幸せとはなにかの定義として、SDGsにも関連する「ウェルビーイング」が世界的に注目されています。今記事ではウェルビーイングの意味を説明。企業の経営者は組織づくりの指標として、働く側はキャリアパスの選択の基準として、参考にしてみてくださいね。

ウェルビーイングとは

ウェル ビーイング sdgs

ウェルビーイング(well-being)とは、心身が健康で、社会的にも満たされている状態のことです。1946年の世界保健機関(WHO)の憲章前文では、ウェルビーイングが以下のように定義されました。

健康とは、単に病気でない状態ということではなく、肉体的、精神的、社会的にも完全に満たされた状態(well-being)にあること

また、厚生労働省では、ウェルビーイングについて以下のように表記しています。

個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念

つまり、ウェルビーイングとは「社会的な面も含めて、すべての意味で満たされた状態」のことです。「幸福」と訳される場合もあります。

近年、ワークライフバランスや、企業のあり方などが見直されるようになりました。ウェルビーイングはこれからの時代の重要な考え方として、世界的に注目されていますよ。

出典:
WHO(世界保健機関)「健康の定義
厚生労働省「雇用政策研究会報告書(案)

 

ウェルビーイングとSDGsの関係

ウェル ビーイング sdgs

持続可能な社会の実現にむけて、ウェルビーイングとSDGsの達成は切り離して考えられません。どのような関連性があるのか説明します。

ウェルビーイングもSDGs達成も一人では実現できない

ウェルビーイングは一人で実現できるものではありません。個人が充実している状態であるためには、社会自体が満たされている必要があります。たとえば、戦時下では「心身が健康で、社会的にも満たされている状態」からは遠くなってしまいますね。

また、SDGsでは17の目標を掲げ、経済・社会・環境において、世界のさまざまな問題を解決することを目指しています。このことから、SDGsが達成された先にあるのが、ウェルビーイングといえるでしょう。

SDGsが目指すのは地球全体のウェルビーイング

SDGsの原則は「誰一人取り残さない」とされています。例を挙げると、SDGsの目標3は「すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-Being)」です。「Well-Being」という言葉がつかわれていますね。この目標3では、あらゆる年齢の人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進するとしています。

ほかにも、ウェルビーイングに関連するSDGsの目標を挙げてみましょう。

  • 目標1「貧困をなくそう」
  • 目標4「質の高い教育をみんなに」
  • 目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
  • 目標8「働きがいも経済成長も」
  • 目標10「人や国の不平等をなくそう」

上記のようなSDGsの目標は、まさにウェルビーイングにつながる考え方です。SDGsが目指すものは、地球全体のウェルビーイングといえます。

SDGsについては以下の記事でわかりやすく説明していますので、参考にしてみてください。

いまさら聞けないSDGs!17の目標を身近な事例を用いてわかりやすく解説します

 

日本のウェルビーイングの現状

ウェル ビーイング sdgs

日本のウェルビーイングは前向きな取り組みが見られる一方で、発展途上なところもあるのが現状です。

厚生労働省は職場でのストレスチェックを義務化

政府の取り組みとしては、厚生労働省の労働安全衛生法が挙げられます。そこでは「職場における労働者の安全と健康の確保」や「快適な職場環境の形成促進」を規定。2014年の改正では、50人以上の労働者がいる事業所に、毎年ストレスチェックを義務づけるなどの対策をとっています。

ストレスチェックでは、仕事量や職場の雰囲気などもチェック項目です。各事業所は結果を労働基準監督署に報告する必要があります。働く側としては、職場の環境が良好ならウェルビーイングに近づけますね。

出典:厚生労働省「労働安全衛生法」「ストレスチェック制度導入ガイド

日本の幸福度は先進国のなかで最下位

一方で、2022年に国連が発表した世界幸福度ランキングによると、日本は世界54位。先進国のなかでは幸福度が最も低いという結果でした。幸福度が高い国はライフワークバランスが整い、人生の自由度が高いのが特徴です。それに比べて、日本はストレス社会といわれています。

