絶滅危惧種とは
絶滅危惧種とは、生息している数が減少していて、絶滅の可能性が高い野生生物のことを指します。絶滅は自然の摂理であり、避けられないもの。地球の歴史のなかでも、種の絶滅は繰り返されてきました。
しかし、今、自然界では考えられないスピードで絶滅が危惧される種が増えており、世界的に問題になっています。
環境省によると、1975年以前は1年間に絶滅する種数は1種以下でした。ところが、1975年~2000年の間では、1年間に絶滅している生きものは4万種にものぼるとされています。かつてないスピードで絶滅する種が増えているということです。
生きものは自然のなかで密接につながっています。ひとつの生きものの絶滅によって生態系のバランスが崩れ、 自然環境全体に大きな影響を与えてしまうのが問題。そのため、生きものの絶滅回避に向けた取り組みが世界中でおこなわれています。
出典:環境省「日本の絶滅危惧種と生息域外保全」
レッドリストとは
レッドリストとは、絶滅の可能性が高い野生生物をリストにまとめたものです。1964年、「IUCN(国際自然保護連合)」が、絶滅危惧種について国際的に調査してまとめたものがはじまり。現在は各国や各地域で独自のものもつくられています。
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリスト
2021年のIUCNのレッドリストによると、37,400種以上が絶滅危惧種に選定されています。
IUCNのレッドリストは、世界共通の絶滅危惧種のリストとされ、もっとも包括的な情報源です。単に野生生物の生息状況を示したリストという以上に、生物の多様性を守る保全活動への強力な指針となっています。
出典:IUCN「RED LIST」
日本における環境省のレッドリスト
日本でも、ICUNが作成したレッドリストの評価基準に基づいて、環境省のレッドリストが作成されています。
環境省の「レッドリスト2020」によると、日本国内の絶滅危惧種は合計3,716種。「レッドリスト2019」と比較すると、40種も増えています。日本では確認されているだけで、生存している生物の種類は9万種以上。しかし、年々その多様性が減少しつつあります。
出典:
環境省「レッドリスト」
環境省「第6章 自然環境の保全と自然とのふれあいの推進」
絶滅危惧種が増える5つの原因
絶滅危惧種が加速度的に増加している原因は、私たち人間の活動によるものです。私たちは生きていくうえでさまざまな活動をおこないます。その活動がどのように野生生物に影響を与えるかをみていきましょう。
①開発による環境の変化
人間の生活を豊かにするために、森林地の開発を過剰におこなったことが原因で、本来の野生動物の生息地が奪われています。
森林地以外でも、身近なところでは水田の開発が進み、水路が整備されたためにメダカの生息が困難に。1999年に野生メダカは絶滅危惧種に指定されました。
②農薬や化学物質による汚染
農薬などの化学物質は野生生物が死んだり、脆弱化したりする原因のひとつです。また、生活排水などで生息地が汚されて、住みかを奪われることもありますね。
化学物質には、自然環境のなかで分解されにくいものがあります。時間をかけて生態系に悪影響を及ぼすことが心配されていますよ。
③乱獲・密漁
希少価値の高い野生動物は、剥製や装飾品、漢方などとして高額で売買されます。そのため、乱獲や密猟がおこなわれ、絶滅の重大な原因となりました。
たとえば、二ホンカワウソは、大正から昭和にかけて良質の毛皮を目当てに乱獲されて激減。1979年に目撃されたのが最後でしたが、2017年に対馬で2匹生息していると環境省が発表しました。その後も目撃情報はあるものの、確証がなく、いずれにしても絶滅の危機にあると考えられています。
④外来種のもち込み
外来種のもち込みは、もともとあった生態系を破壊することにつながります。外来種がその土地で野生化し、天敵がなく大繁殖すれば、在来種の住みかを奪ってしまいますよね。
私たちが普段目にしているタンポポは、その多くが外来種のセイヨウタンポポです。セイヨウタンポポは、明治初期に北海道に移住してきたアメリカ人によって、食用として導入されたといわれています。それ以後、繁殖力の強さから、在来種のタンポポは生息しにくくなってしまいました。
また、日本各地の湖沼で在来種の魚を激減させたのは、ブラックバス。1925年に神奈川県・ 芦ノ湖に放流されたのをきっかけに、在来種の生態系を脅かしています。
出典:環境省「ぼくたちのこと知ってる?」
⑤地球の温暖化
地球温暖化による気候変動が進み、さまざまな生きものの生息環境に変化が起こっています。
1980年代以降、小規模なサンゴの白化が世界各地で頻発。海水温度の上昇が関係すると考えられ、地球温暖化における深刻な問題のひとつです。1997年から翌年にかけては、サンゴが白くな る現象(白化)が世界中のサンゴ 礁で発生。沖縄県でも1998年に広範囲で報告されました。
ほかにも気候変動による豪雨や干ばつの影響もあり、絶滅危惧種は急速に増加しています。
出典:環境省「いのちはつながっている」
絶滅危惧種を守るために私たちができること
これ以上、絶滅危惧種を増やさないために、私たちができることはたくさんあります。
省エネルギーに取り組む
省エネルギーのために、まずは身近なところから、節電を心がけてみましょう。電力消費は二酸化炭素の排出量を増やし、地球の温暖化の原因になっています。また、地産地消でも、輸送に必要なエネルギーの削減ができますね。
プラスチックゴミを減らす
プラスチックゴミを削減するのも、大切な取り組み。プラスチックゴミが海に流れこむと、海洋生物がからまったり誤飲したりして、死に至ることがあります。
環境に配慮した製品を選ぶ
リサイクル品やプラスチックフリーの商品を利用するのも方法です。また、有機農業で生産されたものを選んだり、エシカルファッションを取り入れたりするなども環境にやさしい選択ですね。
ペットや外来種を自然に放さない
ペットや外来種を自然のなかに放すと、その地域にいる生きものに影響を与える場合があります。子孫を残して定着すれば、生態系の破壊につながってしまうでしょう。
自然とふれあう
身近な自然を体験し、生きものに関心をもつことも大切です。生態系について理解を深められるだけでなく、環境保全への意識も高められますよ。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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