ダイビングと筋肉痛の関係
ダイビングをした翌日あるいは翌々日に腹筋や背中、口や顎の周りが筋肉痛になったという声を聞くことがあります。
一般的に筋肉痛になるのは、普段あまり使わない筋肉を使ったり、激しい運動を行なったりした時だとされています。
とはいえ、ダイビングは決して激しい運動ではありませんし、使う筋肉といえばフィンワークで脚を動かすために下半身の筋肉を使う程度。それなのになぜ、腹筋や背中までが筋肉痛になってしまうのでしょうか。
ダイビングで筋肉痛になる原因
ダイビングで腹筋や背中が筋肉痛になってしまうのは、フル装備で20kg近いダイビング器材をお腹周りの筋肉で支えていることが一番の原因と言えるでしょう。
とはいえ、水中に入ってしまえば中性浮力によってダイビング器材の重量は相殺されるので、重さはあまり感じないはず。しかも、ボートダイビングなら重たいダイビング器材を背負って歩くこともないので、体にかかる負担も少なくなります。
それでも腹筋や背中が筋肉痛になってしまうのです。
つまり、ダイビングで筋肉痛になってしまうのは単にダイビング器材の重さが原因だけではなく、ダイビング器材のセッティングや水中姿勢に大きな原因があるのかもしれません。
ダイビングでの筋肉痛を予防する方法
ダイビングで筋肉痛にならないために以下のポイントを見直してみましょう。
器材セッティングでの注意点
タンクにBCDを取り付けるとき、正しい取り付け位置になっているかを確認しましょう。一般的にはタンクのバルブの付け根とBCDのバックパックの上部が水平になっている位置に取り付けます。
ところがタンクの取り付け位置が高すぎると、水中で脚が下がった姿勢になり、腰への負担が大きくなってしまい、体幹の筋肉に負荷が掛かります。
また、ドライスーツなど多くのウエイトが必要な場合は、ベルトにウエイトを集中させるのではなく、BCDのポケットなどにウエイトを分散したり、ウエイトベストを着用したりすることで腰への負担を軽減させるようにしましょう。
器材装着での注意点
スクーバユニットを装着する際は、BCDのバックルやショルダーベルトをしっかり締めて、タンクが背中の中心線にくるように背負うことが大切です。
タンクがグラグラしてしまうとバランスが崩れ、それを補うために腹筋や背筋への負担が大きくなってしまいます。
水中姿勢を意識すること
水中ではホリゾンタルトリム(水平姿勢)を意識して泳ぐことがポイントです。脚が下がったり、逆に脚が浮き過ぎたりすると、正しいフィンワークができず体幹への負担が大きくなってしまいます。
ホリゾンタルトリムは、保温スーツやタンク、フィンの特性によっても影響されるので、最適なダイビング器材を使うことも、筋肉痛の予防に繋がります。
自分に合った器材を使うこと
ダイビング後に口や顎が筋肉痛になってしまうのは、レギュレーターのマウスピースを強く噛み過ぎていることが原因と考えられます。
マウスピースのサイズや形状が口に合っていないと無駄な力が入ってしまうので、自分の口のサイズや歯形に合わせたマウスピースを使うことをおすすめします。
また、緊張で強くマウスピースを噛んでいるときは、頬をマッサージするなどリラックスしてから、マウスピースを噛む強さを調整するようにしましょう。
ダイビングと運動不足・筋力不足
ここまでダイビングで筋肉痛になる原因やその対策について考えてきましたが、ほかにも運動不足や筋力不足といった身体的な原因が筋肉痛を引き起こす場合もあります。
適度な運動習慣を取り入れることはダイビングにおける筋肉痛の予防に繋がります。
そこで、ダイビング後の背中や腹筋の筋肉痛、あるいは腰痛を予防するおすすめの体幹トレーニング方法をご紹介したいと思います。
ダイビングでの筋肉痛や腰痛を予防するトレーニング
筋肉痛や腰痛の予防には、お腹周りの筋肉を鍛える体幹トレーニングが最適です。姿勢の矯正にも有効なので肩こりや猫背といった症状にも効果的です。
一畳程度のスペースがあれば自宅でも簡単にできる体幹トレーニングを2種目ご紹介します。
ドローイン
ドローインは、お腹を凹ませるように息を吐くことで腹横筋を鍛える体幹トレーニングです。
- 仰向けに寝て、膝を直角にリラックスした状態をつくり、お腹を凹ませるように息を細く長く吐いていきます。
- 背中を床に押し付けるように息をすべて吐き切ります。
- 腹横筋に効いている感覚が掴めたら、同じ動作を5~6回繰り返します。
腹横筋に効いている感覚は分かりづらいので、何度か試して感覚を掴むようにしましょう。
プランク
プランクは、ドローインとは反対にお腹を膨らませること(ブレーシング)で腹直筋を鍛える体幹トレーニングです。
- うつ伏せの姿勢で肘と膝を床につきます。肘は肩幅、脚は骨盤幅に開きます。
- お腹を膨らませるように息を吸い、お腹に力が入ったら膝を上げて、つま先と肘で体を一直線に支えます。
- 体が一直線の状態を保ちつつ、そのままの姿勢をキープします。
- 最初は無理なく続けられる範囲で行い、1分間キープを目標にします。
お尻の位置が上がりすぎていたり落ちすぎたりしないように注意しましょう。
ダイビング後のマッサージに注意
ダイビング後のマッサージが筋肉痛を引き起こすケースもあります。ただし、これは一般的なマッサージではなく、アスリートがよく行うディープティッシュマッサージと呼ばれる深部組織へのマッサージです。
ダイビングの疲れを癒すためにディープティッシュマッサージを受けると、患部に筋肉痛が残る場合があり、血流量が増加することで減圧症につながる気泡が形成される可能性があります。
ダイビング直後にマッサージを行うときは強度に十分に注意しましょう。