バスク地方の登りが主役のステージ
バスク地方が今年のブエルタ・エスパーニャの舞台となった第12ステージ。
この日サイクリストたちがたどり着くゴール地点は、ビルバオ市内の目抜き通りであるグラン・ビアです。
道幅が広く、長い直線のこの道路が完全に封鎖され、サイクリストたちと自転車ファンが埋め尽くします。
第12ステージのスタート地点は、自動車やバイクのレースで有名なナバラ・サーキット。
このスタート地点から選手たちは北上し、ビルバオまでの171㎞を走ります。
この日は4つの山岳を超えるコース。
とは言え、そのすべてが3級山岳のため、バスクでのステージの割には登りが少ないコースになりました。
しかし、実は3級山岳でもあなどることができないのが、バスクの登りなのです。
バスクでのレースの特徴のひとつに、距離が短めで斜度がある登りがコースに数多く出てくることが挙げられます。
そのうえゴール地点のビルバオが近づくと、道幅の狭い登りが選手たちの前に現れるのです。
こうしたコースの場合、有力選手が集中し大人数で構成されるメイン集団よりも、少人数の選手で構成された先頭の逃げ集団の方に、こうしたコースが有利に働くことがあります。
この12ステージもその例外ではありませんでした。
ベテランの経験が発揮されたステージ優勝
ビルバオの市内に入る直前の道幅の狭い登りで、先頭の逃げ集団にいたフィリップ・ジルベール選手(デセウニック・クイック・ステップ)が飛び出します。
この動きに反応し後を追ったのは、スペイン人若手サイクリストのアレックス・アランブル選手(カハ・ルラル・セグロス・RGA)とフェルナンド・バルセロ選手(エウスカディ・バスク・カントリー・ムーリアス)の2人だけ。
ジルベール選手と若手スペイン人サイクリストたちの差は約10秒。
当初は、後ろのスペイン人2人が、ジルベール選手に追いつくのは難しくないように見えました。
しかし、経験豊富なベテランのジルベール選手は、ゴールまでこの10秒のタイム差を維持し、結局この日のステージ優勝を飾ることとなりました。
レース後の記者会見では、
「僕と同世代のアレハンドロ・バルベルデ選手が、現役の世界チャンピオンだからね。僕もしばらくはこのレベルでレースができると思うよ。」
と話していたジルベール選手。
一方、彼に追いつくことができなかった2人のスペイン人サイクリストは、それぞれに表情に悔しさをにじませていました。
まず、アランブル選手は、
「また2着だよ。くやしいなぁ」
というもの。
と言うのも同選手は、ブエルタ・エスパ―ニャの前哨戦となったブエルタ・ブルゴスでも2着となるなど、ここ数か月2着となるレースが続いていたのです。
一方、バルセロ選手も悔しそうな表情を見せました。
とくに前日の第11ステージを優勝したのはバルセロ選手のチームメートもミケル・ビズカラ選手だったため、
「2日間連続でステージ優勝したかったけど、やっぱり難しいよね。」
と話していました。
サンマメ・スタジアムからスタートした第13ステージ
翌日第13ステージはビルバオからスタートする166㎞のコース。
スタート地点は、アスレチック・ビルバオの本拠地のサンマメ・スタジアムです。
このスタジアムが建設されたのは2013年のこと。
すでに6年近く経っていますが、まだまだ新しく、ピカピカのスタジアムです。
このスタジアムの駐車場に出走前サイン台が設置されました。
広いはずの駐車場に、たくさんのバスクの自転車ファンが詰めかけます。
司会者の「昨日のステージで、最後の3級山岳を頂上までウィリーで登った選手がいます。」という言葉に、観客は大拍手。
そんなバスクの観客に囲まれた選手たちは、いつもより愛想よく、観客からのサインや2ショットのお願いに応えます。
この日距離は短めなものの、3級山岳が6つのあとに頂上ゴールという、北スペインならではのハードなステージ。
スプリンターにとっては、厳しいステージになります。
この日、サイクリストたちはスタート直後、サンマメ・スタジアムのなかを1周します。
アスレチック・ビルバオのユニフォームを着て集団の先頭を走るのは、地元出身のオマール・フレイレ選手(アスタナ)、ジョナサン・ラストラ選手(カハ・ルラル・セグロスRGA)、そしてミケル・ビズカラ(エウスカディ・バスク・カントリー・ムーリアス)選手の3人。
なかにはグラウンド内でPK合戦で一勝負してから集団に戻る選手たちの姿も、数多く見られました。
詰めかけたバスクの自転車ファンは、スタジアムのなかに入ることはできませんでしたが、スタジアムの外壁にあるオーロラビジョンで選手たちの様子を見ることができました。
サイクリストが楽しそうにサッカーごっこをしている姿に、観客の中から暖かな笑い声が聞こえてきました。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。