ダイビングでトラブルに逢わないために
ダイビングは、バディで潜るのが基本です。
ダイビングでトラブルにあわないためには、バディダイビングの基本を思い出して、ダイビング前はもちろん、ダイビング中でもお互いが安全確認をすることが何より重要です。
また、潜る前にブリーフィングでは、どんなことでもガイドに確認しておくことも大切です。
とはいえ、急に潮流が速くなりバディを見失ってしまったり、思いもよらぬ器材のトラブルでエア切れを起こしてしまったりすることがあるかもしれません。
どれだけ安全を心がけていても、「絶対に安心」ということはないのです。
ですが、事前にしっかりとトラブル対処法のスキルを身につけておけば、いざという時でも落ち着いて行動ができるようになります。
ダイビング中のトラブル対処法をおさらいして、安全にダイビングを楽しみましょう。
ダイビングのケース別トラブル対処法
それでは、ダイビングのトラブル対処法をケース別に見ていきましょう。
1.足がつってしまったときの対処法
水温が低いと体が冷えて筋肉が硬くなり、足がつってしまうことがあります。
予防には、ダイビング前にストレッチでふくらはぎを伸ばしたり、軽くもんで筋肉をほぐして血行をよくしたりしておくのがすすめです。
また、水分不足も足がつりやすくなる原因のひとつで、減圧症のリスクも高くなるので、ダイビング前にスポーツドリンク等で水分とミネラルの補給をしておくこともよいでしょう。
足のつりは筋肉のけいれんが原因なので、ストレッチをすることで痛みが治まってきます。
ダイビング中に足がつってしまった時には、まずは落ち着いて自分でフィンの先端を掴み、膝を伸ばしたままフィンを自分のほうに引っぱるようにしてストレッチしてみましょう。
また、足のつりがひどい時は、無理をせずにバディの助けを借りて足をストレッチしたり、マッサージをしてもらいましょう。
2.マスクに水が入ってきた時の対処法
マスクに水が入り、視界が確保できなくなることで、パニックを起こしてしまうと非常に危険です。
マスクに水が入ってきた時は、落ち着いてマスククリアで対処しましょう。
やり方は、マスクの上部を押さえ上を向き、マスクの下部を少し開いて隙間をつくったら、ハミングするように鼻から息を吐きます。
また、マスク内に水が入ってこないようにするには、自分の顔にフィットしたマスクを使い、エントリー前には必ずマスクのスカート部分に髪の毛がはさまっていないか確認することが大切です。
3.エアがなくなったときの対処法
エア切れは、こまめに残圧チェックすることで防ぐことができます。
しかし、大物との遭遇でつい夢中になってしまったり、流れのきつい場所を逆らって泳いだりしていると、気づいたらエアが残りわずかになってしまっていることがあるかもしれません。
さらに、タンクのバルブからのエア漏れや、オクトパスのフリーフローで通常よりエアの消費が早いこともあります。
もし、残圧が0になっていたら、すぐにバディやガイドにエア切れのサインで知らせて、近くにいるときはエアを分けてもらいましょう。
喉を切るような動作がエア切れのサイン、胸を叩くような動作はエアが少なくなった時のサインです。
バディやガイドから離れてしまって、水面に近い水深のときは、浮上のサインを出してから緊急スイミングアセントをおこなう対処方法もあります。
また、器材をセッティングした時はバルブを開けて残圧をチェックしたのに、ボートでの移動のためバルブを閉め、うっかりそのままエントリーしてしまった…というのはよくある失敗例です。
エントリー直前は、バルブが確実に開いているか、今一度確認してから潜りましょう。
4.タンクが外れてしまったときの対処法
タンクバンドの締め方が緩いと、ダイビング中にタンクがずり落ちてきてしまうことがあります。
器材をセッティングした時に自分でしっかり確認し、さらにエントリー前にバディと確認し合いダブルチェックしておくことが大切です。
万が一、ダイビング中にタンクのバンドが緩んでしまったら、バディにバンドを閉め直してもらうのが1番の対処法です。
また、バディのタンクが緩んでしまった時には、膝を使ってタンクを支えるようにして締め直してあげましょう。
自分ではタンクがずり落ちていることに気づいていない場合もあるので、バディ同士で気をつけるようにしましょう。
5. 流されてしまったときの対処法
潮に流されてボートを見失い、漂流してしまうこともないともいえません。
潮流の強いスポットでは、常にグループから離れないことが大切ですが、もし万が一、流されてしまった時は水面に浮上して助けを呼びます。
フロートを大きく振ったり、ホイッスルを鳴らしたり、とにかく自分の存在を知らせることが重要です。
また、ウエイトさえなければ浮いていられるので、体力温存と浮力確保のためにウエイトを捨ててしまうのもひとつの対処法です。
ただし、あわててウエイトを捨てようとするとベルトが引っかかるかもしれないので、腕を伸ばして体から確実に離してから手を放すようにしましょう。
6.急浮上してしまったときの対処法
中性浮力がうまく取れず泳いでいるうちに、気がついたら水面近くで急浮上しそうになったという経験のあるダイバーも多いのではないでしょうか。
浅瀬に移動するとBCD内の空気が膨張するため、ダイビングの終了間際に急浮上してしまう初心者ダイバーは少なくありません。
急浮上すると、肺の中の空気が膨張し破裂する危険性や、体内の窒素が気泡化して減圧症を引き起こす原因になることもあるので、十分に注意を払う必要があります。
もしダイビング中に、「浮いてきている」と感じたら、速やかに吐く呼吸を意識してBCD内の空気を抜くようにしましょう。
BCDには、通常排気を行うパワーインフレーターのほかにも、肩や腰の部分に緊急時に一気に排気できるバルブもあるので、操作方法を確認しておくことも大切です。
また、下から上がってくるアップカレントに巻き込まれたときは、すぐにBCD内のエアを抜き、頭を下にするように泳ぎつつ横に移動することで、流れから外れる可能性が高いことも覚えておきましょう。
7.ガイドやバディとはぐれてしまったときの対処法
バディとはぐれてしまったときは、「1分間だけ水中で周囲を探し、見つからなかったら浮上する」ことがバディダイビングの基本ルールです。
あちこち動き回るとかえってバディと離れてしまうこともあるので、このルールはしっかりと守るようにしましょう。
ただし、ガイドについて潜る場合は、あまり動き回らずに水中で待機していた方が安全なこともあります。
なぜなら、そのスポットの地形や潮流を知り尽くしたガイドが、迷い込みそうな場所へ探しに来てくれる確率が高いからです。
いずれにしても潜る前に、ブリーフィングでバディとはぐれてしまったらどうするか話し合っておくことが肝心です。
安全ダイビングのための心得
ご紹介してきたトラブル対処法は、万が一のときに必要になるもので、滅多に必要になるものではありません。
しかし、海という自然を相手に楽しむダイビングは、急な環境の変化で、思わぬ事態に遭遇することがないとはいい切れません。
安全ダイビングのためには「自分は大丈夫」と過信しないことです。
ダイビング事故は、ビギナーだけでなくベテランでも遭遇する可能性があるため、1ダイブごとに器材のチェックをしっかり行い、少しでも体調が悪いときはダイビングを中止する勇気を持つことも大切です。
また、セーフティグッズを携行し、必要な時に正しく使えるように日頃から練習しておくことも忘れないようにしましょう。