こんにちは、山羊男です。今回は筆者が田舎に移住して少しずつ実践している『自給自足的な生活』についてお話したいと思います。自給自足「的」という、言い切れないユルさについてや、現実的にどうやって手をつけていくのか、お伝えしたいと思います。
自給自足「的」な考えに至ったわけ
自給自足に関する情報は、調べればいろいろ出てきます。徹底的にこだわる方も多く、実践的な情報についての発信もさかんです。
筆者はどちらかというと自給自足「的」でいいとする考え方です。3年前に東京から移住してきた自給自足初心者が、少しずつでも自給自足的な方法を取り入れる過程などをお話したいと思います。
まず、100%の自給自足というのは求めていません。それでも自給自足「的」な生活を求めるのは、やりたいというより、やらざるを得ないと考えるからです。自然現象、そうでない事象、いずれにせよ有事の際、自分たちの力が及ばぬ事態で、日々の生活が危ぶまれるおそれを感じるからです。
かつての震災により、多くの方が日常生活が困難に陥る状況を体感したと思います。災害に加え、新型コロナウイルスによっても日常生活が脅かされることを体感しました。
公的なインフラに頼り、スーパーなどで食材を購入して、誰かが建てた建物で暮らす。目に見えないものを信用して生きることが実は不安定だと気付かされた筆者は、これらの過去の、多くの人と共通する経験から、自給自足的な生活をしていかなければならないんだろう、と思うようになったのです。
移住して実感した自助・共助の精神
実際に『自給自足』を考えると、とても非現実的なことのように思いました。40代前半の筆者は、幼少期から今と同じような社会インフラのなかで当然のように生きていました。生活も、仕事も、遊びも、何もかもが社会インフラの上に成り立っていたのです。
ですから、すべて自給自足、は途方もないことに思えました。せめて有事の際になんとか生きていけるベースを自給自足的に作り、同じような考えを持つ人達とつながる。そうすることで、『自助・共助・公助』の『自助』だけでなく『共助』も含めた考え方を中心にしようと考えています。
この公助に頼らない、自助・共助の考え方は、移住するときから持っていたわけではありません。山梨県北杜市に移住して少しずつ仲間が増えてくると、こちらに住んでいる多くの方が同じように考えていることがわかりました。
程度の差こそあれ、多くの方が自給自足的な生活をして、できていないことに興味関心を持ち、互いに助け合う精神があり、物々交換的な意識が高いことを感じます。筆者は自宅で鶏を飼っています。同年代の友人は狩猟免許を取ろうとしていて、ゆくゆくは互いに卵と肉を交換したらいいね、なんて話しています。
コスパ×?自給自足的生活のメリット
日本は輸入大国です。これだけ自給率が低い国で、円安や外交的要因などで輸入が滞れば困ったことになります。世界情勢を見ていると、そんな事態が起きてもおかしくないことだと思えるのです。おそらく、ただ楽しくて自給自足的生活をしている人を除けば、みな危機意識を持って取り組んでいるのではないでしょうか。
自給自足的生活の必要性について、もうひとつの側面は、節約です。うまくやれば節約につながります。よく『コスパ』といいますが、おそらくコスパはよくはないのです。節約できるぶん、多大なる手間をかけるのですから。
最後に、『安心・安全』があります。おもに食について、自分たちが口にするものが本当に安全なものなのか、心配になることもあるかと思います。
添加物・農薬・土壌汚染など、気にすればキリがないほどで、賛否さまざまな意見があります。自分が手をかけて育てることで、口に入るまでの過程を把握できる安心感につながります。自給自足的な生活をする理由のひとつになるのではないでしょうか。
インフラに絶対はない?
日々生活するうえで必要なものは、衣・食・住とはよくいいます。なかでも『住』のエネルギーについてお話したいと思います。
公共インフラが止まり、困った経験はみなさんあるのではないでしょうか。筆者は、東日本大震災のとき東京に住んでいて、計画停電がありました。当時、妻が妊娠していたので、いつ終わるかもわからない計画停電に夫婦で怯えていました。そのときが初めてです。公共インフラに絶対はないんだって思ったのは。
筆者の現在住む北杜市白州町は山間部で、たまに停電があります。強風や大雨などで倒れた木が停電を引き起こすことがあるのです。代替手段がないと、それだけのことで日常生活が立ち行かなくなります。
キャンプって最高の自給自足
移住する前、趣味でファミリーキャンプをよくしていたとき、アナログな方法で一時的な生活環境を作るキャンプは、なによりの防災対策だと思っていました。焚き火で火をエネルギーに湯を沸かし、調理します。ソーラーパネルとモバイルバッテリーで電気を自給して、テントを建てて寝床を用意する。自給自足ですよね。
キャンプ道具を購入するときには、防災道具としても価値がある、という視点で、お金を使ういいわけにしていた記憶があります。キャンプが趣味になると、ついキャンプギアを次々と買って買い替えて、としてしまうものですが、防災道具と考えると少しは罪悪感が軽くなるものです。
今の生活では、趣味のキャンプで買ったものが生活に大いに役立っています。エネルギーにおいて、自給自足的な視点はキャンプの延長上にあるとすら感じるのです。
オール電化=自給への近道?
