バカンス文化を持つ欧米人にとって、旅行は自然と親しみ文化に触れる時間。とくにストレス解消法として、旅行の有効性が報告されています。欧米風の旅スタイルに倣い、スローに楽しむことを目的とした旅をしてみませんか?
欧米のバカンス文化
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イタリア各地にある巡礼路の標識
欧米の人にとってバカンスは人生における必須要素。数週間から1ヶ月近くの長期連休を楽しむ欧米のバカンス文化や目的をご紹介します。
「日常生活を送る都市、余暇を楽しむ郊外」という概念
イタリアでは、富裕層でなくても、セカンドハウスを所有している人が多くいます。「日常生活は都市で、余暇やバカンスは郊外で過ごす」というライフスタイルは、古代ローマ時代から存在していました。
セカンドハウスといっても豪華なものではなく、必要最低限のものだけが揃い、小さな庭があるという素朴なものです。
町には日常生活に不可欠な機能性を求める一方、郊外の家に求めるのはくつろぎ。オンとオフを物理的に離れた場所で過ごすことで心機一転、生活にメリハリをつけるのがバカンスの意義なのです。
自然や文化に触れるのが主目的のバカンス
古代から「バカンスは自然や文化に触れるのが目的」という概念が継承されてきたイタリア。非日常的なものに囲まれて過ごし、大らかに楽しみます。
不動の人気を誇るのが海で過ごすバカンス。バカンスに特化した家をレンタルし、気ままに砂浜で過ごします。海で泳ぎ、パラソルの下でおしゃべりや読書に興じ、ランチのあとは昼寝をする。これが典型的なバカンススタイルです。
山で過ごすバカンスは、夏だけではなく冬も人気。夏はトレッキングが主流ですが、暖炉のある山の家でワイワイと楽しむ冬休みも楽しいもの。ゲームや食料品を山ほど持ち込んで、家族や友人とにぎやかに過ごします。
そんな時間に飽きてしまったら、周辺の町を散策。世界遺産が多いイタリアは、少し移動すれば中世の街並みが残る景色を楽しめるのがメリットです。
研究で明らかになった「旅する」ことのメリット
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バカンス先の定番、南イタリアの海
いくつかの研究で、日常生活から離れて旅行することには、さまざまなメリットがあると報告されています。旅することでどのような効果が期待できるのでしょうか。
ストレスの解消
2000年に行われた研究では、仕事や日常生活から離れることで、ストレスホルモンであるコルチゾールのレベルが低下することが明らかになっています。休暇を1週間とることで、生活の質が向上する効果も認められました。
また、2010年の別の研究によると、休暇を取る人は取らなかった人と比べるとストレスレベルが29%減少したことが報告されています。日常生活から離れることは、ストレス解消に必要なことなのです。
創造力の向上
2014年の研究では、旅行をして未知の世界に触れると創造力を刺激することが明らかになりました。新しい文化に触れたり、人々と交流したりすることは、多様なアイデアの根源になります。
脳の機能の改善
いくつかの研究から、旅行したり自然に触れたりすることが、認知機能の改善に役立つことが判明しています。屋内と屋外で行われた実験で、屋外環境が認知レベルを上げることがわかったのです。
また、2014年の報告では、休暇中だけではなく休暇後も、認知機能の柔軟性を維持することが論文に記されています。旅行は、精神の健全のために役立つことがわかります。
旅行で実践するスローフード、スローライフ
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各地の名産物を味わうのも旅行の楽しみのひとつ
生活のテンポが速くなっていく毎日。イタリアでは、あえてスローに生活を楽しむという概念があります。イタリアのスローライフを参考にした、旅行を楽しむ方法をご紹介します。
スローライフとは
1980年代、ファーストフードの対義語として生まれたスローフード。地域に根づいた伝統的な食材や料理を守り、質のよい料理を楽しむという概念です。
スローフードのコンセプトを中心に、生活をのんびり楽しむという「スローライフ」という言葉が生まれました。効率性にこだわるのではなく、心から人生を楽しむことがモットーです。
旅行先で地産地消のスローフードを楽しむ
楽しい旅行には欠かせないおいしい食べ物。ぜひ地元の食材や料理にトライしましょう!
スローフードには、質のよい食材を作る小規模な生産者を守ることが含まれています。地域に根づいた料理を堪能すれば、より深くその土地を理解できるでしょう。
家族や仲間とスローにゲームを楽しむ
スローに旅行を楽しむときに活用したいのが、ボードゲーム。バカンスやクリスマス休暇で仲間が集うと、自然にテーブルの上に乗るのがアナログなゲームです。
デジタルが苦手な高齢者も楽しめるボードゲーム。2019年の研究では、デジタル以外のゲームを日常的にたしなむ人は記憶力や思考力を維持する確率が高いことがわかっています。
いつもは使わない脳が鍛えられる可能性大です。
これまでと違う旅行を楽しむために
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自然に触れる喜びはバカンスの醍醐味
ツアーであちこちの名所を巡る旅だけではなく、スローに楽しむ旅行にもぜひトライしてみてください。スロースタイルの旅行、実践例です。
拠点はひとつ、決めたエリアをとことん楽しむ
中期から長期の旅行では、拠点をひとつにしてみましょう。移動時間や荷造りの手間がなくなり、より多くの時間を余暇に使えます。
拠点の周辺にはきっと、ガイドブックに載っていない素敵な場所があるはずです。地元の人たちとの交流を楽しめるかもしれません。
時間に追われることなくゆったりと楽しむ
ツアーではなく、風まかせに、その日の気分で予定を決めるのも楽しいもの。誰のためでもない、自分のための時間です。ゆったりとした気分で楽しんでこそ、オフの意味が生きてきます。
晴れたら自然のなかへ、雨が降ったら美術館や博物館へ。束縛のない旅行は、心からリラックスできる時間を持てます。
読みたいと思いながら読めなかった本を持参
欧米のバカンスに欠かせないもの、それが本です。夏が近づくと、イタリアの新聞や雑誌では「バカンス中に読みたいおすすめ書籍」という記事が数多く登場します。
普段は時間に追われて本に集中できない人も、旅行に本を持参してみてはいかがでしょうか。
お茶やワインを飲みながら、窓から星空を眺めながら、本と向き合う時間。良質なもので心を満たして、ストレスを解消するのも素敵です。
参照元:
WebMD「How Travel Affects Mental Health」
WORLD TRAVEL & TOURISM COUNCIL「9 reasons travel is good for your mental health」
Science Direct「The restorative benefits of nature: Toward an integrative framework」
Science Report「Effects of nature on restorative and cognitive benefits in indoor environment」
https://www.sciencedaily.com/releases/2019/11/191126140413.htm
ライター
cucciola
ヨーロッパの片田舎で家族と3人暮らし。
学生時代に都会の生活で心を病んで以降、スローライフとスローフードで心身の健康を維持。気が向くまま、思いつくまま、風まかせの旅行が多数。
アートと書籍を愛するビブリオフィリアで1人の時間が大好き。