ピッケルの各部位の名称
まずはピッケルの各部分の名称について説明します。各部分の名称を覚えておくと、雪山講習会などに行ったときに理解が深まるでしょう。ピッケルには、シャフト・スパイク・ヘッド・ピック・ブレードと呼ばれる部分があります。
シャフト
シャフトは長い柄の部分で、用途によって長さや形を決めます。
スパイク
シャフトの下部にある尖った部分がスパイクです。スピッツェ・石突きとも呼ばれています。
ヘッド
シャフトの上部についているのがヘッドです。歩行時はこの部分をもって歩きます。
ピック
ヘッドの先の尖ったほうがピックです。固まった雪が砕けます。
ブレード
ヘッドの幅が広いほうがブレードで、氷や雪を削って足場をつくります。
雪山登山ではなぜピッケルが必要なの?
森林限界を超える山や傾斜がある山は、ピッケルが不可欠です。雪山登山では主に以下のシチュエーションで必要になります。
- 急斜面でバランスを保つため
- 滑落を止めるため
- 耐風姿勢を保つため
- ラッセルワークをするため
上記にあるシチュエーションを詳しく説明しますね。
①急斜面でバランスを保つため
急斜面や足元が不安定な雪道では、ピッケルを杖にしてバランスをとりながら歩きます。ヘッドをしっかり握って、スパイクを斜面に刺しましょう。
また、岩場や凍結して滑りやすい箇所は、斜面にピックを刺し、手がかりとしても活用できますよ。
②滑落を止めるため
万が一滑落した場合、ピッケルの先を雪面に突き刺して止まらなければなりません。瞬時に動けるように、雪山登山の講習などを受けて、つかい方を練習しておきましょう。
本格的な雪山登山では、ちょっとした転倒が生死をわける事故につながります。滑落を防ぐためには、下記の記事を参考にしてみてくださいね。
③耐風姿勢を保つため
雪山で急な強風や突風に見舞われたときは、ピッケルを支点にして耐風姿勢を保ちます。雪面に深く刺すことで、力強く踏ん張れますよ。
④ラッセルワークをするため
降り積もった雪山でラッセルをする場合に、ピッケルが役に立ちます。ラッセルとは腿や腰くらいある雪をかきわけて、歩きやすくすることです。つかい方は、両手でピッケルをもち、前にある雪を足元にかき落として道をつくります。
ピッケルを選ぶときの6つのポイント
ピッケルを購入するとき、自分はどんな雪山に行きたいのか、どんな山行をしたいのかを考えます。そして、その登山スタイルに合うように、以下の6つを考慮して選びましょう。
- ピッケルの種類
- シャフトの長さ
- シャフトの形
- ヘッドの握りやすさ
- 耐久性
- 付属品の有無
上記のポイントを詳しく説明しますね。
①ピッケルの種類
ピッケルは一般的な縦走用から、専門的に扱うものまで幅広くあります。主な種類としては、一般縦走用・ミックスルート用・アイスクライミング用などが挙げられますよ。最初の1本を検討しているなら、一般縦走用かミックスルート用がよいでしょう。
②シャフトの長さ
シャフトの長さは一般縦走用でつかう場合、身長-110cmが目安になります。合うサイズがない場合は、ヘッドを手にもち、シャフトの先端がくるぶしくらいの長さになるものを選びましょう。
急斜面が多くなる中級の雪山では、少し短めのピッケルが扱いやすいです。
③シャフトの形状
シャフトの形状は、ストレートシャフトとSAシャフトがあり、用途によってつかい分けます。
杖のようにつかえる「ストレートシャフト」
ストレートタイプのピッケルは、シャフトが真っ直ぐなので、杖として使用しやすいです。一般的な登山ルートに向いており、強風時の耐風姿勢では、体をしっかり支えられます。
幅広くつかえる「SAシャフト(セルフアレストシャフト)」
一般縦走からバリエーションルートまで幅広くつかえるピッケルです。ゆるやかなカーブがついているのが特徴で、急登でも刺しやすいのが利点。ストレートタイプのピッケルよりも深く雪に刺さるため、安定感が増します。
④ヘッドの握りやすさ
ピッケルはヘッドをもって歩行するので、実際に握って手に合うものを選びます。手に合わないものを長時間つかっていると、ストレスになるからです。
⑤耐久性
ピッケルの強度には、ベーシック(B)・テクニカル(T)の2つがあります。シャフトやピックの部分に(B)・(T)と表記されているので確認しましょう。表記がないものはベーシックになります。
それぞれの特徴は下記のとおりです。
一般敵な登山向き「ベーシック(B)」
ベーシックは初級〜中級の一般的な登山に向いています。テクニカルに比べて軽いため、持ち運びや扱いが楽です。
ミックスルート向き「テクニカル(T)」
ベーシックよりも強度があります。体重がかけらるので、ピッケルをつかったロープワークが可能です。赤岳や北アルプスなどの難易度が高い雪山を目指すなら、テクニカルを選んでおくとよいでしょう。
⑥付属品の有無
ピッケル本体のほかに、リーシュコード・ヘッドカバー・ピックカバーが必要です。ピッケルを落とさないためにリーシュコードをつけましょう。また、ピッケルの先は尖っていて危ないため、持ち運ぶ際にはヘッドカバーやピックカバーをつけてくださいね。
各製品によって付属品は異なります。必要な付属品がない場合は、ピッケルと一緒に購入しましょう。
雪山登山に!定番ピッケルのおすすめ3選
はじめてでもつかいやすい、雪山デビューにぴったりなピッケルを3つご紹介します。
①ブラックダイヤモンド/レイブンウィズグリップ
シンプルでスタイリッシュなデザインのピッケルです。スパイクが鋭利で、凍結斜面でもしっかり打ち込めます。サイズ展開は55・60・65・70・75cm。カバーは別売りですが、リーシュコードはついています。ヘッドが握りやすく、ピッケルをはじめてつかう方にもおすすめです。
②グリベル/ネパールSA プラス
シャフトがゆるやかなカーブで、雪面に深く刺さりやすいのが特徴。サイズ展開は53・58・66・74cmです。ヘッドカバーとリーシュコードが付属していて便利ですよ。ミックスルート用で、雪山デビューから幅広くつかいたい方に向いています。
③グリベル/G1 SA・プラス
SAシャフトを採用したピッケルで、支持力が強く、しっかりとした安定感があります。サイズ展開は、53・66・74cmです。ヘッドカバーとリーシュコードが付属しており、別途買う必要がありません。ヘッドの長さが25cmと短めで、手が小さい方でも握りやすく適しています。
ライター
yuki
幼少期からキャンプや釣り、スキーなどを楽しむアウトドアファミリーで育つ。10代後半は1人旅にハマりヨーロッパや北米を中心としたトラベラー期となる。現在もスキー、スノーボード、ダイビングなど海や山で活動中。「愛する登山」は低山から厳冬期の雪山まで季節問わず楽しむhike&snowrideなスタイル。お気に入りの山は立山連峰!Greenfield登山部/部長の任命を受け部活動と執筆活動に奮闘中。