日本では個々の事情にあった働き方ができる労働環境は、まだ充分といえないのが現状です。学歴やジェンダーなどによって、働き方に影響する場合があるのも課題となっています。日本ではウェルビーイングの実現に向けた取り組みが、ますます重要視されるでしょう。

出典:「World Happiness Report 2022

企業がウェルビーイングに取り組むメリット

ウェル ビーイング sdgs

今や世界中で多くの企業が従業員のウェルビーイングに取り組んでいます。グローバル企業では、Googleやイケアなど。国内では楽天や味の素、アシックス、東急などが挙げられますよ。企業がウェルビーイングに取り組むメリットを見てみましょう。

生産性を向上できる

従業員が働きやすい環境は、個々のモチベーションアップにつながります。仕事の質やスピードが上がり、生産性の向上につながるでしょう。また、人は満足度の高い環境で働くと、創造性が高まるという調査結果もあります。

出典:
積水ハウス「企業における従業員の幸福度の重要性
ITOKI「創造性の高い組織が実践する8つの作法:後編

優秀な人材を確保できる

ストレスの少ない職場環境を整えられると、優秀な人材の確保につなげられます。従業員の満足度を上げるためには、環境や労働条件を整備し、良好な人間関係を築ける組織づくりが必要です。昨今は自分らしい働き方ができるかも重視されています。

従業員が長く働きたいと思える企業なら、離職率も下がるでしょう。

出典:厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況

企業価値を上げられる

ウェルビーイングに取り組めば、従業員や社会を大切にする企業として評価されるでしょう。ウェルビーイングの社会的な意義は年々高まっています。経済産業省でも優良な健康経営を実践している法人を「健康経営優良法人」として認定し、支援していますよ。

出典:経済産業省「健康経営優良法人認定制度

 

働く側がウェルビーイングに取り組む企業を選ぶメリット

ウェル ビーイング sdgs

仕事は個人の幸福度に影響を与えます。就職するとき、もちろん給与・報酬は検討材料になりますが、働きやすさもチェックすべきポイント。働く側がウェルビーイングに取り組む企業を選ぶメリットについて説明します。

ワークライフバランスを整えられる

従業員のウェルビーイングを高めようとする企業なら、自分にあった働き方ができるでしょう。たとえば、テレワークやフレックスタイム制度が導入されていれば、働き方の自由度が上がります。また、豊富な福利厚生を利用できると、プライベートも充実させられますね。

能力を発揮しやすい

心身ともに満たされた状態で仕事ができれば、自分の能力を最大限に発揮できます。ウェルビーイングを意識する企業には、個々が主体的に達成感をもって働ける場が用意されているはずです。また、経営側とビジョンが共有されるため、主体的に仕事に取り組めるという利点もあります。

成長できる

常に成長していけるのもメリットです。ウェルビーイングを目指す企業は、従業員の成長を支援するために、研修制度を整えていると考えられます。多くの優秀な従業員と共に、さまざまな刺激を受けて働けるのも魅力です。

良好なコミュニティのなかで働ける

良好なコミュニティのなかで働けるのもメリットになります。人間関係は、場合によっては職場の大きなストレスになることも。ウェルビーイングに配慮する企業は、従業員が働きやすい組織づくりを目指します。風通しのよい人間関係で仕事に向かえれば、精神的に安定して仕事にうちこめますね。

ウェルビーイングとは、健康面だけでなく、精神的、社会的にも満たされている状態。広い意味で幸せをあらわす言葉です。ウェルビーイングは、これからますます求められる価値観になるといわれています。個々の幸福度が社会全体の幸せにつながる考え方は、SDGsが目指すところでもありますね。ウェルビーイングという概念を通して、仕事のあり方や、幸せとはなにかについて考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

ライター

Greenfield編集部

【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。