ダイビング後に頭痛が起こる原因:ハイパーカプニア
頭痛にもさまざまなタイプがありますが、ダイビング中あるいはダイビング後にズキンズキンと脈を打つ偏頭痛のような痛みの頭痛が続くのは「ハイパーカプニア」が原因かもしれません。
ハイパーカプニアとは二酸化炭素過剰のことです。ハイパーカプニアが原因の頭痛を「二酸化炭素蓄積性頭痛」と呼ぶこともあります。
ハイパーカプニアの主な原因は、ダイバーがゆっくりと十分に深い呼吸をすることを忘れてしまったことです。
早くて浅い呼吸を続けているとひと呼吸での換気量が少なくなり、肺胞内での新鮮な空気に比べて、死腔内の空気の割合が多くなってしまいます。死腔とはガス交換に関与しない気道中の空間のことです。
この肺胞内での空気や血液の中で二酸化炭素のレベルが増加すると、頭痛や意識の混乱といった症状を引き起こし、さらに早く浅い呼吸を加速させてしまいます。
これはダイバーが深い呼吸を再開するまで続き、こうした二酸化炭素レベルの増加に気づかないでいると、最悪の場合、意識喪失にまで至ることもあります。
頭痛と一緒に吐き気が起こるのは?
深い呼吸を忘れて早く浅い呼吸を長く続けていると、ダイバーはうっかり空気を飲み込んでしまうことがあります。さらに呼吸が浅いため胃の中に入ってしまった空気も排出されづらくなります。
そして、その状態のまま浮上すると圧力と体積の関係によって、胃の中の空気はどんどん膨張していき吐き気に繋がります。これが頭痛と一緒に吐き気が起こる主な原因です。
ハイパーカプニア以外の頭痛
ダイビングで発症する頭痛のほとんどはハイパーカプニアが原因ですが、ほかの条件が頭痛を引き起こす場合もあります。
たとえば、マスクストラップやフードの締め付け、ドライスーツ着用時のネックバンドの圧迫なども、ダイビング中に頭痛を引き起こすきっかけになることがあります。
また、重たいダイビング器材を背負ったことで、首から肩にかけての筋肉の緊張が大きくなり頭痛を引き起こすケースもあります。
さらに、ダイビング後に頭痛が続く場合は減圧症の可能性もあります。
減圧症の初期症状には、手足のしびれや虚脱感なども含まれますので、複数の症状があるときはすぐに酸素吸入を行い緊急先の病院へ向かうことが重要です。
また、日常的に頭痛の症状がある人は、ダイビングがきっかけで頭痛が発症する場合もあるので、必ず担当医師と相談のうえ指示に従うようにしましょう。
ダイビングで発生する頭痛の治し方
ダイビング中の頭痛の原因がハイパーカプニアであれば「ゆっくりと十分に深い呼吸」をすることで頭痛を治すことができます。
ゆっくりと十分に深い呼吸をするときのポイントは、空気を十分に吸うのではなく、肺の中の空気をすべて出すようにゆっくりと息を吐いて、肺胞内の二酸化炭素のレベルを下げることです。
我慢するまで息を吐く必要はありませんので、苦しくならない程度まで息を吐くことを意識するのがよいでしょう。
また、ダイビング後に頭痛が続くときは、そのまま安静にしていれば、ほとんどの場合30分程度で頭痛は改善していきます。このときスポーツ用の酸素缶を吸引すれば、二酸化炭素排出の助けになります。
ダイビング中の呼吸の仕方についてもっと詳しく知りたい人は以下の記事も参考にしてください。
ダイビング中に呼吸が苦しい!?正しい呼吸方法のコツと練習方法
水中での動き過ぎに注意
水中で長い距離を泳いだり流れに逆らって泳いだり、ダイバーが水中で必要以上の運動をすると、筋肉で二酸化炭素が生成される速さが呼吸器を通じて排出される速さを上回ってしまう場合があります。
さらに、二酸化炭素レベルの上昇は呼吸を早めるよう反射中枢を刺激し、早く浅い呼吸を促します。この悪循環はダイバーが動くのを止めるまで続き、頭痛などの症状として現れます。
早く浅い呼吸にならないために「水中では動きすぎないこと」も、ダイビング中の頭痛の予防につながります。
スキップ呼吸は二酸化炭素を増加させる
スキップ呼吸と呼ばれる不適切な呼吸はハイパーカプニアの原因となります。
スキップ呼吸とは、ダイビング中に息ごらえをすることによってエアー消費を長持ちさせようとする行為です。
水泳で息ごらえを続けるとハイパーカプニアを起こすことはよく知られていますが、これはダイバーであっても同じことです。
スキップ呼吸は呼吸器系での二酸化炭素の増大をまねき、速い呼吸への刺激を生じさせますし、肺の障害を引き起こす可能性もあるので絶対に避けましょう。