ロードバイクのルック車とはどんな自転車?
一般的に、ロードバイクには、10万円前後のものから100万円以上する高価なものまで、さまざまな車種があります。でも、調べてみると数万円で購入できるコスパのいいロードバイクも見つかりますよね。
でもそれらのロードバイクには要注意。じつは、定価とかけ離れている値段のロードバイクは「ルック車」と呼ばれる自転車の可能性があります。
自転車メーカー以外が販売する自転車
ルック車とは、明確にそういったジャンルの自転車があるわけではなく、あだ名のようなものです。基本的な定義は「本格的なロードバイクを手がけていないメーカーが販売しているスポーツ自転車」のことを指します。
つまり、見た目はスポーツサイクルですが、性能が劣る可能性が高く、本来のロードバイクの使い方には適さないことがあるのです。クロスバイクではあまり問題になりませんが、マウンテンバイクでは、マウンテンバイクに見えるのに山道が走れないルック車もあるので注意が必要です。
一般的なロードバイクより低価格
ルック車は、そのほとんどがロードバイクメーカーの販売するロードバイクよりも低価格で販売されています。ロードバイクメーカーでは最低価格でも8万円程度はしますが、ルック車には2万円台のものもあるほどリーズナブルです。
もちろん構造や設計、素材など劣ることが多いですが、安いのは何よりの魅力ですよね。
ロードバイクのルック車の注意点・デメリットとは
ルック車は、ロードバイク上級者からよく「買うべきではない自転車」として扱われています。実際筆者も、ロードバイクデビュー前に多くの先輩サイクリストから忠告されました。
安くて見た目もいいのに、その理由は何なのでしょうか?
- 性能が劣ることが多い
- カスタムの自由度が低い場合も
- 耐久性に劣ることも
- スピードが出せない
- 制動力が弱い
- 錆びやすい
性能が劣ることが多い
ルック車の語源は、「見た目だけのスポーツ自転車」からきているといわれています。ロードバイクはもともと性能をあげるために今の形になり、性能アップを目的に日々研究されています。
ロードバイクメーカーが作っていないルック車はその目的がなく、見た目をロードバイクに似せているだけで完成度が低いものもあるのが事実。つまり、ロードバイクとしての性能がなく、ロードバイクメーカーが発売する安いモデルにも劣るともいわれています。
具体的には、ブレーキ性能や変速性能、自転車の重量など、さまざまなところに違いが見られます。
カスタムの自由度が低い場合も
ルック車は低価格が魅力なので、パーツには独自規格で安いものが使われていることがあります。それゆえ、カスタムするときには、パーツが見つからないことも想定しなければいけないのです。
改造することで性能アップさせるのもロードバイクの魅力なので、これは少し注意しなければいけないポイントですよね。
耐久性に劣ることも
よく「ルック車は危険」といわれますが、修理に携わった筆者の経験では、ルック車が重大な故障を起こした事例はとくに多くはありません。ただし、やはり安さにこだわっているため、つくりが雑だったり、組み立ての不備があるものは少なくありません。
お店で購入する場合は、売り渡す前に最終点検をするので未然に防ぐこともできますが、通販で購入するときには注意が必要ですね。
これらのデメリットが少ないルック車もありますが、メーカー製ロードバイクのエントリーモデルとそう変わらない価格になるので、よく比べてみることが大切です。
スピードが出せない
ルック車は、車体重量が重いものが多く、スピードが出せないというデメリットがあります。
ロードバイクでは、エントリーグレードでも車体重量は10kg以下と非常に軽量です。対してルック車は、11kg以上の車体重量のものが多く、これが漕ぎ出しの重さや加速時のパフォーマンスに直接的な影響を与えます。
平坦な道では車体重量が速度に対してそれほど影響しないかもしれませんが、坂道を上る際には、軽量なバイクほど乗り心地はよくなります。
制動力が弱い
ルック車は、見た目がロードバイク風でありながらもコストダウンを図るため、安価なブレーキキャリパーを採用しているケースが多く見受けられます。
平坦な道での使用では、これらのブレーキでも制動力に大きな問題は感じられないかもしれません。しかし、速度が出ている下り坂でのブレーキング時には、制動力が弱いと感じることが多いでしょう。
