登山後や日常の階段の上り下りで、膝の内側に違和感や痛みを感じることはありませんか?その痛みの多くは、太ももや股関節などの“使い方の偏り”によって起きています。膝を直接もんでもよくならないのはそのためです。私自身、違和感を湿布でごまかし続けた結果、炎症が長引き半月板のトラブルへ進行してしまいました。あのとき、正しいケアを知っていれば防げたかもしれません。この記事では、接骨院の先生から教わり、実際に回復につながった簡単で継続しやすいセルフケアを紹介します。
下山後や階段でズキッ!それ“内側膝痛”かもしれません

登山の下りや階段を降りるとき、膝の「内側」だけがピンポイントで痛むことはありませんか。平地では問題ないのに、ブレーキをかける動きになると急にズキッとくる――この症状は登山者にとても多く見られます。
多くの人は「膝を痛めた」と考えますが、実は膝関節そのものが壊れているケースは少数です。初期段階では、筋肉の使い方の偏りによって、膝の内側に負担が集中している状態がほとんど。正しく対処すれば悪化を防ぎ、回復させることも十分可能です。
違和感や軽い痛みの段階でケアを始めることが、登山を長く続けるための分かれ道になります。
なぜ膝の内側が痛くなるのか

膝の内側の痛みは「膝の使いすぎ」ではなく、膝に負担が集中する体の使い方が原因です。本来、着地の衝撃は股関節 → お尻 → 太もも → ふくらはぎと分散されます。
しかし、筋肉のバランスが崩れると衝撃の逃げ場がなくなり、最後の関節である膝の内側に負担が集まります。とくに下りでは体重の3〜5倍の力がかかるため、小さな崩れでも痛みとして現れやすくなるのです。
内側が痛む人の共通点
接骨院の先生の見立てでは、筆者の症状は下記のすべてに当てはまっていました。
股関節が硬い
股関節が動かないと、ここで吸収するはずの衝撃を膝が代わりに受け止めます。とくに脚を後ろへ引く動きが小さい人(ハムストリングス※やお尻の筋肉が使えていない)は、着地のたびに膝へブレーキ負荷が集中します。
※ハムストリングス……太ももの裏側にある3つの筋肉の総称
太もも外側ばかり使う
外側の筋肉(大腿筋膜張筋や腸脛靭帯)が優位になると、膝が外へ引っ張られます。その結果、関節の内側が圧迫され続け、炎症が起きやすくなります。筆者もまさにこのタイプで、登山後は前ももと外ももばかり張っていました。「よく歩いた証拠」と思っていましたが、実は膝へ負担を集めているサインでした。
O脚傾向
O脚では立っているだけでも膝の内側に荷重が集まります。そこに下りの衝撃が加わると、内側の組織に繰り返しストレスがかかります。自分では軽いO脚程度の認識でしたが、太ももと膝にねじれが生じ、結果として内側へ負担を集める歩き方になっていました。
下りで踏ん張る
一歩ごとに体を止めるような歩き方は、膝の内側でブレーキをかけている状態です。ドスンと体重を乗せて着地するタイプの人ほど、内側膝痛が起こりやすくなります。
痛みの正体は「膝」ではなく周囲の筋肉
膝が壊れた元の原因は、周囲の筋肉でした。筆者の場合、固まった筋肉が骨盤をねじらせ、膝のねじれにつながっていったのです。
大腿四頭筋
太ももの前側の筋肉で、下り坂ではブレーキ役になります。ここが硬くなると膝のお皿が引き下げられ、関節の内側に圧力が集中しがちに。「歩いた翌日に前ももが張る人」は、膝に負担をかけているサインです。
ハムストリングス
太ももの裏側の筋肉は、着地の衝撃を吸収するクッションです。弱っていたり縮んでいたりしていると、ブレーキ機能が働かず膝が直接衝撃を受けてしまいます。下りで膝が痛む人の多くは、この筋肉がうまく使えていないからかもしれません。リハビリで指摘されたのが「裏ももが使えていない」こと。筆者はブレーキを筋肉ではなく関節でかけていました。
内転筋
内転筋は太ももの内側にあり、脚のブレを抑える安定装置のような役割を担います。この筋肉が弱くなると、立ったり歩いたりするたびに膝が内側へ倒れ込み、関節の内側がこすれ続けます。
実際、右膝を痛める前から、右脚で片脚立ちをすると体が内側に揺れていました。そのときは深刻に考えていませんでしたが、内転筋の弱さが原因だったようです。
「片脚立ちが不安定」「長時間歩くと膝が内へ入る」――こうしたサインには注意しましょう。
お尻(中殿筋・外旋筋群)
お尻の筋肉は、歩行時に骨盤を安定させ膝の向きをコントロールしています。弱くなったり硬くなったりすると、着地のたびに膝が内側へぶれ、内側だけに負担が集中してしまいます。下りで踏ん張る人ほど、この筋肉が使えず膝に頼る歩き方になっています。
足首
意外ですが、足首の硬さは膝痛に直結します。今回のケガで足首が固まっていたのも原因のひとつだったのです。曲がらない足首は衝撃を吸収できず、負担がそのまま膝へ上がります。とくに登山靴で歩き慣れている人ほど可動域が小さくなりやすい部位です。
まずやってほしいマッサージ

