スムーズな潜降のコツ
苦手な人が多いダイビングスキルのひとつが「潜降」です。
とくにビギナーのうちは緊張で息を吐きれていないとスムーズに潜降できない場合が多く、気持ちばかり焦ってしまうと余計に呼吸が乱れ、耳抜きもうまくできなくなってしまうこともあります。
スムーズな潜降のコツは、エントリーから潜降、耳抜きまでを一連の流れで行うことがポイントです。
それぞれのスキルのポイントを見ていきましょう。
エントリーのコツ
エントリーには大きく分けて「ビーチエントリー」と「ボートエントリー」の2つのスタイルがあります。
ビーチエントリー
ビーチといっても砂浜とは限らず、スロープが設置されていたりゴロタ石だったりとさまざまです。
マスクを先に装着し、足元が不安定なところではレギュレーターを咥えながら泳ぎ出せるくらいの場所まで歩いて、波が穏やかな時を見計らってフィンを履きます。
波があるときは体を横に向けてバディ同士で支え合いながら、波が穏やかになるタイミングを見計らって泳ぎ出すのがポイントです。
ボートエントリー
沖縄や海外などではボートダイビングが主流となり、ボートのタイプに合わせて「ジャイアントストライドエントリー」または「シッティングバックロールエントリー」でエントリーします。
ジャイアントストライドエントリーは、船べりから水面まで距離があるときや後部デッキがあるボートで行います。
視線を前に向け足を大きく一歩踏み出すようにエントリーし、着水したら前後に開いた足を閉じるようにフィンをかくと深く沈み込みません。
そして、シッティングバックロールエントリーは、船べりが浅く水面まで距離がないボートでもちいられます。
船べりにやや前かがみに腰掛け、勢いをつけず座ったまま後ろに転がるときれいに着水でき、水中で落ちたままのポーズをキープしていれば自然と浮き上がってきます。
いずれのエントリー方法でも、BCDで浮力を確保し、着水のショックでマスクが飛ばされないように右手で押さえておくことがポイントです。
潜降のコツ
顔を水面にあげているとかえって不安になるため、顔を水面につけて視線を水底に向け、BCDのエアをしっかりと抜きながら足を前後に開きバランスを取りながら大きく息を吐いて潜降を開始します。
この時、長く息を吐き続けると苦しくなってしまうので「少し息を吸って長く吐く」呼吸を意識して、肺を小さく保つようにするのがポイントです。
また、沈み始めには若干のタイムラグがありますが、少しでも沈み始めたらウエイト量は十分です。
ビギナーのうちはブイや船から降ろしたアンカーロープを使い、耳抜きをしながらゆっくりとロープ潜降をするようにしましょう。
ロープを使わないフリー潜降では、水底を見ながら前傾姿勢をとり、足を前後に開いてバランスとスピードをコントロールしながら潜っていきます。
潜降の手順
潜降の手順をおさらいしておきましょう。
- 自分の位置を把握するため、陸に見える地形や建物などを目印にする「山立て」行います。
- レギュレーターを咥え、ダイブコンピューターで潜降開始時間を確認します。
- 潜降サインを出してバディと意思を確認し合います。
- BCDのインフレーターから少しづつエアを抜いて潜降を開始します。
インフレーターを肩よりも高い位置に上げないと、BCD内のエアが抜けないので注意しましょう。
耳抜きのコツ
潜降中、忘れてはいけないのが「耳抜き」ですが、初心者のなかには耳抜きが苦手という人も少なくありません。
スムーズに潜降するためにも耳抜きはしっかりマスターしておきたいところです。
まず、耳抜きは勢いよく行うのではなく、鼻から耳に空気を送り込むようにゆっくりジワジワと行うほうが、耳への負担は少なくしっかり抜けます。
耳抜きは頭が沈みはじめたタイミングから開始し、水圧の変化が大きい浅いエリアほどこまめに行うことがポイントです。
耳抜きが苦手という人は、船上や水面で一度耳抜きを行い、耳管(じかん)を広がりやすくしておくと抜きやすくなります。
また、なかなか耳が抜けない時は深く潜りすぎている可能性があるため、水圧を減らすため少し浅いところに移動してから再度耳抜きをしてみましょう。
耳が抜けないときは
耳がなかなか抜けないときは、次の方法も試してみましょう。
- 首筋や肩が硬くなっていると耳抜きがしづらいので、 潜る前や潜降中に耳裏から首筋にかけて軽くマッサージをしてみましょう。
- 片耳だけが抜けない時は、抜けないほうの耳を上に向けると抜けやすくなります。
- マスクが顔に合っていないとちゃんと鼻をつまめていないことがあるので、両手の人差し指を使ってしっかり鼻をつまんでみましょう。
よくある潜降時のトラブル
よくある潜降時のトラブルと解決方法を見てみましょう。
息を吐いてもまったく沈まない
肺のエアをすべて吐き切ってもまったく沈んでいかない時は、単純にウエイトが不足している可能性があります。
そんな時は、インストラクターやガイドを呼んで予備ウエイトをもらい、BCDのポケットに入れてみましょう(※ほとんどのガイドは予備ウエイトを持っています)。
また、水面にうねりなどがあると適正ウエイトでも沈みづらい時があります。
そんな時は、水面からジャンプするようにフィンキックで体を高く持ち上げ、その反動で体が沈むタイミングに合わせて潜降するテクニックもあります。
潜降スピードが速すぎる
潜降スピードが速すぎる場合は、ほとんどの場合はウエイト過多と考えられます。
ただし、水中でウエイトベルトに固定されているウエイトを調整することは難しいので、 BCD内のエアで潜降スピードをコントロールするしかありません。
その場合、水中では腰が下がるなどバランスが取りづらくなるので、水底を蹴らないように十分注意しましょう。
お尻から沈んでしまう
潜降中にお尻から沈んでしまう場合、体勢を立て直そうとしてフィンを動かしてしまうと余計にバランスを崩してしまいます。
そんな時は、足をバタバタせず、体をくるりとひねって体の正面を水底に向けてあげるのが良いでしょう。
スチールタンクを使用している時は、お尻から潜降しがちなので注意しましょう。