子どもとのお散歩中、子どもが石を拾い始めて前に進まなくなったり、石を投げたがったり―そんな姿に戸惑った経験はありませんか。実はその行動にも、成長や好奇心の芽が隠れています。石は特別な準備がなくても、季節や場所を選ばず楽しめる身近な素材。将来、科学への興味が広がるかもしれません。本記事では、石遊びの意味や成長段階ごとの楽しみ方、安全を守るためのヒントを見ていきます。どこにでもある石で、アウトドアでの遊びの幅を広げてみませんか。

なぜ子どもは石で遊ぶのか?身近な素材が持つ不思議な魅力

石 遊び 環境教育

ほとんどの子どもは、よく石を拾います。歩き始め、大人と並んで散歩できるようになる頃、道ばたの石を見つけては立ち止まり、時間をかけて一つ選ぶ姿は珍しくありません。

やっと手にしたと思えば、次の石を見つけるのに夢中になり、大人が先へ進みたくても動けなくなるのは日常茶飯事。また大きくなってからも、川原で石を投げ続けたり、帰り道で毎日石を拾ってきたり。

なぜ子どもは、これほど石に惹かれるのでしょうか。ここでは発達の視点から、その理由を紐解いていきましょう。

散歩が止まる理由―子どもが石に惹かれる瞬間

石を見つけて子どもの足が止まってしまうのは、石が子どもにとって強い魅力を放っているから。

道ばたでしゃがみ込み、小さな手で石を拾い上げ、うれしそうに大人に見せてくれる―そんな光景に心当たりはないでしょうか。大人にとってはただの石ころでも、幼い子どもにとっては立ち止まらずにはいられない存在なのです。

石は、屋外ならばたいていどこにいても足元ですぐに見つかります。公園でも道ばたでも、身の回りに当たり前にある素材。形や色、大きさが一つひとつ違い、子どもにとっては「これは何だろう」と好奇心を刺激する存在です。

とくに1〜3歳頃の子どもは、見るだけでなく、手で触り、動かし、確かめることで世界を理解していきます。

その点、石は小さく自分で持てて、自分の意思で動かせるのが魅力。集めたり、並べたり、投げたりと操作しやすく、「自分で世界に働きかけている」という実感を得やすい対象です。

散歩中に立ち止まるその時間は、決して無駄ではありません。石に夢中になるひとときは、子どもが感覚や体験を通して世界を学んでいる、大切な成長の時間だといえるでしょう。

参考:
保育所保育指針|2 1歳以上3歳未満児の保育に関わるねらい及び内容

拾う・握る・感じる:石遊びが感覚と発達を育てる

石遊びは、拾う・握る・感じるという単純な行為を通して、子どもの感覚と成長の土台を育みます

子どもの発達は、まず体で世界を感じ取ることから。触れる、持ち替える、動かすといった体の動きを通して、見た目や感触、重さや位置の感覚など、刺激からの情報を同時に受け取ります。

複数の情報を結びつけながら「これは何だろう」「どう動くのだろう」と理解を深めていくのです。こうした積み重ねが、考える力や体の使い方、気持ちの安定へとつながっていきます。

体を使って確かめるには、石はとても優れた素材です。つるつる、ざらざらとした手触り、重い・軽いという感覚、冷たさや温もり、丸さや角ばりなど、石一つで多くの刺激を同時に味わうことができます。

子どもが石に夢中になる姿は、単なる寄り道ではなく、感覚・心・思考を使って世界を理解しようとする、大切な成長のプロセスなのです。

参考:
東京都教育委員会|脳と心の発達メカニズム~五感の刺激の大切さ

「ただの石」では終わらない、好奇心の芽生え

石には、子どもの知的好奇心を大きく育てる可能性もあります。

最初は拾って並べるだけだった石も、ある時から「これは白い」「こっちは模様がある」と色や形で分け始めるかもしれません。似たものを集めたり並べたりする行動は、比べる・分類するという思考の芽生えです。

「化石」という言葉を知って、足元の石の中から大発見をしようと探し始める子もいます。宝石や天然石に魅せられて、道端で特別な一つを拾ってくる子もいるでしょう。

ただの石ころも、実は地球の長い歴史を閉じ込めた存在です。子どもの手のひらにある石は、火山の活動や川の流れにより、計り知れない時間をかけ、とてつもない力が加わってきた結果なのです。