この5か所をゆるめて動かせるようにすると、膝の内側の負担は一気に減少します。
大腿四頭筋(太もも前)
膝のお皿を引っ張る力をゆるめ、下りのブレーキ負担を減らします。膝関節の可動域を広げスムーズな歩行をサポートします。
やり方
- 床に座り、脚を伸ばす
- 太ももの前側を手のひらでゆっくりなでる
- 張っている場所を見つけたら指で円を描くようにほぐす
- 膝の5cm上は軽めに触れる(強く押さない)
皮膚を動かすくらいの圧でOK
ゴリゴリ押すと逆に緊張してしまいます
ハムストリングス(太もも裏)
着地衝撃のクッションを回復させます。腰痛や脚のつりを予防するのにもGOOD。
やり方
- 椅子に浅く座る
- 太ももの裏に手を差し込み、つまむようにほぐす
- 外→中央→内側の順に動かす
- 硬い部分は10秒キープしてから離す
伸ばす前に“ほぐす”ことで、後のストレッチ効果が上がります
内転筋(太もも内側)
痛みの原因につながる、膝の内側への倒れ込みを防ぎます。骨盤の左右のバランスが整いますよ。
やり方
- あぐらに近い姿勢になる
- 太ももの内側を手のひらで押し流す
- 付け根→中央→膝寄りへ順番にほぐす
- とくに張る場所は円を描いて20秒
押すというより“温める”イメージ
ここがゆるむと歩行が安定します
足首・ふくらはぎ内側
着地衝撃を膝に直接伝えないようにします。
やり方
- ふくらはぎを両手で包む
- 下から上へゆっくりさする
- 内側を親指で軽く押しながら流す
- 最後に足首をゆっくり10回まわす
強く押すより“流す”ほうが効果的
冷えている日はとくに丁寧に
お尻(中殿筋)
歩行時の膝のブレを止めます。このマッサージを行うだけでも、膝の内側の圧迫はかなり軽減します。
やり方
- テニスボールをお尻の外側に当てて壁にもたれる
- 体重を預けて30秒キープ
- 少し位置を変えながら2〜3か所行う
痛すぎる場所は避け、呼吸できる強さで行います
次は、効果を定着させるストレッチを行いましょう。
回復を早めるストレッチ

マッサージのあとに行うと効果が高まります。反動をつけず、ゆっくりと呼吸しながら20〜30秒×2回を目安に行いましょう。
股関節内転筋ストレッチ
膝負担の根本改善。脚の軸が安定し、歩行時の「膝の内倒れ」を防ぎます。
やり方

- 足裏を合わせて座る(あぐらに近い姿勢)
- 背筋を伸ばす
- 体を前へゆっくり倒す
- 太ももの内側が伸びた位置でキープ
膝を上から床に押さえつけないこと。
股関節から前に倒れるイメージで行うと、膝に負担がかかりません。
ハムストリングスストレッチ
下りのブレーキ筋回復。着地衝撃の吸収力が戻り、下りでのズキッとした痛みが出にくくなります。
やり方

- 片脚を前に伸ばして座る
- つま先を天井へ向ける
- 背中を丸めず骨盤から前へ倒れる
- 太もも裏が伸びた位置でキープ
つま先を触ろうとしなくてOK
「背中を伸ばしたまま」が最優先です
お尻(中殿筋)ストレッチ
歩行時の膝の左右ブレが減り、内側の圧迫が軽減します。
やり方

- 仰向けに寝る
- 左膝を胸へ引き寄せる
- さらに右の腕で右肩方向へ軽く引く
- お尻の外側が伸びたらキープ
腰をひねりすぎないこと
「お尻の横」が伸びていればOKです
ふくらはぎストレッチ
足首が動くようになり、衝撃が膝へ伝わりにくくなります
やり方

- 壁に手をつく
- 片脚を後ろへ引く
- かかとを床につけたまま体重を前へ
- ふくらはぎが伸びたらキープ
かかとが浮くと効果が下がります
伸びない場合は歩幅を小さく調整しましょう
※膝を曲げるストレッチは痛みが取れたあとからやりましょう
ライター
yuki
幼少期からキャンプや釣り、スキーなどを楽しむアウトドアファミリーで育つ。10代後半は1人旅にハマりヨーロッパや北米を中心としたトラベラー期となる。現在もスキー、スノーボード、ダイビングなど海や山で活動中。「愛する登山」は低山から厳冬期の雪山まで季節問わず楽しむhike&snowrideなスタイル。お気に入りの山は立山連峰!Greenfield登山部/部長の任命を受け部活動と執筆活動に奮闘中。