「はちみつは健康によい」というイメージを持っている方は多いと思います。具体的にはちみつはどのような効能があるのでしょうか。世界中ではちみつの効能を見直す動きが加速しているなか、食生活にはちみつを加えてみませんか。

欧米の政府がはちみつの使用を推奨!なぜ?

蜂は西洋では勤勉さと秩序のシンボル!貴族の紋章にも用いられています

欧米では、はちみつの効能を見直す動きが目立ちます。なぜはちみつが注目を集めているのか、理由を見ていきましょう。

見直されるはちみつの抗菌作用

理由は、はちみつがもつ抗菌作用。研究によって消炎や造血の効果が認められつつあり、はちみつに関する科学的・医学的研究が次々に発表され、効能が再評価されています。

過剰な抗菌薬摂取を避けるためにはちみつを!

世界保健機関(WHO)や日本政府は、現代人の抗菌薬の過剰摂取に警鐘を鳴らしています。

感染症にかかりさまざまな薬剤を摂取し続けると、抗菌薬が効きにくくなる「薬剤耐性」を持つ菌が増加。薬では病気が治らないというケースが増えています。

薬剤耐性の拡大を防ぐためには、普段から感染しにくい体を作ることが大切。抗菌力の高いはちみつは、健康を維持するために有効な食材です。
(注:はちみつがすべての菌の感染を予防する万能薬という意味ではありません)

数万年から人類の身近にあったはちみつ、自家製も人気

田舎のセカンドハウスで養蜂にいそしむイタリア人

はちみつは、もっとも長い歴史を持つ食材の一つとされています。歴史のなかではどのような存在であったのでしょうか。楽しいエピソードを紹介します。

日本でも世界でも古代から存在したはちみつ

スペインのアルタミラ遺跡にはすでに、はちみつを採取する様子が描かれています。つまり1万5000年ほど前から人間は、はちみつを口にしていたことがわかります。

ゲルマン民族は、結婚すると一定期間はちみつを使った飲み物を引用する風習があり、これが「ハネムーン」の語源になったという説も。

日本では643年に大和の三輪山で養蜂を行っていたことが記されていて、薬用や神様への捧げものとして珍重されていました。

余暇として愛される養蜂

バカンス文化のある国では、週末を過ごす田舎のセカンドハウスで養蜂を行う方が少なくありません。保存性の高いはちみつは、友人や家族におすそ分けすると喜ばれます。

はちみつは田舎だけでなく、都会でも製造が可能。銀座では2006年から「銀ぱち」というプロジェクトを実施し、ビルの屋上で養蜂を行っています。皇居や日比谷公園の花々の蜜が原料のはちみつ、メイド・イン・銀座として人気を博しています。

はちみつの効能を具体的に知ろう!

チーズのグリルはちみつ添え。イタリアではチーズとはちみつの組み合わせは前菜によく登場します

ハチミツには、多くのビタミン、ミネラル、酵素やポリフェノールが含まれています。はちみつを摂取することで、具体的にどのような効能が期待できるのでしょうか。はちみつの効能を見てみましょう。

抗菌作用

古来はちみつは、抗菌作用や殺菌作用があることで知られてきました。ミツバチの酵素によって生まれるグルコン酸が、細菌の増殖を抑えるためです。

免疫力の向上

体内で老廃物や異物を捕食する細胞をマクロファージといいますが、はちみつの過酸化酸素によって引き出されるマクロファージは、免疫作用をもっています

咳止め作用

2014年に報告されたさまざまな研究によれば、はちみつは咳を止める作用があることが記されています。
またはちみつを摂取することで、睡眠の質が向上したケースもありました。

GI値が低い甘味料である

普段から健康に留意している方なら、GI値(グリセミック指数)という言葉を聞いたことがあるかもしれません。食品を摂取した後に血糖値がどのくらい上がるのかを数字にしたものがGI値で、数値が高いほど血糖値は上昇します。

砂糖のGI値が68であるのに対し、はちみつは55。アリゾナ大学の研究では、低GI値の食材にこだわることで、2型糖尿病や冠状動脈性心臓病のリスクを下げられると報告されています。

美肌効果

はちみつには傷を治す効果があります。アミノ酸やポリフェノールなど、美容に役立つ成分を持っているためです。はちみつ専門店のサイトでは、はちみつを唇に塗布する乾燥対策をおすすめしているところもあります。

食生活にはちみつを用いるために

ドライフルーツとはちみつが主原料のイタリアのクリスマスシーズンに食べるお菓子「パンジャッロ」

さまざまな効能をもつはちみつですが、独特の甘さが苦手な方もいるでしょう。普段の食生活にはちみつを取り入れるヒントを紹介します。

はちみつを使ったレシピのアイデア

はちみつは身近なお菓子や料理に使われています。たとえばカステラ。ふっくらした食感やまろやかな甘さを引き出すために、はちみつを使うのがおすすめです。

冬ならば焼きリンゴにとろりとはちみつをトッピングすれば、体だけではなく心もほっこり。週末の朝食にフレンチトーストを作り、はちみつをかけても素敵です。お肉料理ならばジンジャーソテーのアクセントにもなります。

また、はちみつは自家製ドリンクでも大活躍。定番のレモンとの組み合わせや旬の果物・野菜のスムージーに加えても美味です。体調がイマイチで紅茶やお茶を飲むと胃に負担がかかりがちなときは、ハーブティーにはちみつを加えるのがおすすめです。

はちみつの種類と癖

一口にはちみつといっても、さまざまな種類があります。

日本では比較的クセのないアカシアや柑橘類のはちみつが人気。海外では色も風味も上品なクローバーのはちみつが好まれます。

そばの花や栗の花のはちみつは色が濃く、独特の匂いがあります。料理に加えて加熱してもなかなか香りが消えないため、苦手な方にはおすすめしません。

はちみつに使用に関する注意

1歳未満の赤ちゃんにはちみつを与えると乳児ボツリヌス症のリスクがあるため、注意が必要です。

また、はちみつの効能を盲信するのは危険です。体調が悪いときは、適宜、医師の診察を受けましょう。

世界各国で、はちみつの効能を見直す動きが加速しています。さまざまな研究から、はちみつの殺菌作用や免疫機能向上効果が再認識され、はちみつの摂取が推進されています。もちろん、はちみつは万能薬ではありません。好みのはちみつを適量摂取して、健康や美容に役立てましょう。

参照元:
UK.Goverment「Surviving the cold and flu season without antibiotics」

アメリカ国立衛生研究所「Honey: its medicinal property and antibacterial activity」

世界保健機関「Antimicrobial resistance」

J-stage「ハチミツの持つ抗菌作用とその養蜂にける応用」

米国国立医学図書館「Honey for treatment of cough in children」

アリゾナ大学「Is honey the same as sugar?」

ginpachi

北海道科学大学「GI値とは?食品のGI値や体に与える影響をわかりやすく解説」

厚生労働省「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから」

平凡社世界大百科事典「蜂蜜」

ライター

cucciola

ヨーロッパの片田舎で家族と3人暮らし。

学生時代に都会の生活で心を病んで以降、スローライフとスローフードで心身の健康を維持。気が向くまま、思いつくまま、風まかせの旅行が多数。

アートと書籍を愛するビブリオフィリアで1人の時間が大好き。