石の色や模様が一つ一つ違うのは、石がどのように生まれたかを物語るから。どの石も例外なく、過去のある時点で地球のどこかでできたものであり、石が生成されてからこれまでの情報を秘めています。

目の前の一つの石が、遠い過去とつながっていると知った時、世界はぐっと広がるはず。石遊びは、身近な場所から科学や自然への興味を育てる入り口となるでしょう。

参考:
みんなの地学|保育園から始まる地学教育

場面別、叱らずに見守るためのポイント

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石で遊び始めた子どもを前に「なぜ進まない?」「止めた方が良い?」と迷った時、叱らずに見守りたいもの。しかし、どう関わればよいのか悩みやすい場面でもあります。

ここでは場面別に、大人が無理なく寄り添いながら、安全と好奇心の両方を大切にする関わり方を探っていきます。万能な正解はありませんが、考え方はヒントになるはずです。

石にこだわって進めない

とくに小さい子が石にこだわってなかなか前に進めないのは、子どもがその瞬間に「確かめたいこと」があるサインです。靴を履いて歩けるようになり、歩くこと自体が楽しくなってきた頃、石は格好の興味の対象になります。

重さを感じたり、手に持ったままバランスよく歩けるか試したり、色や形、手触りをじっくり眺めていたり。つまめるかどうか、落とさずに持てるかを確かめている場合もあります。石にこだわる理由は千差万別で、その子が何を求めているのかは察するしかありません。

基本は、その欲求が満たされるのを待つこと。ただ待つだけでなく、欲求の中身を知ろうとする大人の姿勢が、折り合いをつける鍵となります。少しの間、子どもの手元や表情を観察してみると、手がかりが見えてくることもあります。

「一つなら持って歩いて良いよ」「大きいのと小さいのをここに入れようか」「あっちの方に探しに行こう」といった提案が、すぐに受け入れられないこともあるでしょう。ある程度付き合ったら、「そろそろ進むよ」と周囲の事情に合わせてもらう経験も必要です。

なお両手に石を持ったまま歩くと、転んだ時に手が出ず怪我をしてしまう可能性があるので、気をつけてあげましょう。

石を投げたい

公園でのボール遊びが制限されることも多い昨今、思いきり物を投げる体験そのものが、子どもにとって貴重です。

石を手にした子どもは、投げた石がどう飛ぶのか、どんな投げ方なら遠くに飛ぶのか、重さや大きさで飛び方は変わるのかと、頭と体をフルに使って試したいのでしょう。

とはいえ、石は人や物にぶつかると怪我や物損につながるため、まずは「危ないから投げない」と止めることが大切です。叱るのではなく、「ここには人がいるからね」と状況や理由を伝えれば、子どもは危険を避ける方法も理解していきます。

一方で、川や海辺など見晴らしがよく人がいない場所であれば、安全を確認したうえで水に向かって投げる体験をさせてあげたいもの。子どもは夢中になると周囲が見えなくなりやすいため、大人がそばで目を配りながら見守りましょう。

危険を遠ざけつつ、安心して遊べるようなサポートをしてあげれば、子どもは心行くまで自分の力を試せます。

石を割りたい

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石を割りたがるのは、「できるかどうか自分の力を試したい」「石の中身を確かめたい」という強い好奇心の表れです。また、本や映像で見た化石探しに憧れているのかもしれません。

割れやすい石、なかなか割れない石、割れた時の断面の模様の違いなど、そこから知的な興味が広がっていく可能性もあります。

ただし、石を割る行為は投げるのと同様に危険が伴います。足や手の指を打ったり、欠片が飛んで思わぬ怪我につながることも。危ない理由を伝え、好きなようにやらせるのは控えたいところです。

可能であれば、軍手を着けてハンマーを使うなど、安全な方法で一緒に観察してみるのもおすすめです。大人がそばで手順を示しながら行えば、危険を遠ざけつつ、「硬いものを割る」「石の中を見る」という探究心を満たせます。

