夏休みは、子どもと自然の中で過ごせる絶好の機会。せっかくなら、自由研究も兼ねて生きもの調べにチャレンジしてみませんか?知識ゼロでも大丈夫。スマホを使えば、花や虫、鳥など身近な自然について、その場で簡単に調べられます。さらに、自治体などが行う生きもの調査に親子で参加すれば、「市民調査員」として新しい発見や学びの喜びも。遊びながら学び、社会貢献にもつながる夏の体験を紹介します。
野外で出合った生きものを調べるには?

野外で出合った生きものの生物名を知りたい場合、スマホを利用すれば、その場で便利に調べられるようになりました。
目の前にある花や虫の名前がわかれば、それはもう特別な存在に。次に出合った時に、うれしさが増すはずです。専門家レベルの正確さは必要ではありません。最初のうちは間違いを気にせず、どんどん調べてみましょう。
スマホで撮った画像を調べる

スマホで写真を撮れば、対象物を簡単に検索できます。この時のポイントは、特徴となる部分を含めること、ピントを合わせて撮影することです。
ただし、出てくる検索結果が100%正しいわけではないことに、注意しなければなりません。調べる目的によっても求められる精度は変わりますが、自分が楽しむために調べるのであれば、検索結果で表示されるものでも十分です。
iPhone(iOS 15 以降)の場合
写真アプリ(Photos App)から調べたい対象が写っている写真を選択すると、画像の下にアイコンが表示されます。被写体が動物の場合は肉球、虫はテントウムシ、両生爬虫類はトカゲ、植物や花は木の葉のアイコンです。
アイコンをタップすると、Siriの知識やWeb上の類似画像が表示され、詳細情報を確認できます。海外の情報が表示されることも多いので、日本では見られない種類が表示されることもある点に留意しましょう。
Android/iPhone(iOS 14 以前)の場合
Googleフォトアプリから写真を選択します。画像の下に表示されるレンズアイコンをタップ、選択して調べたい対象に合わせると、Googleでの検索結果が表示され、詳細情報を確認可能です。Googleフォトアプリは、iPhoneでもダウンロードして使えます。
なお、より正確に生物名を知りたい場合には、図鑑を併用しましょう。生息地の環境、分布域、見られる時期、大きさ、似た種との違いなどが、見分けの手がかりとなります。
生きもの調べのアプリを利用

生きもの調べに特化したアプリを利用するのも便利です。この場合も、写真を撮ることが基本ですが、調べた結果をアプリ内で保存したり他のユーザーと共有したりできます。利用しているうちに、いつのまにか知識が増えていくはず。
ここでは、気軽に使える2選を紹介します。
Biome
植物・昆虫・動物など幅広い生きものを対象にした無料アプリです。撮影された写真と、撮った季節・場所からAIが生きものの名前を判定します。ユーザーからの投稿により、日本の動植物約10万種が収録されていて、全国のいきもの情報の閲覧が可能です。
情報は国内最大級のリアルタイム生物分布ビッグデータとして蓄積され、社会貢献にもつながります。Biomeは全国の自治体や団体との協働により、市民参加型の調査に広く利用されています。
Picture This
Picture Thisは植物を得意とした画像認識アプリで、写真を撮るだけで瞬時に植物の名前や育て方を表示してくれます。花や葉からの判別精度が高く、野生植物はもちろん、花壇の花や切り花にも対応しています。
インターフェースはシンプルで使いやすく、初心者でも安心。7日間の無料体験後は年間約5,000円で利用可能です。植物観察をもっと深く楽しみたい人や、自由研究や園芸のためのサポートとしておすすめのアプリです。
専門家に直接質問
環境省が運営する生きもの情報の共有システムいきものログでは、「種名調べ支援」を利用して、専門家から種名を調べるヒントやアドバイスをもらえます。5〜10月の間に1人20回までという制限がありますが、専門家に直接質問できるのは大きな魅力です。
ユーザー登録は無料で初心者でも安心して参加でき、見つけた生きものの写真や観察場所を報告することで、自然環境の国勢調査に貢献できます。全国各地で実施中の調査も紹介されているので、探してみてください。
生きもの調べの調査員になってみよう

身近な自然に少しでも興味があれば、生きもの調査に参加してみましょう。専門家だけに頼る調査では、調査範囲や収集できる情報に限界があるため、以前からさまざまな形で市民参加型の調査が実施されてきました。
最近では、スマホの普及や位置情報、AIの精度向上により、初心者でも撮影した写真を通じて、かなり正確な情報を報告できるようになっています。
全国の参加者が見つけた生きものの情報が蓄積されれば、増えている種や減っている種、分布の変化などを分析することが可能です。
減少しつつある生物を守るための保全対策や、自然環境をどう残すかといった科学的な判断の基礎として、一つひとつの情報がとても重要なのです。
・Biome…アプリ内で東京いきもの調査団、コープいきもの探しクエストなど全国各地の調査に参加可能
・いきものログ…緑の国勢調査!みんなで虫らべ2025、かながわ生きもの調査など現在参加可能な調査を紹介
市民調査に参加できるメリット

市民調査に参加することで、普段何気なく見ていた草花や虫、鳥などが、ぐっと身近な存在に変わります。「この生きものは何だろう?」と興味を持ち、生物名や特徴、他の生きものとの関係性などを知ることで、自然の見え方も豊かになっていくでしょう。
また、初めて出会う生きものや、珍しい種を見つける楽しさは、宝探しのようなわくわく感があります。さらに、自分が報告したデータが研究や保全に活かされるのも魅力の一つ。自然の中での時間がより充実し、社会にも貢献できるのが大きなメリットです。
ライター
曽我部倫子
東京都在住。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、小さなお子さんや保護者を対象に、自然に直接触れる体験を提供している。
子ども × 環境教育の活動経歴は20年ほど。谷津田の保全に関わり、生きもの探しが大好き。また、Webライターとして環境問題やSDGs、GXなどをテーマに執筆している。三姉妹の母。