ブレーキをかけても期待したように速度が落ちず、十分に減速することができないことがあります。これは、コーナーを曲がり切れずに転落するリスクを高めたり、歩行者に気付いても止まり切れずに衝突したりするおそれがあり、事故につながる危険性を高めます。
そのため、高速で走行する際は、メインブレーキのレバーをしっかりと握り、適切な制動力を確保するようにしましょう。
錆びやすい
ルック車は、チェーンや変速機構などが露出しているもことが多く、雨に濡れると錆びて自転車全体の劣化を早める原因となります。
雨天や湿度の高い環境での使用後は、とくに注意が必要です。雨に濡れたあとは、できるだけ早く自転車を乾燥させましょう。そして、チェーンや変速機構などの重要な部品に対して定期的な清掃と潤滑を行い、錆の発生を抑えましょう。
メンテナンスを丁寧に行うことで、ルック車も長期間にわたって快適に使用できます。より専門的な技術が必要な場合は、自転車専門店でのサポートを受けることをおすすめしますが、錆の防止などの簡単なメンテナンスは自宅で気軽にできます。
素材が重い
ルック車では、フレームをはじめ、ホイールやコンポーネントなどの部分に安価なスチールが使用されています。スチールはロードバイクに使用されているアルミやカーボンに比べて一般的に重いため、自転車の総重量も重くなります。
たとえロードバイクのスタイリッシュな外見だとしても、重くて山道を走行するには不向きであるということもあるかもしれません。
整備や修理がしにくいことも
ショップ側にとって、正規で販売されていない自転車の修理を引き受けることはさまざまなリスクが伴います。修理した自転車で事故が発生した場合、その原因が自転車自体の問題なのか、修理によるものなのかの判別が難しいからです。
加えて、ルック車の整備や修理では、部品が正規のものではないため、本体の価格以上の高額な費用がかかるケースもあるというデメリットもあります。
ロードバイクのルック車のメリット
ルック車には、注意すべき点はありますが、絶対に買ってはいけない、というほどのデメリットはありません。むしろ低価格というメリットを重視したいなら、活用法も十分にあります。
ルック車を購入しようと思っている方は、これから紹介するような活用法が自分にあっているか考えてみましょう。
安くてかっこいい自転車に乗りたい
ルック車は、なんといっても安く、ビジュアルも一般的なロードバイクに遜色ありません。これは、ルック車がデザインをロードバイクに近づけつつ、製造コストを抑えるために工夫が施されているためです。
スポーツバイクの世界では、とくに高価なものは数十万円するのも珍しくはありませんが、ルック車は2~3万円台で購入できることもあります。
ロングライドやブルべといった過酷な使い方をしないなら、ルック車でも十分その目的は果たせるでしょう。筆者は、オリジナル塗装したいという理由でルック車を購入したお客様の対応をしたこともあります。
短距離のサイクリングがしたい
ルック車はメーカー品のロードバイクに比べると性能が劣ることが多いですが、それでもママチャリなどに比べればスピードは出しやすい自転車です。
ただし、長距離のサイクリングとなるとメーカー品のロードバイクにはかなわないので、短距離のサイクリングを中心に使うならルック車で十分楽しめるでしょう。通勤通学といった用途でも、距離が長かったり坂道が多かったりしなければ、ルック車でも十分その性能を発揮できそうですね。
デザインがいい
じつは安い以外にも、ルック車にはもうひとつ「デザインがいい」というメリットがあります。
通常、ロードバイクはパーツや設計にお金をかけ、デザインで価格を抑えますが、ルック車ではパーツや設計を簡略化した分、デザインに予算をかけられます。カラーリングなどはメーカー品に勝る場合もあるので、短距離のサイクリングや実用用途なら、デザイン重視でルック車を選ぶのもいい選択ではないでしょうか。
盗難のリスクが少ない
ルック車を選ぶ際の魅力的なメリットに、盗難リスクの低さが挙げられます。どれだけしっかりと鍵をかけていても、高価なバイクは盗難のターゲットになりやすく、買い物やちょっとした外出の際にも、駐車して離れることへの躊躇を感じることが少なくありません。
