映画には、ときに人生の方向さえ揺さぶる力があります。スクリーンに広がる川や森、砂漠や海。自分もその場所に立ってみたいと思ったことはありませんか?この記事では、海外トレッキングをライフワークにする筆者が旅心やアウトドア欲をかき立てられると同時に、自然や環境との向き合い方をもう一度考えさせてくれた名作10本を紹介します。

旅心を刺激する映画5選

アウトドア×映画

旅に出たいと強く思わせてくれる映画には、不思議な力があります。登場人物の歩みや景色を追いかけるうちに、自分も外へ踏み出したくなる気持ちが芽生えてきます。

私にとってこれから紹介する映画は、どれもただの娯楽ではなく、外の世界へ背中を押してくれた作品です。これまで観た旅映画の中でも、とくに心を強く揺さぶり、背中を押してくれた5本を紹介します。

イントゥ・ザ・ワイルド|大自然に挑む自由への旅

公開:2007年
制作国:アメリカ
監督:ショーン・ペン
原題:Into the Wild

【あらすじ】
裕福な家庭に育った青年クリストファーは、卒業後すべてを捨てて放浪の旅に出ます。向かったのは文明から遠く離れたアラスカの荒野。彼が探し求めたのは「社会に縛られない自由」でした。実話をもとにした物語で、旅の中での出会いや選択が彼の人生を形づくっていきます。

【映画の魅力】
壮大な山並みや草原、静けさに満ちた映像は圧巻。文明から離れて生きようとする姿は、美しいだけでなく厳しさも含めて「自然と人との距離」を考えさせてくれます。

【筆者コメント】
とくに印象的だったのは、クリストファーが氷の川を渡ろうとする場面。無謀に見えても、自分の選択に身を投じる覚悟に胸を打たれました。この映画は「ただ自然に触れる」以上に、自然の中で自分を確かめてみたい」と思わせてくれる作品です。

わたしに会うまでの1600キロ|ひとりで歩くパシフィック・クレスト・トレイル

公開:2014年
制作国:アメリカ
監督:ジャン=マルク・ヴァレ
原題:Wild

【あらすじ】
母の死と離婚をきっかけに人生が崩れた女性シェリル・ストレイド。自分を立て直すため、全長約1,700kmに及ぶパシフィック・クレスト・トレイルを独りで歩く決断をします。険しい山岳地帯や乾いた砂漠を越えながら、孤独と過去の傷に向き合い、少しずつ再生への道を見いだしていく実話に基づく物語です。

【映画の魅力】
テントを立てるのに苦労し、重すぎる荷物を背負って歩く姿は決して美化されず、リアルに描かれています。自然は癒しであると同時に、弱さと向き合うための厳しい試練でもあることを感じさせられます。

【筆者コメント】
私自身も不安や迷いを抱えながら旅に出た経験があります。歩き続けることでしか見えない景色があるのだと、この映画が教えてくれました。「不完全なままでも進んでいい」—。観るたびにそんな勇気を与えてくれる作品です。

モーターサイクル・ダイアリーズ|バイクで南米を駆け抜ける青春

公開:2004年
制作国:アルゼンチン・チリ・ペルー・ブラジル合作
監督:ウォルター・サレス
原題:The Motorcycle Diaries

【あらすじ】
23歳の医学生エルネスト・ゲバラ(のちの“チェ・ゲバラ”)は、友人と共に中古バイクで南米大陸縦断の旅へ。アンデス山脈やアマゾンを巡る道中で、美しい自然と同時に社会の現実に触れ、彼の人生観は大きく変わっていきます。

【映画の魅力】
果てしない荒野、山岳地帯、アマゾンの濃密な森。自然の美しさと社会の現実が対比される映像は圧倒的で、旅の意味を問いかけます。

【筆者コメント】
バイクが壊れて歩き始める場面に、旅の本質を見たように思います。私自身も南米ボリビアのウユニからアタカマへ向かう途中で車が故障し、星空に包まれた夜を過ごした経験があります。「不便さの中にこそ豊かさがある」と思わせてくれたのは、この映画の視点があったからかもしれません。

スタンド・バイ・ミー|少年たちの小さな冒険

公開:1986年
制作国:アメリカ
監督:ロブ・ライナー
原題:Stand by Me

【あらすじ】
1950年代の小さな町。仲良しの少年4人は、行方不明になった同年代の遺体を探すため線路沿いを旅します。子どもだけの冒険は、友情、勇気、そして大人になることへの不安を映し出します。スティーヴン・キングの小説を原作とした、青春ロードムービーの金字塔です。

【映画の魅力】
自然の中を進む彼らの姿は、無邪気さと危うさを同時に映し出します。線路橋を走るシーンは、子ども時代の冒険心を象徴する名場面です。

【筆者コメント】
ラトビアの小さな村で夏至祭に迷い込み、見知らぬ人から花冠を渡された夜。焚き火を囲んで「ここにいていい」と思えた瞬間、この映画の少年たちの冒険と重なりました。人生の節目に新しい意味を帯びて迫ってくる作品です。

リバー・ランズ・スルー・イット|川と釣りと家族の物語

公開:1992年
制作国:アメリカ
監督:ロバート・レッドフォード
原題:A River Runs Through It

【あらすじ】
モンタナ州の美しい自然を背景に、厳格な牧師の父と対照的な兄弟の成長と絆を描いた物語。フライフィッシングを通して描かれるのは、自由と規律、家族愛、そして人生の儚さです。