頭ごなしに止めないことが、次の学びにつながっていく可能性があります。

石を持ち帰りたい

石を持ち帰りたがる時は、自分のものにしたいという気持ちが強く動いているサインでしょう。自然の中では、見つけたものはその場に残すというリーブノートレイス※の考え方が基本。その石を必要としている生きものがいるかもしれません。

リーブノートリレイス…自然を傷つけず、次の人のために“来たときよりきれいに”アウトドアを楽しむための行動指針

とはいえ、まだ小さい子どもの場合、「どうしても持って帰りたい」気持ちがおさまらないこともあります。そんな時は、無理に取り上げるより、一度受け止めて持ち帰る選択もあってよいでしょう。

一方でよそのお宅の敷石などは、購入された所有物であることも少なくありません。拾ってしまった場合は、後から大人がそっと元に戻す対応も考えられます。人の物は勝手にもらってはいけない、という社会のルールを伝えるのも大切です。

小学生くらいの子どもが興味から集めている様子であれば、「どんな石が好きなの?」と話を聞いてみましょう。集め方や保管の方法を一緒に考えることで、好奇心を広げつつ、物との付き合い方も学べます。

成長段階で広がる石遊びの楽しみ方

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道ばたや公園、川原など、一年中どこにでもある石は、特別な準備がいらない身近な素材。ただ拾うだけで終わらせるのは、少しもったいないかもしれません。

関わり方次第で、石と触れ合う遊びの深さや広がりは大きく変わります。ここでは子どもの成長ごとに楽しめる石遊びを紹介します。

幼児期:拾う・集める・並べる遊び

幼児期の石遊びは、「拾う」「集める」「並べる」といったシンプルな行為が中心になります。色や形、大きさや重さを感じ取りながら石に触れる時間そのものが、子どもにとっては大切な体験です。

「きれいだね」「たくさん集まったね」と共感してもらえるだけで、安心感・満足感につながります。

また、拾った石を片方の手に握って「どっちの手に入ってるんだ?」と当てっこするのもおすすめ。「当たり」「こっちでした」などのやりとりを、小さい子どもは大好きです。石一つでいつでもどこでも、親子で楽しめる遊びです。

幼児〜小学生:投げる・積む・バランスをとる遊び

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少し成長すると、石遊びは身体の動きを伴うものへと広がっていきます。形や大きさの違う石を選びながら高く石を積むことを楽しんだり、川や海辺で石を投げ、水面を跳ねさせる「水切り」に挑戦したりと、遊びはよりダイナミックになります。

石は一つひとつ異なるため、思い通りにいかない場面も多くあります。どんな石ならよく跳ねるのか、どう積めば崩れにくいのかという試行錯誤は、自然物ならではの奥深さ。周囲の安全に気を配りつつ、試してみたい気持ちを大切に見守りたいですね。

知的好奇心が育つ頃:石の種類・化石・天然石への関心

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さらに成長すると、化石や天然石に魅力を感じたり、石の名前や種類に興味を持ったりする子も少なくありません。大昔の世界と石ころを結び付ける想像力があれば、関心はより深まっていきます。

川原の丸石や山の岩だけでなく寺院や庭園、史跡の石材など、発見の種は身近なところにもあり得ます。石をテーマにした観察会や博物館の解説ツアーなどを探して参加すれば、さらに石の魅力を深掘りできるでしょう。大人のほうが夢中になってしまうことも。

この石はどこでどうやってできたのか、なぜここにあるのか、一緒に考え感動する時間は、親子の会話を豊かにしてくれますよ。

石は、子どもの「知りたい」「やってみたい」を支えてくれる、特別な準備が要らない身近な素材です。子どもと一緒に立ち止まる時間は遠回りに見えても、後から振り返れば成長の足跡だったと気づくかもしれません。そばで見守り、一緒に面白がる、その積み重ねが子どもの成長の土台となるはず。次のアウトドアでは、足元の石に少し違った角度から目を向けてみませんか。

曽我部倫子

ライター

曽我部倫子

東京都在住。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、小さなお子さんや保護者を対象に、自然に直接触れる体験を提供している。

子ども × 環境教育の活動経歴は20年ほど。谷津田の保全に関わり、生きもの探しが大好き。また、Webライターとして環境問題やSDGs、GXなどをテーマに執筆している。三姉妹の母。