我が家のエネルギーは、オール電化です。エアコンもない小さな家ですので、電気使用量はそこまで多くはありません。なぜオール電化にしたのかというと、電気ならソーラーパネルなどの発電で自給ができるから、という単純な発想によるもの。ガスも自給できなくはないですが、より大掛かりです。
給湯はエコキュートで、電線からの電力と、大気熱のエネルギーとを使用するので、ある意味一部は自給しているわけです。もちろん電力は必要で、多く使うものとしては、IHコンロ・冷蔵庫・洗濯機などがあります。
少しずつ自給、少しずつ脱電気
少しずつ脱電気と電力の自給をしていきたいと考えています。電気で動くもののうち、可能なものはアナログ方式に置き換えられるようにする。ソーラーパネルからの電力自給で最低限の生活はできるようにする。これらを重要視しています。
冷蔵庫は代替手段がないので、電力の自給でまかなえるようにする必要があります。現状は、Echo Flow社のDelta Proという大容量バッテリーと、ソーラーパネル2枚が我が家の電力の自給状況です。この組み合わせで、晴れた日が続けば冷蔵庫の電力は賄えますが、雨が2日以上続くと外部電力に頼らざるを得ません。
バッテリーもソーラーパネルも、少しずつ買い足していきます。
IHコンロは、キャンプで使っている2バーナーのコンロが替わりになります。燃料のガスがなくなったら、焚き火でもいいと思っています。
洗濯機は、極論をいえば手洗いで代替できます。ただ、重労働なので、ソーラー発電の賄える範囲を広げたら、冷蔵庫の次に洗濯機の電力を自給できるようにしておきたいところです。エアコンが必要ないのは強みでしょうか。真夏でも、エアコンがないと生活できないほどの暑さではありません。
薪は重要なエネルギー!
薪を使ったエネルギーは、有事の際の代替手段として有用です。我が家は、冬は薪ストーブで暖を取っています。暖を取り、灯りになり、調理ができ、給湯ができる。とても重要なエネルギーです。
今、我が家にはシャワーしかなく、これからデッキに露天風呂を作ろうとしています。給湯は、エコキュートによる電気および大気熱エネルギーと、薪および灯油によるボイラー追い焚きを組み合わせようと考えています。もし外部電力がなくなりエコキュートが使えない場合、ボイラーのみでお風呂を沸かすのも可能です。
我が家のこれからのエネルギー計画
現在は、ソーラーパネルからモバイルバッテリーに給電し、そこにコンセントをつないで冷蔵庫を使っています。雨が続けば、家のコンセントに差し替える、というとてもアナログな方法です。
今後、家の分電盤とモバイルバッテリーを直接つなぎ、スイッチの切り替えで電力を切り替えられるようにしたいと考えています。冷蔵庫だけでなく照明や電化製品も、まずはソーラーパネルからの電力を使い、足りなくなれば外部電力を使えるようにするのです。
バッテリーの容量に応じて自動で切り替えられる装置もあるようですが、高額なのでまずはアナログのスイッチでもよいかな、と思っています。
そして、風呂の給湯に考えているのは、太陽熱温水器です。エコキュートとの連携や、冬の太陽熱不足を考えてボイラーとの併用も考えていきたいと思っています。
ソーラーパネルによる発電などは、よく「投資した費用がどのくらいで回収できるか」というようなコストパフォーマンスで語られがちですが、違う視点も大事だと思っています。もしものときに暮らしていくチカラがどれほどあるか?できることから少しずつ、日々の生活に『自給自足的』なことを取り入れてみてはいかがでしょう。それが生きるチカラにつながるのだと、筆者は思っています。
ライター
山羊男(ヤギオトコ)
東京でネット業界のディレクターを15年ほど勤めた後、コロナ禍の2020年に39歳で山梨県北杜市へ移住。妻と当時小学4年生の息子と家族3人で、会員制キャンプ場を手作りしながら田舎暮らしをはじめる。完全に素人からのスタートで、小屋作りや家作りなどDIYしながら、自給自足的かつ健康的な生活を目指して、日々実践中。現在は会員制キャンプ場のほかに、オートサイトキャンプ場管理人、オーガニック食品などを扱う小売事業、ネット関連事業を展開。