【映画の魅力】
モンタナの清流を舞う釣り糸と光のきらめきが、人生の流れや家族の絆を象徴するように描かれています。自然を美しく切り取るだけでなく、川そのものが“生き方”を語る存在として映し出されており、静かな時間の中に深い余韻を残します。

【筆者コメント】
便利さに慣れた日常から離れたとき、不便さを受け入れることで得られる豊かさがあることを教えてくれました。自然と共に過ごす時間の尊さを実感させてくれる作品です。

美しさの裏にある自然の現実を映す映画5選

アウトドア×映画

自然に惹かれて旅に出るほど、その美しさが永遠ではないことに気づかされます。海や森、氷河の景色に胸を打たれる一方で、壊れていく現実も突きつけられることも。

ここで紹介する5作品は、筆者に「このままでは失われてしまう」という危機感を与えてくれました。同時に、「守るために何ができるか」を考えるきっかけにもなったのです。

不都合な真実|気候変動を知るきっかけに

公開:2006年
制作国:アメリカ
監督:デイビス・グッゲンハイム
原題:An Inconvenient Truth

【あらすじ】
元アメリカ副大統領アル・ゴアが、地球温暖化の現状を科学的データと映像で解説したドキュメンタリー。世界中に環境問題の危機意識を広めるきっかけとなりました。

【映画の魅力】
氷河崩壊の映像や温度上昇のグラフは圧倒的な説得力を持ち、「未来」ではなく「現在」進行形の問題であることを突きつけます。

【筆者コメント】
この映画を観てから、旅先で空や海を目にするたび「この風景を未来に残したい」と思うようになりました。環境問題への第一歩に最適な作品です。

地球が壊れる前に|世界を旅して見る環境危機

公開:2016年
制作国:アメリカ
監督:フィッシャー・スティーヴンス
原題:Before the Flood

【あらすじ】
俳優レオナルド・ディカプリオが国連平和大使として世界各地を訪問。氷河、熱帯雨林、島嶼国家などを旅し、気候変動がもたらす影響を取材したドキュメンタリーです。

【映画の魅力】
美しい景色とその背後にある破壊の現実を同時に描きます。氷河が崩れ落ちるシーンの迫力は、自然の壮大さと危機を強烈に印象づけるでしょう。

【筆者コメント】
憧れの風景を「守りたい」と心から思うようになった作品です。旅は観光だけではなく、環境に対する責任も伴うのだと気づかされました。

オーシャンズ|海の神秘と人間の影響

公開:2009年
制作国:フランス
監督:ジャック・ペラン、ジャック・クルーゾー
原題:Oceans

【あらすじ】
地球の70%を覆う海を舞台に、多様な生き物を記録した海洋ドキュメンタリー。壮大な映像美で海の神秘を映し出す一方、人間の活動による環境破壊の現実も描かれます。

【映画の魅力】
海の美しさに圧倒された直後、汚染の現実を突きつけられる構成が印象的。映像の落差が強いメッセージを放ちます。

【筆者コメント】
海を「きれい」と眺めるだけでなく「守る」という視点を持つようになりました。旅先の海を見る目を変えてくれた作品です。

モアナと伝説の海|自然と共生する物語

公開:2016年
制作国:アメリカ
監督:ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ
原題:Moana

【あらすじ】
南の島に暮らす少女モアナが、海に導かれて航海に出る冒険ファンタジー。自然との共生や循環が、ディズニーらしい鮮やかな物語で描かれます。

【映画の魅力】
海そのものがキャラクターとして登場し、モアナを助け、導きます。自然は敵ではなく共に生きる存在あることを伝えています。

【筆者コメント】
子どもにも安心して観せられる作品ですが、大人の自分にも自然との向き合い方を考えさせてくれた1本です。旅先で海を眺めると、この映画のメッセージが蘇ります。

2040 地球再生のビジョン|希望ある未来を描くドキュメンタリー

公開:2019年
日本公開日:2025年1月11日
制作国:オーストラリア
監督:デイモン・ガモー
原題:2040

【あらすじ】
監督デイモン・ガモーが、自分の娘の世代に残したい未来を思い描きながら、世界各地の再生可能エネルギーや農業の取り組みを取材。環境問題を「恐怖」ではなく「希望」の視点から描いたドキュメンタリーです。

【映画の魅力】
緑豊かな都市や子どもたちの未来への語りが印象的。持続可能な社会を描きながら「変えられる未来」があることを提示してくれます。

【筆者コメント】
旅先のオーストラリアで観たとき、心から「まだ間に合う」と思いました。希望を持つだけで日々の行動が変わる。小さな一歩を踏み出したくなる作品です。

映画は娯楽にとどまらず、旅へと導き、生き方や自然との向き合い方を考えさせるきっかけとなってくれる力を持ちます。心が揺さぶられた瞬間こそが行動の第一歩。観終わって胸が高鳴ったなら、それは旅の始まりです。小さな散歩も、大きな旅も、自然はきっと応えてくれることでしょう。

Ryoko

ライター

Ryoko

ひとり海外旅行と海外トレッキングを愛し、自然や文化に触れる旅をライフワークにするライター&エディター。猫と音楽にも目がなく、心惹かれる音や風景を文章で切り取るのが得意。国内外のフィールドで得た体験を、読者と共有することを楽しみにしている。