ダイビングスーツのロクハンとは?
おしゃれなウエットスーツを着ているインストラクターが多いなか、全身黒ずくめのフードがついたラバータイプのウエットスーツを着ている現地ガイドやインストラクターも少なくありません。
それが通称「ロクハン」と呼ばれるダイビングスーツです。ベテランダイバーの間では「カブリ」や「リャンスキ(両面ラバーの意味)」 と呼ばれることもあります。
漁師や海女さんが素潜り漁をするとき、長く水中にいられるよう暖かさを重要視して作られたウエットスーツがロクハンの始まりといわれています。
ただし、ロクハンとは6.5mmの生地の厚さのことを指しているので、真っ黒のラバーでなくても、6.5mmの厚さがあるウエットスーツならすべてロクハンということになります。
ロクハンの魅力
ロクハンは厚さ5mm以下のウエットスーツと比べると単純に生地が厚いので断熱材としての能力がとても高くなります。
片面あるいは両面がラバーになっており、水や風を通さず寒さをシャットアウトしてくれるので、とくにエキジット後の暖かさは段違いです。
また、裏面をラバーにすれば生地が皮膚にぴったり密着するので、水の出入りを最小限に止めることができ、体温で温められた水で体を包み込みながら、冷たい水の侵入を防いでくれます。
1度、ロクハンを着たらその快適さの虜になってしまうことでしょう。
ロクハンは扱いが難しい?
暖かくて快適なロクハンですが、一方でデリケートな部分を併せ持っています。
まず、ラバーは脱着時に爪を立てたり、強く引っ張ったりすると亀裂が入りパックリと裂けてしまうことがあります。
とくに、脇、脇腹、股の部分などは裂けやすく、着底時に膝を付くと少しずつ擦れて穴が空いてしまうこともあります。
ロクハンの扱いに慣れてしまえばなんてことはないのですが、その扱いの大変さから「ロクハンはスキルが高いベテランダイバー向け」といったイメージが浸透しています。
逆にいえば、ロクハンを着るだけで上級者っぽいイメージを醸し出せるカッコよさがあるともいえるでしょう。
ロクハンダイビングスーツの選び方
はじめてロクハンを選ぶときに知っておきたいポイントと購入の仕方を見てみましょう。
ロクハンのデザイン
基本的にロクハンは「ロングジョン」と呼ばれるスーツと、ファスナーが付いていない「カブリ」と呼ばれるジャケットを重ねて着る、ツーピースタイプのウエットスーツです。
ロングジョンはオーバーオールのような肩が出たデザインで、水温が高いダイビングスポットならこれだけでダイビングが可能ですが、上にジャケットを着ることで体幹部分に13mmの防寒壁を作り出すことが可能です。
また、カブリはファスナーが付いていないためデザインのため、スーツ内への水の侵入が少なく、オプションでフードや股掛け(ビーバーテール)を付ければ真冬でもダイビング可能な温かさがあります。
ロクハンの素材
ロクハンは6.5mm厚の生地をつかっていますが、ジャージ加工の有り無し、ラバーの硬さの違いでいくつかの種類に分けられます。
まず、「両面スキン」は裏表がラバーになっている素材で、水も吸わず風も通さないため1番暖かいとされる生地です。
ただし、強い力やダメージに弱く破けやすいというデメリットがあるため、脱着時はスーツ表面に水をかけるなどして摩擦を減らしながら脱着する必要があります。
そして、「片面ジャージ」は片面がラバー、もう片面はジャージを貼り付け加工した素材で 、耐久性は高くなりますが水を吸うためダイビング後は気化熱で少し寒いのがデメリットです。
また、素材にはソフトラバーとハードラバーの2種類があります。
ソフトは伸びがよく脱着がしやすいのでビギナーにおすすめで、ハードラバーは生地が硬くへたりにくいのため、ガイドやインストラクターなど毎日のようにダイビングをする人に向いています。
ロクハンを購入するには
基本的に、ロクハンにフルオーダーメイドで製作します。
既製品はありませんので、ロクハンの取り扱いのあるダイビングショップでデザインと素材を指定して、スーツ工場に注文しなければいけません。
ロクハンを完成するまでの流れを見てみましょう。
1.素材を選ぶ
両面スキンか片面ジャージか、ソフトラバーかハードラバーか、まずは使用する素材を選びます。
片面ジャージを選ぶなら表裏どちらをジャージ面にするかも決めましょう。
2.デザインを選ぶ
基本的なロクハンのデザインはロングジョンとカブリのツーピースですが、好みに合わせて詳細なカスタムオーダーが可能です。
ロングジョンは肩部にベルクロをつけるのがポピュラーですが、ネック部分を広くしてベルクロ無しでも着られるようにしたデザインも可能です。
ジャケットはフードと股掛け(ビーバーテール)の有無を選ぶことができ、股掛け部分を引っかけ金具にするかベルクロにするかを選べます。
基本的に手足首はファスナーの無い切りっぱなし加工ですが、着やすさのためジャケットのお腹下部にショートファスナーをつけることが多くなります。
3.採寸をする
素材とデザインが決まったらメジャーを使って体のサイズを細かく測ります。
ひとりでは採寸できないので、必ず採寸の方法を知っているダイビングショップのスタッフに正しく測ってもらいましょう。
4.ロクハン完成
スーツ工場の混雑具合にもよりますが、通常ならオーダーしてからおよそ2週間程度でスーツが完成します。
また、ロクハンはすぐ縮むので大きめにつくったほうが良いといった噂がありますが、現在は数か月寝かせた生地を使用して製作しているので、以前のように縮むことは少ないでしょう。