一切経山について
一切経山は、磐梯山の北東約20㎞、高村光太郎の智恵子抄に登場する安達太良山の北約10㎞の地点にそびえる、火山活動によって形成された山です。
一切経山を含む周辺地域では今も火山活動が続き、麓には気象庁が火山観測局を置いて、「吾妻山の活動状況」として24時間体制で火山情報を発信しています。
現在は、噴火警戒レベル1で、「活火山であることに留意」という状況です。
一切経山の名前は、諸説ありますが、平安時代中期にこの地をおさめていた武将「安倍貞任」(あべのさだとう)が、この山に一切経を埋めたことが由来になっています。
気象庁:火山活動の状況(吾妻山)
火山としての一切経山の歴史
一切経山は、磐梯山の北川に東西にのびる吾妻連峰の一部です。
このエリアでは有史以前から火山噴火がたびたび起こっていて、歴史に残るものでは、1331年頃に、それまでの水蒸気噴火からマグマ噴火に移行した噴火があったと考えられています。
1711年に小規模な水蒸気噴火が発生、さらに1893から1895 (明治26-28)年にかけても小規模な水蒸気噴火がありました。
1893年から1895年にかけて起こった噴火では、噴石にあたるなどして火口付近で地質調査をおこなっていた方が2名亡くなっています。
その後も、1950(昭和25)年と1977(昭和52)年に水蒸気噴火、1996から2006年にかけて火山性微動を観測、2008年11月には噴気を確認しています。
2014年12月、火山性地震の多発により気象庁は噴火警戒レベルを1から2に引き上げ、2015年1月からさらに大穴火口直下での火山性地震が急増しました。
しかし、2016年10月に噴火の兆候がみられないとして噴火警戒レベルを2から1に引き下げています。
2019年5月9日には浄土平観測点の傾斜計が傾斜を観測したことから、再び噴火警戒レベルをレベル1からレベル2に引き上げていました。
こちらも2019年6月17日に傾斜がみられなくなったため、警報を解除して噴火警戒レベルを2から1に引き下げています。
一切経山のおすすめトレッキングコース
鎌沼→姥ヶ原→浄土平
鎌沼は一切経山の南にあり、鎌沼の西側には標高1,700mから1,800mの台地状の草原「姥ヶ原」が広がっています。
鎌沼→姥ヶ原→浄土平のコースは、さまざまな高山植物が観察できるトレッキングコースです。
姥ヶ原から東方向へなだらかな木道を歩くこと約30分ほどで、標高1,600mの浄土平湿原に到着します。
浄土平→一切経山
一切経山への登山は、おもにアクセスがよくて広い駐車場を備えている浄土平がスタート地点になります。
福島駅から浄土平まで、バスで1時間ほどの所要時間です。
浄土平には「浄土平ビジターセンター」があり、周辺の自然や火山活動について模型やパネル写真などでわかりやすく紹介しています。
浄土平にはほかにも、レストランや天文台などがあり、一切経山周辺トレッキングの起点として機能しています。
浄土平駐車場からしばらく湿原の中の木道を歩き、酸ヶ平避難小屋から一切経山への登山道を登ります。
ガレ場を登ると一切経山(標高1,948.8m)の山頂に到着です。
浄土平駐車場から一切経山山頂までの所要時間は1時間半ほど。
山頂からは、「魔女の瞳」と呼ばれる五色沼や、吾妻小富士などの火山活動で形成された美しい大パノラマが満喫できますよ。
一切経山→酸ヶ平→鎌沼
一切経山の山頂から酸ヶ平避難小屋までおりて、今度は浄土平駐車場とは逆の西方向へ木道を進みます。
このあたりの湿原ではミヤマリンドウやワタスゲといった高山植物の花が楽しめます。
しばらく進むと鎌沼が見えてきます。
一切経山の見どころは?
浄土平ビジターセンター
浄土平ビジターセンターは、磐梯吾妻スカイラインの浄土平にあります。
この近くには、気象庁の火山観測局やとても広い駐車場があり、すぐ東に吾妻小富士が見えています。
浄土平ビジターセンターには、吾妻山の自然について模型や写真でわかりやすく解説しています。
また、毎日10時からマルチスライドやハイビジョンで、吾妻山周辺の歴史や自然を紹介する約1時間の番組を上映していますよ。
トレッキング前に予備知識を入れておくと、一味違った視点で景観を楽しむことができますね。
一切経山周辺の温泉「高湯温泉郷」
浄土平の手前、福島市の市街地から磐梯吾妻スカイラインを登った、吾妻山連峰の中腹に高湯温泉郷があります。
高湯温泉郷は、400年以上の歴史がある全国でも有数の高濃度硫黄泉かけ流し温泉です。
濃度硫黄泉は薬効成分が非常に高いとされ、硫黄泉の調査で知られる神林博士によって「全国一の有効温泉」であると評価されています。
うつ病、冷え症、切り傷、関節リウマチ、皮膚乾燥症、疲労回復、健康増進などに改善効果が期待できます。
ライター
Greenfield編集部
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