秋は稲刈りイベントに参加する親子も多いのではないでしょうか。稲が黄金色に色づき、重そうな穂が揺れる田んぼは、生きものの宝庫でもあり虫探しのホットスポット。バッタやカマキリ、クモなど、子どもの好奇心をくすぐる生きものがいっぱいです。稲刈りだけでなく虫探しも満喫できるよう、今回は秋に田んぼ周りで見られる身近な虫と興味深い生態、観察ポイントを紹介します。

稲刈りしながら虫探しも楽しもう

虫 子ども 稲刈り

稲刈り時期の田んぼは、多くの虫と出合える場所。 畔を歩くとバッタが次々と跳び跳ね、稲の間からはカマキリやクモが姿を現します。子どもが作業より虫に夢中になるのは自然なこと。その姿を制止せず、むしろ親も一緒に観察すれば、稲刈り体験は一層深みを増すでしょう。

虫を怖がる子も、親が「どんな虫か」を教えてあげると安心でき、友達が楽しそうに触れているのを見れば興味がわくこともあります。無理強いせずに、慣れるのを待ってあげるのも大切です。

稲刈りのころの田んぼの自然

稲刈りに備えて水を抜いた田んぼでは、カエルやヤゴなど水中の生きものから、昆虫など陸で活動する虫たちへと主役が移ります。農薬を使わない田んぼでは、イネ科の葉を食べるバッタなどの草食性の虫、それを捕まえるカマキリやクモといった肉食の虫が数多く見られます。

田んぼという場が特有の生態系をつくり、多様な命を支えています。そして、季節ごとに魅力的な姿を見せてくれるのです。

秋にこそ味わえる虫探しのおもしろさ

秋の虫探しで目につくのは、バッタやカマキリ、クモの姿です。これらは、春に卵から生まれ夏の間にぐんぐん成長し、秋に最も大きな姿となるため、稲刈りの頃に見つけやすくなります。こうした虫たちは、卵を残して冬が来ると一生を終えます。

小さな卵から生まれ、食べることで大きくなり、次の世代を残して命をつなぐ…そんな一年のサイクルを知ることで、自然のリズムを実感する機会にもなるでしょう。

田んぼの虫の見分け方

虫 子ども 稲刈り

ここでは田んぼで簡単に出合える代表的な虫たちを紹介します。特徴を知っておくと、すぐに見分けられるようになりますよ。

バッタの見分け方

田んぼといえばイナゴ(バッタ目バッタ科)。かつては貴重なたんぱく源として食べられてきました。公園の草地などでおなじみのショウリョウバッタやオンブバッタも見られます。これらのバッタ類は、イネやエノコログサ(ねこじゃらし)などのイネ科雑草を食べます。

イナゴ(コバネイナゴ/ハネナガイナゴ)

体長((頭の先〜腹端まで)オス約3cm、メス約4cmほど。明るい緑色~褐色で背面に黒い縦縞があるのが特徴です。コバネイナゴは北海道から沖縄まで広く分布し、ハネナガイナゴは本州以南で見られます。

見た目はほとんど同じですが、ハネナガイナゴの方が数が少なく、翅(はね)が腹部の端を越えるくらい長いのが見分けポイントです。

ショウリョウバッタ

オスは体長4.5~6cm、メスは7~9cmにもなる日本最大級のバッタです。頭部は細長く先が尖っていて、体全体もスリムで長めの形をしています。体色は緑が基本ですが、茶褐色の個体もいます。オスは飛ぶときに「キチキチ……」と音を立てるので、耳を澄ませてみましょう。

オンブバッタ

ショウリョウバッタよりかなり小型で、オスは体長2.5cm程度、メスでも4.2cm程度です。体形はずんぐりとしており名前のとおりメスの背に小さなオスが乗る「オンブ姿」がよく見られます。

カマキリの見分け方

カマキリは子ども達の憧れの虫の一つ。同じ虫かごに2匹以上入れると共食いしてしまうので、注意してください!

オオカマキリ

体長は7.0~9.5cmになる日本最大級のカマキリです。体色は緑色から褐色までさまざま。後羽を広げると半分以上が紫褐色なのが特徴です。

チョウセンカマキリ

オオカマキリによく似ています。後翅が透明で、カマの付け根の斑紋がオレンジ色ならば、チョウセンカマキリです。

ハラビロカマキリ

体長はオスが4~6cm、メスが5~7cm程度と中型です。胸のパーツが短く胴体幅が太いので、ずんぐりした印象です。翅には白い小さな点模様が2つあります。

コカマキリ

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体長は約3.6~6.3cmと小型で細身です。体色は褐色のものが多く、最大の特徴はカマにある白黒模様。体が小さくてカマに縞模様があればコカマキリとわかります。

クモの見分け方

田んぼにはたくさんの種類のクモがいますが、ナガコガネグモとジョロウグモは大きな網を張るので観察しやすい種です。

ナガコガネグモ

虫 子ども 稲刈り

体長(足を除いた胴部)はメスで2.0~2.5cm、オスで0.8~1.2㎝ほど。黄色と黒の細かい縞模様が特徴で、網の中央でじっとしています。大きな網は低い位置に張られ、網にあるジグザグ模様で見分けられます。

獲物が網にかかるとクモが素早く近寄り、あっという間に糸でぐるぐる巻きにする様子は見もの。ちょっとかわいそうですが、人が小さい虫を網にひっかけてもその技を見せてくれます。

ジョロウグモ

メスの体長は2~3cm以上にもなる大型種で、腹部には赤い模様があります。オスは1cmほどの大きさで地味な褐色をしており、目立ちません。

ジョロウグモの網は三重構造で、中心に大きな網があり前後に補助の小さな網が張られています。街中でも見られるので大きな網を見つけたら、派手な色の大きなメスだけでなく、網の端にいる小さなオスも探してみてください。

身近な田んぼを大切にしよう

田んぼはお米を生産する場であるだけでなく、日本の自然の多様性を支える大切な場所です。稲刈りしながらたくさんの生きものに触れ合うことで、田んぼが多くの生きものにとって大切なすみかであると実感できるでしょう。

捕まえた虫を持ち帰りたいと子どもに言われた場合、まずは「見たものはそのままに」というリーブノートレイス(Leave No Trace)の考え方を紹介してみてください。

もちろん飼ってみることも生態を知るための大切な経験となります。ただし、餌を確保できるのか、命を粗末にせず最後まで飼えるのか、よく話し合いましょう。

虫探しの成果を記録するために、写真を撮るのもおすすめです。帰り道や後日に、見つけた生きものについて話題にすることで、子どもの記憶にも残りやすくなります。親子で虫捕りの魅力を再確認し、身近な自然を大切にする心を育むきっかけにしてください。

稲刈りは、お米を収穫しながら虫や生きものとの出合いを通じて自然の恵みを感じられる体験です。生きものとの出合いを親子で記録しながら楽しめば、田んぼが支える生態系の大切さに気づけます。この秋、稲刈りをきっかけに、子どもと一緒に身近な自然の豊かさを再発見してみませんか。

参考
「新 日本の昆虫1900 (1)」文一総合出版
「日本のクモ」文一総合出版

曽我部倫子

ライター

曽我部倫子

東京都在住。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、小さなお子さんや保護者を対象に、自然に直接触れる体験を提供している。

子ども × 環境教育の活動経歴は20年ほど。谷津田の保全に関わり、生きもの探しが大好き。また、Webライターとして環境問題やSDGs、GXなどをテーマに執筆している。三姉妹の母。