PCやスマホ、デスクワークが日常生活に浸透し、心身ともにストレスを感じている現代人は多いと思います。この状態から抜け出したいと思ったとき、簡単に始められるセラピーのひとつがガーデニング。庭がなくても、たったひとつの鉢植えの世話をするだけで心身の疲れから脱却できる可能性があります。植物との触れ合いがもたらす効果を知り、土や植物に触れるライフスタイルを楽しんでみませんか?

健康な長寿を誇るブルーゾーン、植物との関わり合いは?

ガーデニング・セラピーという言葉があります。文字通り、庭や植物に触れることで癒しを得ることを意味します。土や植物との関わり合いは、私たちの心身にさまざまな効果をもたらすことがわかってきました。

まずは、植物との触れ合いがどれほど健康によいのか、証明された例を紹介します。

ブルーゾーンと植物の関係

植物との触れ合いの有効性を証明したのが、ブルーゾーンです。ブルーゾーンは、心身ともに健康な100歳以上の人が多い地域のこと。日本の沖縄、イタリアのサルデーニャ島が、その一例として挙げられます。

シンプルな食事とともに注目されたのが、彼らが日常的に家庭菜園や農作業を

行っているという点です。沖縄の人たちはゴーヤや紫芋を、サルデーニャの人々はオリーブやハーブを自家栽培し、食卓に載せる人が多く、植物と触れ合うライフスタイルが根付いています。

自給自足は心身ともによい効果をもたらす

IFAD(国際農業開発基金)の報告では、自給自足の生活は人々の健康に寄与するとされています。

理由は、無農薬や無添加の新鮮な野菜を食べられること、栄養価が高い旬の食材を確保できること、手にかけた野菜を中心とした食生活になることなどさまざま。

ブルーゾーンの人々は、肉よりも野菜を中心とした食生活を送る人が多く、彼らの食卓を支えているのが、自給自足によるおいしい野菜なのです。

体と脳のキャパシティを最大限に引き出す自家菜園

イタリアのジェオルゴフィリ・アカデミー(農業や林業に関する研究機関)では、自家菜園やガーデニングは、単一の筋肉だけではなく、全身も鍛えられるとしています。

フィジカルの持久力や柔軟性を養い、メンタル面では幸福度や睡眠の質の向上に寄与。生活習慣病予防にも大いに役に立つことを、主張しているのです。

ガーデニングがもたらす健康:フィジカル編

世界の医療機関が、健康の維持のためにガーデニングを推奨しています。ガーデニングは、具体的にどのような効能をもたらすのでしょうか。

まずはフィジカル面から紹介します。

英国王立園芸協会も健康維持のためにガーデニングを推奨!

ガーデニングが健康に有益であるという研究報告は、各国の大学や研究機関から発表されています。

たとえばアメリカ国立医学図書館(National Library of Medicine)には、ガーデニングと健康に関する論文がいくつも掲載されています。英国王立園芸協会(Royal Horticultural Society)のサイトでは、国民の健康維持のために医学者がガーデニングを推奨しています。

ガーデニングによるカロリー消費はこんなにも

ガーデニングのさまざまな作業は、カロリー消費にもお役立ち。具体的な数字で、ガーデニングによるカロリー消費量をみてみましょう。

1時間当たりの作業

・草取り 200~400kcal

・くま手による地ならし 350~450kcal

・花の植替え 200~400kcal

・水まき 120kca

経験のある人ならばわかると思いますが、ガーデニングの諸作業はかなりの重労働。天候によっては、1時間続けるのでさえ、ハードです。

上記の数字はあくまで参考にとどめて、ガーデニングは無理のない範囲で行う必要があります。英国のコベントリー大学は、ガーデニングの諸作業における動きについて、けがなどの負担軽減の研究に着手しています。

ガーデニングがもたらすフィジカルの強化

ガーデニングのメリットは、フィジカル強化の要素がバランスよく含まれている点です。

・腕:ほどよい筋肉がつくほか、握力も強くなり腕全体の動きが軽くなります。

・脚:平衡感覚の維持が容易になり、柔軟性が身につきます。転倒しにくくなるという報告もあります。

・体全体の筋力:筋力に関しては、腕や脚だけではなく、腹筋や臀筋の強化も期待できます。

・ビタミンDの摂取:屋外でガーデニングを行うことで、ビタミンDの摂取が可能。骨粗鬆症予防にも効果的です。

・その他のメリット:土との接触によって、免疫力が向上することがわかってきました。有酸素運動により、心肺機能も強くなります。

以上の報告をみれば効能は明白。日常的にガーデニングを行うことで、身体活動の向上が期待できます。近年は、予防医学やリハビリの分野でも、ガーデニングが注目されていますよ。

世界でも有数の長寿ゾーンでは、日常的に土との接触を持っている人が多数。ガーデニング施行者が多いイギリスは、健康維持のためのガーデニングを推奨しています。筋力の向上や柔軟性が身につくほか、免疫力強化も期待できますよ。次回はガーデニングによるメンタル面のメリットを紹介します。

参照元:

BLUE ZONES「Live Better, Longer」

IFAD「Self-sufficient farming for better health in the remote Pacific」

Accademia dei Georgofili「Garden-therapy, coltivare fa bene alla salute」

Royal Horticultural Society「Why gardening makes us feel better – and how to make the most of it」

Royal Horticultural Society「Prescription for nature, fresh air and green space improves mental health」

La Repubblica「Garden-therapy, coltivare fa bene alla salute」

cucciola

ライター

cucciola

ヨーロッパの片田舎で家族と3人暮らし。

学生時代に都会の生活で心を病んで以降、スローライフとスローフードで心身の健康を維持。気が向くまま、思いつくまま、風まかせの旅行が多数。

アートと書籍を愛するビブリオフィリアで1人の時間が大好き。