注意して、念のために安全停止を行うことが大切です。
浮上速度や潜り方にも注意しよう
いくら安全停止を実施しても、浮上速度が早すぎたら減圧症のリスクを減らすことはできません。
PADIが定める浮上速度は1分間に18mを超えないスピードとされていますが、目安としては自分の吐いた空気の一番小さな泡を追い越さない速度を守りましょう。
また、深場と浅場をジグザグに潜る「のこぎり型」と呼ばれる潜り方や、一気に深場まで潜り、そのまま滞在して浮上する「箱型」と呼ばれる潜り方も避けるべきでしょう。
理想は最初に深場に行き、徐々に浅場に戻ってくる潜り方です。安全停止はもちろん、浮上速度や潜り方にも注意を払い、減圧症のリスクの少ないダイビングを楽しむようにしましょう。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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