ブラックバスやブルーギルなど、釣り人に人気の外来魚。でも、それらの外来魚を釣った際の対応に迷った経験はありませんか?本記事では、外来魚が環境に与える影響や法律上のルール、釣った際の正しい処理方法まで、釣り人として知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説します。

外来魚が環境に与える影響

まずは、外来魚が生態系にどのような影響を及ぼすのかを具体的に見ていきましょう。

在来魚を食べて生態系に影響を及ぼす

外来魚とは、元々日本に生息しておらず、人の手によって海外から持ち込まれた魚です。なかでも、ブラックバスやブルーギルは釣りの対象魚として人気ですが、在来魚を食べてしまうのが大きな問題となっています。

たとえば、ブルーギルは卵や稚魚などの小さな魚を好んで食べるため、メダカやフナといった在来種の繁殖を妨げてしまいます。

さらに、ブラックバスはより大型の魚を捕食するため、池や湖といった限られた水域で一度繁殖すると、そのエリアの生態系が崩れてしまうケースも少なくありません。

外来魚の繁殖で在来種が減少し、絶滅が危惧されるケースがある点を理解しておきましょう。

水草や生物の多様性が失われる

外来魚の影響は、魚同士の関係だけにとどまりません。たとえば、ブラックバスが多く生息する水域で水中の小型甲殻類や昆虫が食べられると、水草の根本に棲みつく微小生物が激減します。その結果、水草の生育が妨げられ、水中の酸素供給や隠れ家の機能が低下してしまうのです。

こうした連鎖的な生態系の変化は生物の多様性を奪い、最終的には水辺の自然環境そのものが失われていく原因になります。

一度定着すると駆除が難しい

池や湖といった閉鎖的な水域では、繁殖力が高い魚種は爆発的に増殖してしまいます。駆除には長い年月と多大なコストがかかるため、一度定着した外来魚を完全に駆除するのは非常に困難です。

たとえば、東京都の井之頭公園の池でブルーギルが定着してしまったケースでは、池の水を抜いて魚を一斉に駆除する「かいぼり」が行われましたが、効果は一時的でした。

生き残ったブルーギルが再び繁殖してしまったのです。

このように、一度定着した外来魚は根絶が難しいため、「持ち込まない」「放さない」という意識と行動を前提に釣りを楽しみましょう。

外来魚に関して釣り人が知っておきたいルール

釣り人として自然と向き合ううえで、外来魚に関する法的ルールやマナーの理解は欠かせません。知らずに違法行為をしてしまうことのないよう、最低限押さえておきたいポイントを整理しておきましょう。

特定外来生物に指定されている魚種

日本で「特定外来生物」に指定された魚種の飼育・運搬・譲渡・野外放流は、法律で禁止されています。

釣りのターゲットではブラックバスやスモールマウスバス、ブルーギルなどが当てはまり、「外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)」に基づいて規制されているのです。

違反すると、個人でも最大で3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される場合があるため、知らなかったでは済まされません。

参考:日本の外来種対策|罰則について

生きたままの持ち運び・再放流禁止

「釣った魚を元の場所に戻すのは自然に優しい」と考えてしまいがちですが、外来魚の場合は話が別です。特定外来生物に指定されている魚種については、生きたままの移動も再放流も法律で禁止されています。

つまり、たとえ同じ池に戻す行為であっても「野外への放出」とみなされ、違法となる可能性があるのです。善意からの行動でも、結果的に違法行為になるケースがある点を理解しておく必要があります。

外来魚を釣ったときの正しい対応

ここでは、実際に外来魚を釣って判断に迷ったときに役立つ、基本的な対応方法を紹介します。

種類を確認する

見たことがない魚が釣れたら、特定外来生物に指定されている外来魚なのかを確認しましょう。図鑑やアプリ、地方自治体が配布しているパンフレット、環境省の資料などが参考になります。

とくに、ブラックバスやブルーギル、チャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ)などは比較的よく釣れる外来魚として知られているので確認しやすいでしょう。

再放流せず適切に処分する

外来魚を釣った場合は、その場で放す「リリース」は基本NGです。再放流が禁止されている魚は、適切な方法で処分する必要があります。ただし、山梨県の河口湖のようにブラックバスの漁業権を取得しているなど、例外がある点に留意しておきましょう。

処分方法としては、締めて持ち帰って食べる、焼却ゴミとして廃棄するなどがあります。廃棄する際には自治体のルールに従いましょう。なお、個人が特定外来生物を家庭で飼育すること自体は禁止されていませんが、飼いきれなくなった場合に放流してはいけません

筆者も以前、釣れたブルーギルを自宅に持ち帰り、唐揚げで食べた経験があります。見た目の印象に反してクセがなく、白身魚としておいしく食べられました。釣り上げた命に感謝して無駄にしないことも、環境への配慮のあり方だと感じています。

外来魚に対するさまざまな取り組み

全国各地で、外来魚の被害を食い止めるためのさまざまな取り組みが進められています。たとえば、滋賀県では琵琶湖を中心に、釣ったブラックバスなどの外来魚をボックスに投入できる「外来魚回収ボックス」を設置しました。

釣り人が持ち帰って廃棄処分するなどの手間なく処理ができるため、違法な再放流防止策として注目されています。また、そのほか全国各地の漁協組合でも、外来魚の駆除に積極的です。

次世代の釣り人・自然の利用者への啓発も広がりを見せています。地域の小中学校や自然体験教室では、「外来魚の影響」や「生態系保全」について学べる環境教育プログラムが行われています。

外来魚は釣り人にとって身近でありながら、生態系に深刻な影響を及ぼす生物でもあります。釣った魚が自然環境の未来に大きく関わる存在であることを、私たちは自覚する必要があるのです。法律やルールを知って正しい行動をとり、子どもたちや次世代にも伝えていくのが、釣り人ができる環境保全の第一歩です。「釣りを楽しみながら自然を守る」という価値観を広げていきましょう。

阿部 コウジ

ライター

阿部 コウジ

釣り歴30年以上のアウトドアライター。自然豊かな清流や渓谷に魅せられ、環境と共生する釣りの魅力や自然を大切にしたアウトドアの楽しみ方を発信。釣った魚を食べるのも好き。将来はキャンピングカーで車中泊しながら、日本各地の釣り場を巡るのが夢。