生活習慣病予防を考えると減塩は効果的な対策です。しかし、濃い味付けに慣れた現代人にとって、塩分量を減らすのは至難の業。そこで活用したいのがハーブです。ハーブを使えば料理はさらにおいしくなり、減塩につながります。ハーブによる減塩効果やハーブの使い方を紹介します。

減塩はなぜ体にいい?具体的な数字で知る減塩事情

「塩分の取りすぎはよくない」といわれますが、実際にはどのくらいが適塩なのでしょうか。減塩の結果どのような効能が期待できるのか見てみましょう。

1日の塩分摂取目標はかなりシビア

私たちは通常、どのくらいの塩分を摂取しているのでしょうか。

厚生労働省によると、日本では成人の1日の塩分摂取量は、男性が11g、女性が9g。数字を見てもピンときませんが、人間が必要とする塩分量は1日当たり2gといわれているため、現代人は、塩分を過剰摂取している状況です。

厚生労働省が目標として掲げている1日の塩分摂取量は、成人男性7.5g未満、女性ならば6.5g未満です。

ちなみに市販のおにぎりを1個食べると、0.6gの塩分を摂取することになります。私たち現代人は、無意識に多量の塩分を摂取していることがわかります。

期待できる減塩効果

減塩することで、どのような効果が期待できるのでしょうか。

塩分の取りすぎは高血圧や胃がん、食道がんのリスクを高めるといわれています。意識して塩分摂取量を減らすことで、いわゆる生活習慣病と呼ばれるさまざまな病気の予防につながるのです。

イタリアで行われた「減塩週間」!推進されたのはハーブの使用

世界単位で減塩が促進されるなか、イタリアで実施された「減塩週間」。イタリア政府はさまざまな減塩方法を提示しましたが、筆頭にあったのがハーブの使用です。

「It’s time to shine the spotlight on SALT」をスローガンに減塩を喚起

自国の食文化に対する自負心が強いイタリア。おいしいだけではなく、ヘルシーな食の実践を積極的に心がけています。

2024年5月13日から19日にかけて、イタリアでは「It’s time to shine the spotlight on SALT(今こそ塩に注目!)」をモットーに掲げキャンペーンを実施。1日の塩分摂取量を5g以下に抑えようと呼びかけました。

食材を購入する際に含まれている塩分量を確認したり、新鮮な野菜や果物を摂取したりすることが具体的な対策として挙げられています。そして、なによりも減塩に有効とされたのが、ハーブやスパイスの使用です。

ハーブによる減塩効果は研究結果でも明らかに

ハーブによる減塩が成功した例は、研究でも明らかになっています。

一般的に味覚を感じにくくなる高齢者は、実際に塩の量を減らすと物足りなさを感じることが大半でした。一方、塩の量を減らしてもハーブを使用した料理には、十分な塩味を感じるケースが多いことが報告されています。

ハーブの使用は減塩のために有効であることが証明されたというわけです。

古来愛されてきたハーブ、どのような効能があるのか

ハーブが使われた料理は洗練されたイメージがありますが、見た目や風味がよくなるだけではありません。ハーブは昔から治癒力をもつものとして、先達たちによって模索され、効能が私たちにまで伝えられました。ハーブの効果・効能や食材との相性を紹介します。

ローズマリー

地中海原産のローズマリー。「海のしずく」という美しい意味のローズマリーは、抗酸化作用が高いハーブとして知られています。ローズマリーに含まれるルテオリンという成分には血流促進作用があるため、肌荒れ対策に期待大。またロスマリン酸は、記憶力の低下を抑えたり、認知症を予防したりする効果もあることがわかっています。

肉料理と野菜料理、いずれとも相性がよいローズマリー。鶏肉や羊肉を使ったオーブン料理、ポテト料理に使われるハーブの定番です。

タイム

古代においては勇気の象徴であったタイム。チモールやカルバクロールなどの成分は抗菌作用があり、サポニンには痰を切る効果が認められています。ドイツの小児科では、風邪薬として処方されることが多いタイム。ペットのケアにも有効です。

ラタトゥイユや冬の野菜を使ったスープと相性が抜群で、シンプルなトマトソースに加えるとほどよいアクセントに。チャウダーなどの魚介料理に使用するレシピが多く、生の葉は飾りとしても映えます。

セージ

中世のヨーロッパでは防腐や増血作用があると信じられていたセージ。シャープな香りは、レバーや魚のにおい消しにぴったり。セージは殺菌作用があるだけではなく、ロスマリン酸の収れん効果がホットフラッシュなどの更年期症状に効くといわれています。

サルティンボッカやスカロッピーネなど、自宅で簡単にできるおしゃれなイタリア料理にぜひ!

ハーブを使うのは難しい?じつは身近にあるハーブの料理

ハーブを使って減塩できるのならばぜひトライしたいところ。しかし、ハードルの高さを感じる方が多いかもしれません。実は私たちの身近には、ハーブを使った料理があふれています。おいしいハーブの料理にはどのようなものがあるのでしょうか。

ハーブを使った西洋料理

香りを楽しみながらおいしくヘルシーに食べられる西洋料理はたくさんあります。

誰もが大好きなイタリア料理の代表は、バジルペーストのパスタ。松の実とニンニクをフードプロセッサーにかけて、チーズをたっぷり乗せれば、塩分は少なくても豊かな味わいの一皿に。

食べ盛りがいる家庭にはローズマリーで風味付けしたポテトのオーブン焼きはいかがでしょうか。塩加減が難しいポテトの料理は、ハーブを入れることでメリハリのある味わいになります。

自宅での栽培が簡単なイタリアンパセリは、アサリなどの魚介類と好相性。酒蒸しではなく白ワインで蒸して、カットした葉を散らすだけで、豊かな風味を楽しめます。

ハーブを使った和食

日本食とハーブ、あまり関連がなさそうなイメージがあります。

植物の薬効成分や抗菌作用は、日本で古くから知られてきました。お刺身をワサビやショウガと食べるのは、ハーブを活かした知恵のひとつ。

お吸い物に浮かべる三つ葉、そうめんの薬味として使う大葉やミョウガもハーブです。山椒やゆずは、まさに和食に洗練を与えてくれるハーブたち。

子どものころは苦手だった和のハーブの風味は、大人になって楽しめるようになったという方も多いはず。ぜひ和食にもハーブを用いて塩分量を減らし、素材の風味を楽しみたいものです。

風味豊かなハーブを使うことで、塩分摂取量を減らす。この試みは現在、世界的な風潮となり、研究でも効果が実証されました。日常的にハーブを用いて、塩の使用を減らすだけではなく、食卓を豊かに彩って楽しみましょう。

参照:
八訂 早わかりインデックス きほんの食品成分表(2023年、主婦の友社)
厚生労働省
イタリア保健省
サイエンス・ダイレクト
一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会
真木文絵『ココロとカラダに効く ハーブ便利帳』(2017年, NHK出版)
Caroline Holmes『Erbe per il giadiniere gourmet』2014, Guido Tommasi Editore刊

ライター

cucciola

ヨーロッパの片田舎で家族と3人暮らし。

学生時代に都会の生活で心を病んで以降、スローライフとスローフードで心身の健康を維持。気が向くまま、思いつくまま、風まかせの旅行が多数。

アートと書籍を愛するビブリオフィリアで1人の時間が大好き。