ルック車は見た目はロードバイクと似ていても、価格帯が低めのため、盗難の対象となりにくいのです。
改造して楽しめる
ルック車は、DIYでのカスタムが趣味という方におすすめです。ルック車が比較的低価格で手に入れることができる理由のひとつに、搭載されているコンポーネントのグレードが低いという点が挙げられます。
多くのルック車では、shimanoのエントリーレベルのコンポーネントが使用されており、これは高い性能を求めるライダーには物足りないと感じるでしょう。しかし、このコンポーネントをDIYでカスタムして高い性能に上げることで、ルック車でも本格的バイクと変わらない性能を発揮できるかもしれません。
自分で性能の高いバイクを作りあげるという別の楽しみが得られるのは、ルック車ならではのメリットといえるでしょう。
ルック車のメーカー
ルック車は、正式に自転車の車種を指すものではないので、ルック車専門のメーカーというものは存在しません。しかし、Amazonで「ルック車 ロードバイク」と検索すると、値段が2~3万円ほどのおもに中国や日本の商品とみられるルック車が数多く見られます。
これといったブランドやメーカーは決まっていないため、通販サイトであれば、レビューやコメントをよくチェックしてから購入するようにしましょう。
ロードバイクのルック車の活用方法
初心者が練習用に使う
ロードバイクを始めたいけれど、最初から高価なバイクを買うのはハードルが高いと感じる人も多いことでしょう。性能面ではロードバイクに劣るとしても、基本的な乗り方、ペダリングの技術、体力の向上など、基礎からトレーニングを積むことができるルック車を使用するのはひとつの選択肢です。
ルック車を利用することで、低コストでサイクリングの楽しさを発見し、自転車に関する知識や経験を積むことができます。初心者の練習用におすすめです。
特別な時以外に使う
ルック車は、一般的なロードバイクよりも走行性能は劣りますが、ママチャリよりは軽量で、走りやすいものがほとんどです。買い物や友人との集まり、通勤通学、近場のカフェまでの小旅行など、日常生活での短距離移動には適しているでしょう。
ロードバイクのような高速性能や長距離の快適性を必要としない場面で、気軽に乗れるルック車を検討するのもいいかもしれません。
ルック車はどこで購入できる?
通販サイト
ルック車は、Amazonなどの通販サイトで購入できます。ただし、通販サイトで購入は、実際に自転車を試乗できません。サイズやフィーリングなどについては、口コミ・レビューを参照するなど、よくリサーチをしましょう。
ホームセンターや量販店
多くのホームセンターや量販店では、日用品や工具だけでなく、かなりリーズナブルな価格の自転車も販売しています。ルック車を含むさまざまなタイプの自転車が展示され、見たり触ったりできます。自分にあうサイズやデザインを選びましょう。
ルック車に関するQ&A
ルック車を見分ける方法はなんですか?
ルック車は重いものが多いので、片手で持ち上げて重量を確認しましょう。また、MTBなのに「悪路走行禁止」「段差禁止」というマークがついているものは、ほぼルック車で間違いないといえます。
ルック車を長持ちさせるにはどうすべきですか?
ルック車は錆びがつきやすいため、フレーム・チェーン・変速機・ブレーキ部分の清掃と乾燥を怠らないようにしましょう。また、チェーンやギアの潤滑を定期的に行うことで、摩耗を減らし、スムーズな変速が可能になります。しっかり日々の点検を行うことで、ルック車を長持ちさせることができます。
MTBのルック車のデメリットを教えてください
MTBのルック車にはいくつかのデメリットがあります。まず、サイズ展開が限られているため、体格にあわなと乗り心地が悪くなるでしょう。また、コスト削減のためにママチャリのパーツを流用していることがあり、カスタマイズの際に高グレードな競技用パーツの取り付けが困難というデメリットもあります。
ルック車は街乗りなら快適?
ルック車は、街中での短距離移動や日常で使う分には快適に使用できます。しかし、高性能のロードバイクよりは性能や重量で劣るため、長距離や、傾斜や段差の多い道は避けたほうが無難でしょう。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。