釣りは子どもたちが自然や環境について学べる手段です。なかでも、魚を釣るだけでなく自然環境への配慮を意識した「エコフィッシング」は、親子での体験をより豊かにしてくれます。本記事では、親子で楽しむエコフィッシングの魅力についてお伝えします。
なぜ今「親子でエコフィッシング」なのか?

近年、ただ魚を釣るだけでなく、自然への敬意や生態系への理解を育む手段として、親子で楽しむ「エコフィッシング」が注目されています。ここでは、エコフィッシングの魅力について見ていきましょう。
釣りは自然を学ぶ入り口になる
釣りは、ただ魚を釣るだけのアクティビティではありません。釣り場へ向かう途中に見る風景や足元の水辺の小さな虫、生き物の気配を感じることで、自然の繊細なバランスに気づけます。
たとえば、「今日はなぜ釣れないのか?」という疑問を感じれば、天候や水温、魚の生態などさまざまな要因に目を向けるようになるでしょう。子どもにとってはこうした体験の積み重ねにより、「自然は人間の思い通りにはいかない」ことを、感覚として身につけられるです。
室内家庭では育みにくい五感を使う体験ができる
現代の子どもたちは、スマートフォンや電子ゲームなど、視覚や聴覚に偏った刺激を日々受けています。一方、釣りは視覚・聴覚だけでなく、触覚・嗅覚・体感温度など、五感を活用する貴重な体験です。
たとえば、岩の上の濡れた感触や潮のにおい、魚の引きの手ごたえなど、さまざまな感覚のひとつ一つが、心身の成長や環境に対する感受性の土台となります。
エコフィッシングの基本マナーと考え方

「エコフィッシング」とは、魚のいたわりや自然環境を壊さず、共生する意識を持ちながら楽しむ釣りのスタイルです。ここでは、エコフィッシングの基本マナーと考え方を紹介します。
自然を守る気持ちを子どもに伝える
釣りは自然からの贈りものを楽しむ遊びです。子どもには「釣りをする人は自然を守る役目があるんだよ」と伝えましょう。大切なのは、「わかりやすい合言葉」を作ってあげることです。
たとえば、「来たときよりきれいにして帰ろう」と声に出して一緒にゴミを拾うと、子どもは遊び感覚で自然の大切さを学べるでしょう。釣り糸や仕掛けのような小さなゴミも一緒に探して拾えば、子どもにとって「自分も自然を守れた」という達成感を得られます。
また、立入禁止の看板を見つけたら「ここは魚や生き物の安全地帯だから入っちゃだめなんだよ」と説明すると、ルールを守る意味を理解しやすくなるはずです。
リリースを体験から学ばせる工夫
エコフィッシングでは、「食べる分だけ持ち帰る」が基本となります。キャッチ&リリースの考え方を子どもに伝えるには、実際に見せながら体験させるのが一番です。
たとえば、以下のような工夫をしてみてください。
- 魚に触る前に「手を水で冷やしてあげよう。そうすると魚の体を守れるんだよ」と実演する。
- フックを外すときは「早く楽にしてあげようね」と声をかけながら外す。
- 放すときは「ほら、泳げるかな?バイバイしてあげよう」と子どもに見せながらそっと逃がす。
上記のように、子どもに学ばせる意識をもって接すれば、「魚を大事にする行動」が自然に身につきます。リリースを単なる作業にせず、命への感謝を伝える時間にすると、子どもの心に残る体験になるでしょう。
親子でエコフィッシングを楽しむための道具選び

エコフィッシングを意識するなら、道具選びにも工夫したいところです。以下のようなポイントを押さえておきましょう。
鉛不使用のシンカー(オモリ)を選ぶ
釣りのオモリには鉛が多く使われていますが、水の中に長く放置すると環境を汚す原因になります。水に溶けにくい「タングステン」のオモリなら、環境への負荷を軽減できるのでおすすめです。
子どもには、「鉛は自然を汚すけど、タングステンなら魚や川を守れるんだよ」と教えるとわかりやすいでしょう。お店で一緒に「どっちがタングステンかな?」と探せば、自然を大事にする気持ちも育ちます。
生分解性のラインやエコ素材のルアーを活用
誤って切れたラインやルアーは、そのまま水中に残されて環境を汚染させる原因になります。水中に放置しても自然に還る素材なら安心です。なかには、生分解性素材やリサイクル素材を使ったラインやルアーが販売されています。
子どもが安心して選べるように、「もし糸が切れても、自然に帰ってくれる糸なんだよ」と伝えると良いでしょう。「どちらがエコの糸かな?」と、クイズにして選ばせるのも学びになります。
子ども用に扱いやすい軽量タックルを選ぶ
成長過程の子どもには、大人が使う竿やリールを扱えない場合があります。体格に合わせて短めの竿や小さいリールを用意するなど、体への負担を軽減できるタックルを選びましょう。扱いにくい道具で失敗を体験させるのではなく、「楽しかった」で終わらせることが大切です。
「この竿なら軽いから一人でも投げられるよ」「持ってみて、一番使いやすそうなリールを選んでみよう」などと声をかけ、一緒に選ぶ体験をさせてあげましょう。道具選びが「自分の道具を決める体験」になると、子どもにとって釣りがより特別な遊びになるはずです。
バーブレスフックを選ぶ
釣り針には大きく分けて、「返し」で外れを防ぐ針と「返し」のない「バーブレスフック」があります。バーブレスフックは簡単に外しやすく、魚へのダメージを軽減できるのがメリットです。リリースを前提にエコフィッシングを楽しむなら、バーブレスフックを使用しましょう。
子どもに「この針なら魚から抜けやすく、すぐに外して元気に帰してあげられるんだよ」と教えれば、「魚を大切にする釣り人になりたい」と感じる意識が芽生えるかもしれません。
エコフィッシングを通じて「環境意識」を育てるアクション

魚をただ釣るだけではなく、自然を守る行動にまで広げていくと、子どもにとってより深い学びが得られます。ここでは、エコフィッシングを通じて環境への意識を育てる具体的な行動を見ていきましょう。
親子で楽しめる「釣り+清掃」活動のすすめ
釣り場のゴミ拾いは、もっとも手軽で効果的な環境保護のアクションです。釣りを終えたあとに、10分だけでも周囲のゴミを拾って帰るように心がけましょう。
子どもにとって「釣り=自然をきれいにする時間」という意識が根づけば、その経験は生涯の財産となるでしょう。ただし、ゴミには有害な物質を含んでいる場合があります。軍手やゴミ拾い用のトングを用意しておくと安心です。
SNSでの発信やクラブ活動に参加する
「釣り+環境保全」の取り組みを「#エコフィッシング」「#親子釣り」などのタグを活用し、SNSで発信してみましょう。子どもと一緒に投稿する写真を選んだり、文章を考えたりする行動は表現力や主体性を育みます。
また、環境に配慮した釣りクラブや地域団体に参加してみるのも貴重な体験になるでしょう。「自分たちの行動が誰かに影響を与える」という実感は、子どもの自己肯定感向上にもつながるのです。
ライター
阿部 コウジ
釣り歴30年以上のアウトドアライター。自然豊かな清流や渓谷に魅せられ、環境と共生する釣りの魅力や自然を大切にしたアウトドアの楽しみ方を発信。釣った魚を食べるのも好き。将来はキャンピングカーで車中泊しながら、日本各地の釣り場を巡るのが夢。