ガーデニングは幸福度を高め、メンタルヘルスに良い影響を与えることがさまざまな研究で明らかになっています。 ストレスフルな時代だからこそ、鉢植えから始められるガーデニング・セラピーで、植物や土と触れ合う時間を始めてみませんか?
ガーデニングがもたらす健康:メンタル編
ガーデニングは、フィジカルだけではなく精神面によい効果をもたらすことは、多くの研究機関が証明しています。精神系の病院ではヒーリング用の庭が併設され、実験的にガーデニングを処方するケースも出てきました。
ガーデニングがもたらすさまざまな効能を紹介します。
ストレス軽減
ガーデニングは、ストレスを軽減させてくれます。研究によると、ガーデニングを行うことでセロトニンとエンドルフィンの分泌が促進されることが判明しました。
セロトニンとエンドルフィンは、どちらも幸福度を向上させてくれる神経伝達物質です。また、生体リズムや体温調節のためにも重要な要素とされています。
とくにセロトニンは、鬱の原因とされるドーパミン不足を調整する働きがあります。ガーデニングがメンタルのための療法に活用されるのも、この理由によります。
睡眠の質の向上
ストレスでセロトニン不足になると、気持ちが落ち込んだり、不眠に悩まされたりすることがあります。一方で、ガーデニングはセロトニンが分泌されるため、快適な睡眠を促してくれるのがメリットです。
また、日光の下でのガーデニングは、体内時計が整うメリットもあり、ほどよい疲労感でよく寝れるようになります。
認知症予防
心身ともに健康で長寿を迎える人が多いブルーゾーンでは、人々と植物の触れ合いが多いのが特徴です。また、種まきや草取りなどの工程を順序立てて行うことで、脳が活性化され、認知症予防になるという研究結果も発表されています。
オーストラリアの「ダボ高齢者研究(Dubbo Study of the Elderly)」では、ガーデニングを行うことで認知症リスクは36%軽減すると発表しています。さらに注意力や記憶力の向上がみられることもわかっています。
社会とのつながりを保つ
ガーデニングは1人でもできる趣味ですが、海外ではガーデニング仲間が集い、交流を持つケースが多いです。
共同でレンタルした菜園で作業し、社会とのつながりを持つことで、脳によい刺激を与えるといわれています。
ガーデニングは創作意欲も刺激!庭仕事を愛した著名人たち
「庭仕事は魂を解放する瞑想である」。
そう語ったのは、小説家のヘルマン・ヘッセでした。ガーデニングに創作意欲を刺激された著名人は多数。その例をいくつかご紹介します。
文学者にはガーデニング愛好者が多い!
ガーデニングはリラックスするための手段であり、創造の源泉にもなります。『若草物語』の作者ルイーザ・メイ・オルコットや、『ピーター・ラビット』の作者ベアトリクス・ポターは、ガーデニングが趣味であったと伝えられています。
彼女たちの作品には、庭に関するリアルな記述が多いのも当然かもしれません。とくにポターは自然景観保護に熱心で、湖水地方の土地をナショナル・トラストに寄贈したことでも知られています。
『ダロウェイ夫人』などの名作で知られるヴァージニア・ウルフも同様。深い心理描写が秀逸な彼女も、庭仕事が大好きだったそうです。残された日記にはガーデニングによって気持ちが落ち着くという記述もありました。
ヘルマン・ヘッセはガーデニングに関する名随筆『庭仕事の愉しみ』の中で、自然から人生の真理を学んだと記しています。
優れた政治家も庭仕事をする!
偉大な政治家として名を残した人たちも、ガーデニングを趣味としていた例が少なくありません。庭仕事が好きだった政治家の代表は、ウィンストン・チャーチル。広大なチャートウェルの邸宅で花を育て、庭に憩いを見出していたそうです。
アメリカ合衆国第3代大統領トーマス・ジェファーソンは、数百種におよぶ野菜や花を栽培していたことで有名。政治家としてだけではなく、思想家、自然科学者、建築者としても名を残したジェファーソンの創作の源は、庭にあったという説もあります。
すぐにでも始められるガーデニング
ガーデニングは、とくに秀でたスキルがなくても楽しめます。
庭がなくてもプランターや鉢で
ガーデニングは広い庭がなくても始められます。園芸店やDIYショップに行けば、ベランダや小さなプランターで楽しめるグッズがたくさん用意されており、手軽に購入できます。
プランター、土、肥料、シャベル、バケツ、剪定ばさみなどの基本のツールのほか、作業用のシートを準備すると便利です。小さなスペースもグリーンで満たされると、目の癒しになりますよ。
ハーブを育てて料理にも活用の一石二鳥
ガーデニング初心者におすすめするのがハーブ。ハーブの多くは手入れが簡単で、お値段もお手ごろ。そして何よりも、自分が育てたハーブをお料理に使えて一石二鳥です。
スーパーに行けばドライタイプのハーブはたくさんありますが、生のハーブの香りはまた格別。効能が多く、減塩にも一役買ってくれるハーブで、ガーデニングを楽しんでみましょう。
▼ハーブを食卓に用いるメリットはこちら
種から育てる喜びを知る
苗を買ってくれば簡単に始められるガーデニングですが、あえて種をまいて楽しむ方法もあります。種から植物を育てる喜びは、なんといっても発芽から花や実をつける経過を観察できる点。
多忙な毎日の中で、自分が育てている植物を見つめる時間は、まさに瞑想タイムです。植物の成長を見守る喜びを楽しめますよ。
植物に囲まれた安らぎを日常生活に
農林水産省は、身近に緑や花があることで生活の質が向上すると報告しています。本格的なガーデニングではなくても、日常生活の中で植物に触れることで、ストレス発散につながるでしょう。
▼ガーデニングがもたらす健康、フィジカル編はこちら
参照元:
ヘルマン・ヘッセ『庭仕事の愉しみ』2011年、草思社
Accademia dei Georgofili「Garden-therapy, coltivare fa bene alla salute」
Royal Horticultural Society「Why gardening makes us feel better – and how to make the most of it」
イギリス政府デジタルサービス「Connecting with nature offers a new approach to mental health care」
National Library of Medicine「Lifestyle factors and risk of dementia: Dubbo Study of the elderly」
ライター
cucciola
ヨーロッパの片田舎で家族と3人暮らし。
学生時代に都会の生活で心を病んで以降、スローライフとスローフードで心身の健康を維持。気が向くまま、思いつくまま、風まかせの旅行が多数。
アートと書籍を愛するビブリオフィリアで1人の時間が大好き。